情報過多の時代において、コミュニケーションがうまくいかないのは、それに費やす時間や量のせいではない。問題は、「どのように」コミュニケーションをとるかである。
ポジショニングとは、情報があふれかえる現代社会で、人々にメッセージを届けるという難題を解決する、最も有効な考え方である。商品特性や価格、販路、広告宣伝などの切り口により、消費者の頭の中に商品を位置づける(ポジショニングする)というものだ。
広告コピーの世界においても、情報社会を制するのは現実に即した直球勝負のコピーだといわれる。新奇なイメージをつくり出すのではなく、消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結びつけるのだ。
人々の頭脳は、広告や本、テレビ、新聞などさまざまな形で情報の集中砲火を浴びている。その中で消費者の頭の中に食い込み、長きにわたって何かを印象づけたいのなら、ターゲットを絞り込み、細分化すること、つまりポジショニングが欠かせない。そのうえで、シンプルでエッジの効いたメッセージを発信するとよい。
現代社会で効果的な広告を打つには、自分たちの耳を消費者の周波数に合わせなければならない。消えないメッセージを消費者の頭に刷り込むには、「一番乗り」がダントツ優位である。一番高い山、一番の会社。その道の一番なら、人の頭の中に確固たるポジションを築ける。
逆に、一番乗りできなければ、ポジショニング戦略では不利となる。今日、市場でのノイズはあまりにも大きい。いくらユニークな商品であっても、潤沢な資金を投入し、クリエイティブなキャンペーンを打っても、メッセージは消費者には届かない。だからこそ、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と肝に銘じなければならない。
人の頭脳は処理しきれない新しい情報を拒否する性質を持つ。情報社会では人の頭脳は容れ物として小さすぎる。そのため、商品の爆発的増加に対処するために、人々は商品やブランドを頭の中でランク付けするようになった。
新たな商品分野を開拓したいのなら、広告人は新しい「はしご」を持ってくる必要がある。つまり、新製品は必ず既製品に対抗する形でポジショニングしなければならない。すでに頭の中にあるものと関連づけることではじめて人は新しいものを受容できるからだ。例えば自動車が初めて発売されたとき、馬なし馬車というネーミングによって、既存の輸送機関に対抗するものとして、自動車は認知の足場を固められた。
もし自社が市場でトップシェアを占めていなければ、ナンバー2に一番乗りすればよい。
どの市場を見ても、リーダーはナンバー2のブランドを大きく引き離している。この圧倒的優位性を長期的に維持するには、「ザ・リアル・シング(本物)」にこだわることが欠かせない。「私たちはナンバー1」という自明の事実を繰り返すのではなく、自分たちオリジナルのコンセプトを強調するのだ。そうすれば、「私たちこそが本物であり、他はすべて真似である」という印象を消費者に与え、特別なポジションを維持できる。
また、リーディング・カンパニーの多くは、次々と別のブランドを導入し、マルチ・ブランドをカバーしている。
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