宇宙の始まりに関するもっとも有力なモデルによると、誕生したばかりの宇宙はインフラトン場というもので満たされており、その作用により指数関数的に膨張していったという。
ここで興味深いのは、そのインフラトン場はほぼ一様でありながらも、ある場所では密度がわずかに高く、ある場所ではわずかに低かったという点だ。もし完璧に一様であったなら、生命は誕生しなかったはずである。そういう意味では、偶然の量子ゆらぎこそが、生命を生みだした源であるといえる。
また、たとえ生命誕生が必然だったとしても、複雑な生命が生まれたのは紛れもなく「ミトコンドリアの獲得」という偶然によるものである。およそ20億年前、1個の単純な細胞がなぜか別の細胞の中に入り込んだことからすべては始まった。ミトコンドリアはDNAに大きな影響を与え、複雑な生命の進化へつながる遺伝的な原材料がもたらされた。複雑な生命は、ひとつの単純な細胞が別の細胞を取り込むという、たった一度の偶然によって出現したのだ。
ヒトを現在のヒトたらしめたのは、進化上の6つの偶然だ。
まず、(1)筋肉タンパク質をコードするMYH16という遺伝子のたった一度の変異によって、顎の筋肉が落ちた。これにより、頭蓋骨が大きく成長したと言われている。
次に、(2)脳の大型化が促された。この脳の大型化は、雪だるま式に起こっていったと考えられる。脳にいくらかの変化が起こったことで、それがさらに新たな変化を起こしたのだ。
また、(3)エネルギー効率が改良された。ものを考えるにはエネルギーを要する。脳への血流が増えたのはDNA領域の進化も関係しているが、それだけではない。ある遺伝子の変異によって、ヒトはチンパンジーと比べて脳の主要なエネルギー源であるグルコースを多く届けるようになった。
くわえて、(4)いわゆる「言語遺伝子」の変異が起きた。言語能力に関係するヒトのFOXP2という遺伝子は、チンパンジーやマウスなどのほとんどの種と似ているが、ヒトのFOXP2には、タンパク質を構成する単数のアミノ酸のうちのたった1個が変化するという変異が2度起こった。これにより、ヒトは話せるようになった。
さらに、(5)手の進歩だ。道具を使う際の器用な動きに欠かせない、ヒトの他の指と向かい合わせになった親指の進化には、あるDNA領域の変異が影響したとされている。
最後に、(6)消化についての遺伝的変異だ。唾液アミラーゼと呼ばれる消化酵素は、デンプンを糖に分解し消化器官で吸収するうえで重要なものである。これが農耕の開始に寄与した可能性がある。農耕の始まりは、ヒトのライフスタイルを一変させた。そしてそれが後の文化の爆発的進歩、ひいては現代生活へとつながっていったと考えられる。
自分のことを「運が良い」「運が悪い」と考える人をそれぞれ集めて調査したところ、それぞれのグループには注目すべき共通点があった。自分のことを「運が良い」と考える人たちは、きまって正しいときに正しい場所におり、多くの機会を得て、楽しい生活を送っていた。一方、自分のことを「運が悪い」と捉える人たちは、失敗や苦しみばかりに遭い、けっして抜け出せないと感じていた。
このことから、実は運のよさというのは、考え方や行動の仕方の結果として起こるものではないだろうかと推測できた。そこで、試しにコーヒーショップの前の道に5ポンド紙幣を置き、「運が良い」男性と、「運が悪い」女性をそれぞれ店に呼んでみた。
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