人間がエネルギー源とする栄養素には、糖質と脂質の2種類があるが、健康的でハイパフォーマンスな生活を送りたければ、糖質ではなく脂質を主なエネルギー源とすべきだ。
はるか昔、私たち人類は飢えと闘うために、体に蓄えた脂質をエネルギー源としてきた。そのため、本来の人間の体は「ファットバーニング(脂質燃焼型)」にできているといえる。しかし、1万年前より穀物の栽培が始まったことで、状況は一変した。穀物にふくまれている糖質が主なエネルギー源として利用されるようになったのだ。それ以来、人間は糖質を燃やして生きる、「シュガーバーニング(糖質燃焼型)」の状態に陥ってしまった。
仕事のパフォーマンス向上や様々な疾患を改善するためには、人間本来の状態であるファットバーニングに戻さなければならない。というのも、人間はもともと糖質を摂らずとも脂質をエネルギー源とすることができ、しかもそのほうが効率がよいからである。
私たちの体には、糖質と脂質のタンクがそれぞれ備わっている。糖質タンクはすぐにエネルギーを取り出すことが可能だが、最高でも2000キロカロリー程度しか蓄えられない。一方の脂質タンクは、その20倍近くの4万キロカロリーを蓄えることが可能である。
私たちの先祖は、いつ飢えが来るのかわからない中で生活していた。そのため、すぐに空になってしまう糖質タンクを燃やすシュガーバーニングではなく、巨大な脂質タンクからエネルギーを得るファットバーニングで命をつないできたというわけだ。
現在のアメリカの医学界では、ファットバーニングが人間の体に適していることは常識である。そもそも心臓や肝臓、脳などのあらゆる臓器は、エネルギー源として脂質を好んでいる。体は脂質をエネルギーとすることが得意なのだ。だが、人間の体がシュガーバーニングに頼るシステムに変わったことで、さまざまな弊害が起きるようになった。
たとえば、炭水化物などの糖質を摂ると、急激な眠気に襲われることがある。これは、体に入った糖質が「グルコース」へと変化し、グルコースを運ぶ「インスリン」というホルモンがスパーク(急上昇)した結果だ。血液中にグルコースを運ぶインスリンが増えると血糖値が上がるのだが、インスリンはスパークしたのち一気に減ってしまう。すると血糖値が安定しなくなり、細胞に供給されるエネルギー源も安定しなくなる。すると最終的には、内臓機能や、集中・記憶に関連する脳のエネルギーレベルも安定しなくなってしまう。
一方、体をファットバーニングに変化させると、インスリンのスパークが起きなくなるため、体と脳を最高の状態に保てるようになる。実際、世界中で成功しているエグゼクティブの人たちは、ファットバーニングで過ごす人が多い。ファットバーニングに体を変えるためには、食生活を糖質中心から脂質中心へと変えるべきである。
飽食になった現代、私たちはすっかり糖質に依存してしまっている。だが、糖質は体にあらゆるマイナスの影響を引き起こす。糖質を摂取すると、体はシュガーバーニングの状態を維持するために、さらに糖質を欲するようになるからだ。
小麦や米などのでんぷんが多めの炭水化物をいくら食べたとしても、体には「栄養が足りない」と認識される。そのため、脂質やタンパク質を摂取したときに多く分泌される満腹ホルモン「レプチン」が分泌されず、結果として食べ過ぎてしまう。
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