社会人になると、下調べや勉強もほとんどせず成果をいきなり出す「天才肌」の人に出会ったことはないだろうか。天才肌とは正反対の「コツコツ派」である著者は、コツコツとメモを取り、発想法に関する本を読みあさった。そして、自分なりにアイデアを出す方法を試行錯誤し、独自のノート活用術を生み出した。
著者は打合せや会議以外でも、映画を観たり本や漫画を読んだりしたとき、さらには飲み会でも面白いことを耳にしたらメモをするという。一貫しているのは、「企画を考えるときの参考にする」というように、メモを何に活かすのかを決めているという点だ。アウトプットの目的を具体化し、興味があるものを書き留めていく。そうすれば、メモを見返すのがラクになり、メモの中から自分の好みのパターンが把握できる。これがオリジナリティある企画づくりの源になっている。
著者のノート活用術は、次の3つのステップから成り立っている。「毎日コツコツと、気になったことをノートにメモする」、「その中から、選りすぐりのメモだけを特別なノートに書き写す」、「選ばれたメモを頻繁に見返し、アウトプットに活用する」の3つだ。
このステップのヒントは、博報堂ケトルのクリエイティブディレクター、嶋浩一郎氏の本にあった。嶋氏は、普段のメモを取るノートを「2軍ノート」と呼び、一方、その中から選りすぐりの面白いトピックスだけを「1軍ノート」にまとめて、企画のネタとして活用しているという。2軍というネーミングによって、心理的ハードルが下がり、気軽に書き込めるようになる。
これを取り入れた著者は、2軍ノートから1軍ノートに書き写すときに、一工夫加えている。そこに書かれている内容を膨らませて、より面白くなるよう、さらに思いついたアイデアを追加するのだ。例えば「別の何かと組み合わせると……」、「違うシチュエーションに転用すると……」というように。
また、著者はイラストをつけることで、アイデアをカタログ化している。文字だけでもよいし、グラフィックデザインの仕事をしている人なら、印刷物を1軍ノートに貼って、ビジュアルメインにするのもよいだろう。折に触れてページをめくるだけで、インスピレーションが湧くにちがいない。
何気ないメモから著者が大ヒットを生み出した例として、「レシートレター」が挙げられる。購入した内容や金額などを示すだけの紙なのに、この一枚から浮気が発覚するなど、強烈なメッセージを放つレシート。このメッセージ性を活かして、妻への感謝の気持ちを伝える手紙をつくれば面白い、と1軍ノートにアイデアをしたためていた。
実際に作品化する際は、レシートの文字を「イツモ料理ツクッテクレテ、アリガトウ」のように変え、金額についても、アリガトウのところには39円と記載するなど、本物さながらのレシートをつくった。これを見つけた著者の妻が写真つきでツイッターにアップしたところ、4万リツイートを超えた。アップ日はちょうど11月22日で「いい夫婦」の日だった。
このエピソードはテレビ番組などさまざまなメディアで紹介されるほどの反響を得た。このようにノート術を活用することで、著者は安定してヒットを出せるようになり、人生が変わったという。
2軍ノートとして、著者はツバメノートの横罫線を使っている。ポイントは、ページの上から5センチほどのところに横線を引き、上部にページ全体のサマリーとして「このノートで残したいものベスト3」をまとめている点である。これで振り返りがぐっとラクになるという。
そして、ページの真ん中に縦の線を引き、左側に事実や打合せの議事録などを記し、右側にはそれに対する考察や、思いついたアイデア、疑問を書いていく。また、強調したいところに「青」、のちに企画の参考になりそうな面白いところに「ピンク」、やるべきことに「黄緑」の色ペンでチェックをつけている。そのうえで、
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