本書では次の3つの視点から、「お金持ち」の定義づけをしている。まず、(1)年間の「所得」が1000万円以上の人である。年収1000万円をお金持ちの基準にする人は多いが、節税や資産運用という観点からは、年収や収入ではなく、所得で考えたほうが実態をよくあらわしている。
次に、(2)「純資産」が1億円以上ある人だ。純資産とは、資産から負債を差し引いた額である。たとえば1億円のマンションを持っていても、銀行からの住宅ローンで購入している場合には、純資産には当てはまらない。
最後に、(3)相続税の対象となる人である。日本において、相続税がかかる人は、相続が発生した100人のうち、7、8人程度しかいないため、相続税がかかる人=「お金持ち」と考えてもよいだろう。
本書では、この3つの条件のうち、どれかひとつでも満たしている人のことを「お金持ち」と呼ぶことにする。
「お金持ち」の収入源を見ていくと、大きく4つのカテゴリに分類することができる。
1つめは「地主系」だ。地主系の資産のほとんどは、先代から引き継いだ「土地(不動産)」である。基本的にはアパートやマンション、貸駐車場などの「賃貸経営」で土地を活用し、不労所得を得ている。年齢層は比較的高く、60代から80代が中心である。
2つめは「投資系」であり、不動産投資や株式投資などで、キャピタルゲイン(債券や株式、不動産など資産価値の上昇による利益)を得ている人たちだ。地主系が自分の土地に物件を建てる一方、サラリーマン大家は、都心部や中核都市の賃貸専用物件を購入することがほとんどである。
3つめは「事業系」で、会社経営者などの事業所得によってお金を得ている人を指す。事業系は地主系や投資系と比べて、個人資産をあまり多く持たないという特徴がある。役員報酬を多く取って個人資産を厚くすることより、会社の内部留保を厚くすることを考えているからだ。
4つめは「キャッシュリッチ系」である。キャッシュリッチとは、現金や預金など、流動性の高い金融資産を多く保有することだ。上場企業の経営幹部は、高額の役員報酬を得ているため、このキャッシュリッチ系に含まれることが多い。
「お金持ち」は以上の4つに大別できる。ただ、収入源はかならずしもひとつとはかぎらない。というのも、複数の顔を併せもっているケースも少なくないからである。
国税庁は、税金に対する啓蒙活動のひとつとして、中学生を対象にした『ハロー・タックス』というパンフレットを作成しており、28年度版では国民負担率の国際比較を掲載している。それによると日本の国民負担率は43.9%で、フランスの67.6%やスウェーデンの55.7%、イギリスの46.5%よりも低い。これをもって同誌では、「ヨーロッパの多くの国に比べて、日本は低い水準にとどまっている」と述べられている。
しかし、他国よりも国民負担率が低いからといって、「日本は税金や社会保険料などが安い」とは一概にいえない。なぜなら、ヨーロッパでは、福祉制度や教育制度が充実した国が多く、その負担分が税金として徴収されることが多いからである。たしかに日本の租税負担率は先進国のなかでは低いが、同時に還元率も低い。多くの人が「痛税感」を覚えている背景にはそういう事情も関係している。
約50種類ある税金のなかで、「お金持ち」の関心がとくに高いのが、「所得税」「相続税」「贈与税」の3つである。この3つの税金は、2015年から税率が変わり、実質的に増税になっている。
3,400冊以上の要約が楽しめる