人事の超プロが明かす評価基準

「できる人」と「認められる人」はどこが違うのか
未読
人事の超プロが明かす評価基準
人事の超プロが明かす評価基準
「できる人」と「認められる人」はどこが違うのか
著者
未読
人事の超プロが明かす評価基準
著者
出版社
三笠書房
出版日
2015年11月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「人事評価」という言葉に、ネガティブなイメージを抱く人は少なくないだろう。日頃の仕事への姿勢が上司にどのように映っているのか、上司が自分自身に求めるスキルや行動が何なのか、その期待に応えられているのか。これらの不明瞭さが評価への不信感につながることも少なくない。

さまざまな企業の人事制度構築に関わってきた著者は、企業規模の大小を問わず、会社が社員に求めていること(評価基準)がほぼ同じであると気づいた。人事制度として「見える化」されていない場合でも、その評価基準は普遍的なものだという。本書では、企業が社員に求めていることを網羅した普遍的な評価基準を「45のコンピテンシー」として紹介している。新人・一人前・チーフ・課長・部長・役員の6段階に分け、それぞれに求められる評価基準が記載されており、それらはハイパフォーマーに特徴的な考え方や行動でもある。これまで人事評価に疑問を感じた経験がある人も、この評価基準を知ることにより、何が足りなかったのかについて「気付き」を得られるだろう。また、目標とするポジションがある人は、そのポジションへ至るまでの道筋が見えてくるに違いない。その気づきを日々の行動にどう落とし込むのか、数々のヒントが記されているのも、本書の魅力だ。

評価に納得できていない「評価される側」の人も、自信を持って評価を下せていない「評価する側」の人も、組織と自分の関係を見直すために本書をぜひ読んでいただきたい。

ライター画像
伊藤友梨

著者

西尾 太(にしお ふとし)
人事コンサルタント。「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。
いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。これまで9000人超の採用、昇進面接、管理職研修、階層別研修を行う。パーソナリティとキャリア形成を可視化する適性検査「B-CAVtest」を開発し、2015年(社)日本パーソナリティ診断士協会を設立。統計学に基づいた科学的なフィードバック体制を確立する。なかでも「年収の多寡は影響力に比例する」という持論は好評を博し、転職希望者からの相談が殺到。著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎知識。8つの心構え。』(労務行政研究所)などがある。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。

本書の要点

  • 要点
    1
    人事評価は、真に優秀な人材を育成するためのツールである。評価基準を明確にして、社員が進むべき道を示すことにより、社員に目標達成に対する意欲が生まれ、それが業績向上につながる。
  • 要点
    2
    人事評価は、今求められている行動が取れているかどうかについて、「気づき」を得るための良い機会である。コンピテンシーが明確ならば、それは社員を褒める具体的な材料となる。
  • 要点
    3
    評価される人と評価されない人の決定的な違いとは、「影響力」の有無である。社内外の人的ネットワークを構築し、協力者を増やすことによって、自分自身の影響力を高められる。

要約

なぜあの人は「評価されるのか」「されないのか」

不明確な評価基準に「不満」が7割

2015年3月に発表された日本経済新聞社とNTTコムリサーチが共同で実施した『人事評価に関する調査』のアンケート結果によると、20代~50代の男女ビジネスパーソンで人事評価に「満足」「どちらかというと満足」と答えたのは23.0%。一方、「不満」は33.7%と、「満足」を上回った。不満の理由は大きく次の3つに分類できる。

①上司などによる主観的な評価で客観性がない。

②そもそも評価基準が不明確。評価する人によって判断が変わってしまう。

③何をしたら評価されるのかわからない。

中でも、「評価基準が不明確」という理由が7割を超えており、突出していた。

日本には421万の企業があるが、具体的な評価基準を示している会社は、わずか1割程度にすぎない。多くの会社では、人事評価の基準が曖昧であるうえに、上司の個人的な「好き嫌い」が含まれている。「評価する側」の人たちは、この現状を真摯に受け止め、危機感を抱かなくてはならない。

あらゆる企業に共通する「評価基準」がある
dinceras/iStock/Thinkstock

著者はこれまでの約25年間、300社以上の人事制度の設計・運用や採用、教育研修に携わってきた。その中で、「成長している元気のいい企業」の人事制度の根幹は、ほぼ同じであると気づいた。つまり、あらゆる企業に通用する普遍的な「評価基準」があり、これを理解することで、さまざまな業界で通用する人材になれる。

人事の専門用語に「コンピテンシー」という言葉がある。これは「成果につながる行動」や「活躍する人に特徴的な行動や考え方」を意味し、これこそが会社が社員に求めている「評価基準」そのものである。会社が求めるコンピテンシーに沿った行動を実行することが肝となる。

課長と部長に求められる条件の違い
ismagilov/iStock/Thinkstock

課長クラスや部長クラスの人は、ともにマネジメント力が求められるが、その具体的な内容はかなり異なっている。

課長クラスは、部長から与えられた組織やプロジェクトの目標達成にコミットし、メンバーのモチベーションを保ち、相互に助け合う風土をつくるといった行動が求められる。いつも高い業績をあげ、部下からの人望も厚い「エースで4番でキャプテン」という人は、課長としてなら十分合格だ。

一方で部長クラスは、課長クラスよりも難易度の高い「戦略策定」や「目標設定」が求められる。中長期的な視野に立って数年後の会社のビジョンを具体的に描き、リスクも想定したうえで、めざすべき戦略を明示できる人こそ、部長として高い評価を得られるのだ。

そのため、いくら課長としての能力が高くても、戦略策定や目標設定のコンピテンシーを達成する能力がなければ、次のステップに進めず、次第に会社が持て余す「困った人」になってしまう。このように、次のキャリアステップに向けた行動を起こさない限り、評価は下がっていき、問題社員と化すのだ。

重要なのは、年次ごとに定められた普遍的な評価基準であるコンピテンシーを理解し、それに応じた行動を取ることである。

会社はなぜ「社員に求めること」を明確にしないのか?

多くの会社は、困った社員に対し、その人の課題や求めるものを具体的に明示せず、伝える努力や指導もしていない。にもかかわらず、突然その社員にリストラを告げることがある。彼らが「社員に求めること」を明確にしない理由は、経営陣や人事担当者、または直属の上司に「いい人でありたい」という心理が働くからである。

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要約公開日 2017.01.26
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