著者は、経済キャスター、ジャーナリストとして、のべ3000人のトップランナーたちに取材を重ねてきた。その中で、真に大きな成功を収めるリーダーの共通項として浮き彫りになったのは、彼らが「自然体である」ということだ。彼らは、目の前の人をたちまちファンにしてしまうような「その人らしい魅力」を備えている。逆に素の自分を偽れば、「何かウラがあるのでは」と相手を警戒させかねない。
著者が出会ってきた「トップオブザトップ」も、まさに自然体を絵に描いたような人たちばかりだった。例えば、スターバックスでCEOを務めたハワード・シュルツ氏は、変化球の質問にもノって対応し、「マクドナルドのコーヒーはおいしいよね」とサラッと言えてしまう人物だ。大上段に構えず、一人の人間として答える姿を見て、メディアの人たちはみんな瞬く間に彼のファンになっていく。このように、自分にも他人にも正直でいることは、応援者を増やし、成功に近づく大きな武器となってくれる。
トップリーダーが重視しているのは、自分自身が天才であることよりも、周囲の人の天才性を引き出すことである。人の天才性を引き出すには、その人が自然体でいられ、本領を発揮できる環境づくりが欠かせない。
そこで、リーダーの資質の中でも「チャーミング力」が非常に強力な武器となる。人をほっとさせながら惹きつけ、巻き込んでいくチャーミングさは波及効果も大きい。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は世界のトップが集まる晩餐会に主賓で呼ばれた際、「アメリカのテキサスから来た田舎者です」と自己紹介し、場の緊張を一気に解いた。そればかりか、気軽にジョークを言って場を盛り上げるブッシュ氏に、その場に居合わせた多くの人が釘付けになったという。
トップリーダーの特徴は、自分より優秀な人にどんどん頼り、仕事を任せるという点だ。そのほうが各人の強みを活かせるので、組織のビジョンを実現させやすい。任された相手もますますやる気を出し、新たな挑戦をする。それが成功すれば、自信を得てさらに大きな挑戦ができるという好循環が生まれていく。
先述したシュルツ氏は「成功の秘訣は自分より優秀な人を雇うのを怖がらないこと」と語っている。彼は、スターバックスを拡張するために、自分より経験豊かな経営専門家を2名役員として招き入れた。彼らのダメ出しを取り入れていったことで、現在の成功をつかんだという。
もちろん頼りにした相手に裏切られることもあるだろう。しかし、トップリーダーは多少の裏切りや損失にこだわらない。相手を信用することで得られるもののほうが、はるかに大きく、たとえ何かを失ってもゼロからやり直せると考えているためだ。
自然体のリーダーの端的な例は、世界に12万人以上の従業員を抱える日本電産の創業者である永守重信氏だ。永守氏は人間性に裏打ちされた明快なビジョンを語り、人の心を惹きつける。彼の持論はこうだ。「大げさなデタラメのように聞こえることを、現実にするのが起業家であり、経営者である」。
大きなホラを吹くリーダーに、人は「ついていきたい」と感じる。この大ボラは自分の欲求を満たす「小欲」ではなく、人々の幸せを叶えようとする「大欲」に基づいたものだと永守氏はいう。本気で人々の幸せを考えるピュアさが伝わるからこそ、「この人のホラなら信じたい」という応援者が増えていく。そして、こうしたピュアな本気の気持ちを伝えるための秘訣が、取り繕うことなく自分のキャラクターをオープンにすることなのである。
「うちの社長、天然(ボケ)なんです」と、社員が嬉しそうに語ったら、その社長は成功者の資質があるといってよい。
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