仕事の現場で「頑張る」という言葉が頻繁に使われるが、実はこの言葉にこそ、長時間労働から抜け出せない理由が潜んでいる。例えばある同僚が、営業として毎日忙しく、夜遅くまで社内を駆け回っていたとする。しかし、彼が何も成果を出していないとしたら、この同僚は本当に「頑張っている」とはいえない。
作業時間の多さをアピールしても意味がない。トヨタの現場には「頑張ることは汗を多くかくことではない」という教えが根づいている。本来、仕事においては「成果につながる動き」こそが評価されるべきである。「成果につながる動き」に時間を割けばいいのであり、「成果につながらない動き」はすぐにやめるべきだ。
時短のためのテクニックとは、やるべきではない「作業」を減らし、本来の「仕事」に専念できる状態や環境を整えることを指す。仕事で注力すべきポイントをしっかり見極め、自分ならではの価値を出す仕事にフォーカスすることがカギとなる。
また、必要性の低い仕事を思い切ってやめてみるのも手だ。著者がトヨタのメカニックだった頃、定期的な技術講習があり、参加者は講習で学んだことをレポートに書いて提出することが義務化されていた。ところが、そのレポートの内容は現場で活用されておらず、上司もほとんど目を通していないことが判明したため、レポート提出は撤廃された。こうした無駄な仕事をなくし、改善していく提案も、短時間で生産性を上げるためには必要となる。
トヨタの「カイゼン」に関する考え方は有名だ。「カイゼン」とは、極限まで無駄を省き、指示されたことだけをするのではなく現場の従業員同士がアイデアを出し合い、仕事のやり方をよりよくすることである。
もしあなたが自分の担当以外の仕事を頼まれたなら、どう思うだろうか。「なぜ私が」と不満を抱くかもしれない。「それは自分の仕事ではない」と断ってしまう人もいるだろう。しかし、担当の仕事ではないからと自分の仕事を限定することは、時短から遠ざかることと等しい。
トヨタでは従業員が「多能工」、つまり「多くの能力を持った工員」であるべく、担当以外の仕事も覚えるように教育されている。「多能工」化をめざすと、自分の仕事が「全体の中の1つ」と捉えられ、常に周囲とのつながりや一連の流れを意識した仕事ができるので、幅広く、深くスキルを身につけられるようにある。また、いつもと違う仕事をすると、凝り固まっていた脳が刺激され、思わぬアイデアが生まれる。さらには、さまざまな部署の仕事に取り組むことで人間関係も広がり、いざというときに手を差し伸べてくれる人が増える。
こうして常に新しい仕事に取り組むことで、マンネリ化を防ぎ、仕事へのモチベーションを維持しやすくなる。こうした好循環が業務内容の改善や時短につながるのだ。
仕事上、困難なことや実現不可能と思われることにぶつかった際、最も避けたいのが「できない」と決めつけ、できない理由を並べ立てることだ。
著者がある客の車の整備を担当し、点検した結果、ブレーキパッドが薄くなっており走行が危険な状態だということが判明した。在庫もなく、取り寄せるなら2日はかかる。しかし、客は翌日から長距離出張で、取り寄せを待つ時間はない。そこで著者は、通常の部品調達ルートではなく他の系列店に電話をかけて在庫を確認し、在庫があった店に行って部品を譲り受けた。そしてどうにか翌日までにブレーキパッドを交換できた。こうして客の要望を断る言い訳を考える無駄な時間が省けた、というわけだ。
「どうしたら実現できるのか」というマインドセットを取り入れることで得られる効果は他にもある。
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