日本では人口の25%がすでに65歳以上であり、2050年には39%を占めると推定される。長寿の高齢者は介護人を必要とするが、介護人の数は明らかに足りない。重労働のわりには報酬が不十分なことも、介護に携わる労働力不足に追い打ちをかけている。そこで出番となるのがロボットだ。
未来の介護人は現在、日本の工場で作られている。トヨタとホンダは、自動車で培った機械工学のノウハウを次世代ロボットに活かしている。トヨタは老年人口の世界的な増加を見越して、言葉と身振りで人とコミュニケーションできるパートナー・ロボットを開発した。一方、ホンダが開発した「アシモ」は、人の感情や動作、会話を読み取って解釈し、それに応対することができる。また、ホンダはロボット義手・義足とその補助装置の商品化にも力を入れている。例えば「歩行アシスト」を筋力の弱ったお年寄りが両足や腰に装着すれば、機械の力を借りて歩けるようになるという。
もちろん、被介護者がロボットと本当に心を通わせられるのかという懸念の声もある。しかし、日本において、ロボット技術と、その適用範囲は拡大の一途をたどっている。
少子高齢化は日本に限らず、他の先進国でも問題視されている。先進国で高齢化が進めば、日本のロボット産業にとって巨大な市場が生まれるだろう。真っ先に主力ユーザーになるのは高齢者なのである。
自動化とロボティクスの進展により、対人スキルが求められるサービス部門においても、ロボットが進出している。状況認識、空間把握、機転、文脈の理解、判断力を要する作業といった、人間にしかできないと思われていた仕事すら、今ではロボットが担いつつある。この背景には、データ解析が高度化されたこと、ビッグデータの力でロボットの認知発達が飛躍的に進歩したことがある。
新世代のロボットは、製造コストの低下に伴い大量生産され、最低賃金で働く労働者とも競合していくだろう。台湾のフォックスコン・グループは2011年、今後3年間で100万体のロボットを導入し、従業員約100万人の仕事を手伝わせると発表した。そのロボットは、従業員が行ってきた塗装や溶接、簡単な組み立てのような作業を代替しているという。ロボットは多くの雇用を喪失させると同時に、新しい職を生み、人間がもっと生産的な活動を営めるように貢献するとされている。
新しいテクノロジーから最大の恩恵を手にできるのは、変化にいち早く順応し、市民や社員を成長産業に向かわせることのできる社会や企業だ。一方で、職を追われかけている人たちが、新たな可能性のある場所や業界に軸足を移せるようになるまでの間の生活を支える社会のセーフティネットに対する投資も重要である。
生命科学は、空前の進歩を遂げてきた。数年後には、人々は体内のガン細胞だけを正確に攻撃し、家畜から移植された肺で呼吸をし、人里離れた貧しい地域にも世界最高の病院から医療を届ける世界に住んでいるだろう。こうした進化の恩恵を最初に享受するのは富裕層だと目される。しかし、社会経済の垣根を越えて医療が多くの人に届けられるようになる未来に向けて、先駆的取り組みが始まっている。
ゲノムと遺伝子についての研究、ゲノミクスは、人と情報、そして人同士を結び付ける接続のテクノロジーが安価になるにつれ、進化を遂げていく。ゲノミクスが年間何十万もの命を奪っている病気をほぼ打ち負かす日が来るだろう。
また、高度に接続された社会では、医療診断のサプライチェーンのグローバル化も促進される。医療分野のイノベーションが医療の平等化を推進することが予想される。
ゲノミクスが高度化すると、デザイナーベイビーをつくる動きにつながるという重大なダークサイドがある。ゲノムをシーケンスすれば、その人が将来かかる可能性が高い病気などのリスクが判明する。また、依存症の根本原因や遺伝的特質が解明されつつある今、受胎後10週間で、どんな子どもが生まれるかがわかってしまうと言ってもよい。
3,400冊以上の要約が楽しめる