不愉快さは、書き出すことで発想の源にもなる。
「バグリスト」という手法は、イライラして何も考えられないとき、自分の発想を閉じこめるブロックを見つけたいときに、絶好の発想法だ。
やり方も実にシンプルである。まず、(1)紙かノートを用意して、タイマーを10分にセットする。次に、(2)不愉快なこと、嫌なこと(バグ)をとにかく書き出す。(3)10分経ったらそこで手を止め、(4)気分がすっきりしたところで、やる気をチャージし、やるべきことに取りかかる。そして、(5)書きためたバグリストのなかから1~2つ選び、その不愉快さを改善・解決することを考える。
イライラの種を書き出すことは、健康や幸福感を増進させることで知られているが、それだけでなく、創造力や発明力の着火剤にもなりうる。その意味で、継続的に新しい考えを必要とする人にとって、バグリストは習慣化すべきアクティビティだといえる。
バグリストに書かれた不満のなかには、簡単に解消できるものもあるだろうし、そうではないものもあるだろう。どれを選ぶかについては、2通りの考え方がある。
1つは「比較的たやすく解決できるものを選び出す」ことだ。私たちの資源や時間は有限であり、すべての不満を解決することはできない。ならば、解決しやすそうなものから潰していくべきという考えである。
もう1つは、「あえて大きな問題に着手したほうが、実は簡単に解決できる」という発想だ。ものの見方や問題のとらえ方が根本的に変われば、大きな問題というのは意外とあっさり解けることが多い。なにより、大きな問題に挑むことで、問題解決者としてのレベルを高める効果もある。
「アイデアを生みだすのに躊躇する」「自分のクセや先入観にとらわれず、発想を広げたい」――そうしたときにぜひ試してみてほしいテクニックが、「ランダム刺激」である。
最初に、問題とは無関係な刺激を選ぶ。周囲の物音あるいは目に映るもの、デタラメに開いた本のページ、サイコロやランダムに引いたタロットなどがいいだろう。そうしたら、そこから刺激を受け取り、問題と結びつけて、自由に連想する。これを満足するまでくりかえす。
不確実性をわざと導入することで、不確実性の高い課題に対処するというアプローチは、伝統的な考え方に反しているように見える。しかし、これまでの慣れ親しんだやり方を打ち破るためには、どこかでその壁を越えなければならない。そうしたとき、ランダム刺激は、これまでのやり方を否応なく変更する強力なツールとなってくれる。
ランダムによってもたらされた結果に寄り添いつづけることで、今までとったことのない行動や思考が生まれてくる。そのなかに、これまで体験したことのない何かが発見できるかもしれない。そのすべてがうまくいくわけではないが、今までと違ったアイデアの種となるはずだ。逆に、出てきた刺激を受けとらず、自分好みのものが出るまで、流してしまってはならない。
ランダム刺激に慣れ親しんでくると、どのようなものでも発想の種にできること、つまりアイデアを生みだす人にとって、無駄な経験はないということが理解できるようになるだろう。
発想の前提や枠組みを壊し、新たな視点で問題を取り直すためには、「問題逆転」アプローチが有効だ。これは、(1)問題や課題、既存のアイデアを言葉で表現し、(2)言葉にした問題の一部を否定形や対義語に置きかえて<逆転>するところから始まる。
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