BCG経営コンセプト

市場創造編
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国内外を問わず社会の変化が激しい中で、経営を取り巻く環境もまた大きく変わり、ますます複雑化している。大企業であろうとスタートアップであろうと、既存事業の成長、グローバル化、デジタル・テクノロジーの進化、多様な価値観の上に立つためのリーダーシップなど、多くの問題に同時に向き合い、対応していかなければならない。激変する企業環境の中で、経営者やマネジメントに近い人々が頭を悩ませることは、主にグローバル経営、デジタル化、イノベーション、リスクマネジメント、株主価値向上といったテーマにまつわるものだろう。

本書は、このような今日のビジネス環境に沿う形で未来の経営テーマについて整理し、成長を実現するための経営手法をまとめている。企画は、1963年に設立され世界をリードする経営コンサルティングファームとして知られるボストン コンサルティング グループ(BCG)によるもので、同社の最新の分析と事例をふんだんに盛り込んだ内容になっている。成功例、失敗例の両方を踏まえていることから、読者の置かれた状況と照らし合わせつつ、必要な対策を講じる助けになることは間違いない。全6章であるが、必要な部分から読むことができ、すべてを読み通せば現代の経営にまつわる諸問題を俯瞰することができるだろう。

ライター画像
櫻井理沙

著者

内田 和成(うちだ かずなり)
早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心に、戦略などの策定・実行を支援するプロジェクトを数多く経験。2006年には「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田ビジネススクール)。ビジネススクールで競争戦略やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。また、キユーピー、ライオン、三井倉庫などの社外取締役も務める。著書に『デコンストラクション経営革命』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仮説思考』『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(編著、日本経済新聞出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    新興国で勝てるイノベーションのビジネスモデル化は、まずビジョンや戦略シナリオを定め、どんなバリューチェーン要素により構成されたモデルで実現するのか、を検討していくことが重要である。
  • 要点
    2
    既存市場が成熟しビジネスの構造が変わっていくなかで、大企業こそ、既存ビジネスを通じたアセットの蓄積や、新しい事業を創出する基盤を活かしてビジネスモデル・イノベーションを実現しなければならない。
  • 要点
    3
    CEOアジェンダは退任演説から逆算してつくる。破壊を設定し、それと並行して創造をどう主導していくかを示す必要がある。

要約

グローバル・アドバンテージ

グローバル化が日本企業にもたらすもの

新興国経済は成長鈍化、地政学リスクの高まり、資源価格下落などの課題に直面しているが、それでもその市場のほとんどが先進国を上回るスピードで成長を続けている。急成長からより安定的な成長へと変化していく中で、新たな収益を取り込むことは以前より格段に難しくなっている。そこでは経済の発展段階や消費者の嗜好、インフラの状況、流通チャネルの進化度合いなどが異なる多様な市場で、細分化した市場・セグメントに応じた、より差別化したアプローチが必要である。

新興国市場で戦う相手
adrian825/iStock/Thinkstock

新興国市場では3種類の競合企業がしのぎを削っている。P&G、ユニリーバ、ネスレ、ジョンソン&ジョンソン、サムスンなど、すでに新興国でも確固たる地位を築き、蓄積された豊富なノウハウにより各市場に適応した戦略を実現しているグローバル・ジャイアント(先進国ベースの多国籍企業)。インドのインフォシス、ウィプロ、ブラジルのエンブラエル、中国のハイアール、インドネシアのインドフード、タイのチャロン・ポカパン・フーズなど、自国ないし周辺地域内で圧倒的な地位を築き、さらにグローバルに躍進するグローバル・チャレンジャー(新興国ベースの多国籍企業)。グローバル・チャレンジャーより規模は小さいが、国内市場に特化し、現地の消費者・顧客のニーズを熟知して、政府とも強い関係を持ち強力なポジションを築いているローカル・ダイナモ(新興国のローカル企業)である。

成功している企業の要諦は何か

新興国で成功している日本企業は、10年単位の長期戦略シナリオをもとに展開している場合が多い。経営資源を最適化しつつ拡大し、企業価値向上を実現できる10年の「海図」を社内外に示す必要がある。それに当たっては、新興国で勝てるイノベーションのビジネスモデル化、ポートフォリオマネジメントの確立、グローバルガバナンスの定義、という3つの課題をセットにして考える必要がある。

勝ちパターンを構築するには

新興国で勝てるイノベーションのビジネスモデル化は、2つのステップに整理できる。まず、どの事業、どの国・地域で、どういうポジション、シェアを占める企業を目指すのか、というビジョンや戦略シナリオを定め、市場の変化に対応してターゲットを再定義し(例:富裕層から中間層へのシフト)、新たなターゲット層にどんな価値提案ができるのかを考えて、基本戦略を策定する。

それらが策定されたら、次はどういう勝ちパターンでそのポジショニングを達成していくのか、どんなバリューチェーン要素により構成されたモデルでそれを実現するのか、競争優位性の源泉は何か、それはどのような独自の技術や能力、仕組みにより支えられているのか、というようにバリューチェーンの組み立てを検討する。

ローカル人材の活用とガバナンス
dr911/iStock/Thinkstock

新興国進出で何より重要なのは、ローカル人材をどう育て、ビジョンを共有するか、である。日本企業が海外市場でビジネスモデルを迅速に構築していくための手段として、現地の同業企業や卸・流通企業を買収したり、それらの企業に出資したり、ジョイントベンチャーを設立したりするケースが多く見られる。海外で買収した企業のガバナンスは、「信頼」と「透明性」を高いレベルで実現することが重要である。

ビジネスモデル・イノベーション

大企業こそイノベーションが必要

イノベーションといえば、若いテクノロジー系企業やITベンチャーの専売特許のように考えられ、既存の大企業はイノベーションから最も遠い存在と思われてきた。しかし、既存市場が成熟し、消費者のニーズやビジネスの構造そのものが変わっていくなかで、それについていけないのでは、大企業といえども市場を失うリスクが十分にある。一方で、大企業には既存ビジネスを通じたアセットの蓄積や、新しい事業を創出する基盤も備わっている。大企業がビジネスモデル・イノベーションを実現するための強みや落とし穴はどこにあるのだろうか。

本質を捉える

ビジネスモデルは、バリュープロポジション(価値提案)とオペレーション・モデルの2つの中核要素により構成される。バリュープロポジションとは、「自社は誰に対して何を提供しているのか」という問いに答えるもので、ターゲット・セグメント、商品・サービス、収益モデルの3つの側面での選択を反映する。

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要約公開日 2017.03.27
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