スマホを持つ人を対象にしたアンケート調査で、約半数が1日に3時間以上スマホを使用していることがわかった。この習慣を1年続けると、約1ヶ月間に渡ってスマホに接していたことになる。さらにこれが一生続くとすれば、人生の約10%の時間をスマホの画面を見て過ごすことになる。しかし、この習慣をすぐにやめることは難しい。なぜなら私たちはスマホに「依存」してしまっているからだ。
スマホでSNSやゲームをしていると、「ドーパミン」という快楽物質が出るため、つい夢中になってしまう。もちろん、スマホを使用したときに出るドーパミンの量は、ギャンブルや薬物と比べるとわずかである。それでも依存を引き起こしやすい理由として、アクセスのしやすさという点が挙げられる。
日本人はギャンブルの依存率が世界一だという。激しいギャンブル依存を引き起こしやすいパチンコやパチスロが駅前など、いたるところにあり、簡単にアクセスできてしまうからだ。スマホはパチンコよりもはるかにアクセスがしやすいため、たとえドーパミンの放出が少量だとしても依存状態を生み出しやすいのだ。
スマホに依存する現状を変えたいと思っても、すぐには実行しづらい。脳の中にスマホを常に利用する習慣という名の回路ができているからだ。
新しい習慣を身につけるには、新しい脳の回路を作る必要があり、約45日、つまり約6週間がかかるといわれている。完全にスマホを断ち切ることは事実上難しい。そこで現実的な対応として、まずは「SNSをしばらく見ない」などと周囲に宣言することを推奨したい。逆に「少しくらいいいだろう」と誘ってくる人がいる場合は、相手と距離を置くか、最初から協力をあおぐのがよい。
また、自分が心地よいと感じている刺激が何なのかを解明することも重要となる。その刺激を自分の成長につながる他の刺激にすり替えるようにしよう。
アプリの業界は、いかに顧客の時間を奪うかを競っている。ゲームアプリの戦略の一つとして「カスタマイズ性」がある。多くのスマホゲームでは、性別や容姿を自由にカスタマイズした自分の分身である「アバター」を使って遊ぶことができる。カスタマイズによって、ゲームの世界を思うままに変化させられる。これは「変化するものにハマる」という人間の性質をよくとらえている。さらに、カスタマイズで自己肯定感を満たす効果も得られる。このように、ゲームの世界では少額で理想の姿を実現できてしまう。
このほか、ヒットするゲームには人間の脳の特質に合わせた魅力がふんだんに盛り込まれている。たとえば、やればやるほどレベルが上がる「称号(レベル)」システムや、キャラクターやアイテムを集めてコンプリートしたいという欲求をかきたてる「コレクション性」などである。
くわえて、現在のスマホゲームの多くは、「クリアする」という状態にならないため、ユーザーの時間を奪い続けることになる。昔のゲームは、クリアすることでドーパミンが出るという仕組みになっていたが、今のゲームは単発のプレイで十分快感を得られるため、ゴールをめざす必要がない。すると、ユーザーは集中力や目標を達成しようという意識をも奪われてしまうのだ。
ここからは、スマホに人生を奪われないための方法を紹介する。人は人間ドックや健康診断の結果を見て、急いで食生活を変えたり、病院に通い出したりする。それは病名や症状が視覚化されたためだ。
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