顧客体験の教科書

収益を生み出すロイヤルカスタマーの作り方
未読
顧客体験の教科書
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収益を生み出すロイヤルカスタマーの作り方
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顧客体験の教科書
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2016年07月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

たとえば、すばらしい食事と見事な夜景を楽しめる、有名なレストランがあったとしよう。サービスも一流ともっぱらの噂だ。

しかし、そのレストランに予約しようと電話したのに、いつまでも話し中だったらあなたはどう感じるだろうか。あるいは、ウェブ予約をしようにも、公式ウェブサイトには電話以外の予約方法が書いていなかったとしたら?

どんなにすばらしいサービスを提供していても、このような体験をすれば、誰でも不快な気持ちをいだくものである。もちろん,その店に対してポジティブな印象を持つことはきわめてむずかしくなるだろう。

著者は、CX(Customer Experience:顧客体験)と顧客サービスを明確に識別できていない経営者があまりにも多いと指摘する。いわく、CXとは、あらゆる場面における顧客の体験を指しているのであり、顧客サービスはあくまでCXの一部でしかないという。

実際、日本企業の場合も、顧客サービスに対しては徹底したこだわりを見せるが、ことCXになると配慮が行き届いていないことが少なくない。

すばらしいCXを提供できていないために企業が生みだしている損失は、一般的に考えられているよりもずっと大きい。ぜひ問題意識を持ちながら、本書を何度も読みかえしてみていただきたい。まちがいなく顧客のロイヤルティ向上、そして収益の増大に役立てることができるはずだ。

ライター画像
和田有紀子

著者

ジョン・グッドマン (John A. Goodman)
カーネギーメロン大学ケミカルエンジニアリング学部卒業。1972年ハーバード・ビジネス・スクール卒業後にマーケティング調査・コンサルティングのTARP社を設立し、ホワイトハウスより「米国企業の苦情処理の実態調査」を受託。その調査報告書が、米国の大手企業を中心にフリーダイアルの導入と合わせて苦情対応の顧客相談窓口の設置を促したことで知られる(日本では、その調査結果が「グッドマンの法則」として紹介される)。以降、消費者行動分析をベースに40年間、800社以上のコンサルティングと1000を超える調査プロジェクトに従事。フォーチュン100社中45社が同社に手法を導入している。現在、CCMC(Customer Care Measurement Consulting)のバイス・チェアマン。著書にStrategic Customer Service(邦題『グッドマンの法則に見る苦情をCSに変える「戦略的カスタマーサービス」』)のほか、250本超の論文・レポートを発表している。

本書の要点

  • 要点
    1
    顧客のロイヤルティが低下する真の原因は、マーケティングやコミュニケーション上における不備である。これを未然に防ぐためには、CXの起点から完了までのすべてのフェーズで顧客が何を期待しているのかを分析し、あらかじめ対処しなければならない。
  • 要点
    2
    顧客損失を戦略的に防ぐためには、「顧客損失モデル」を用いて、現状を数字で把握する必要がある。
  • 要点
    3
    顧客の事前期待がどの程度問題なく実現されたかに、最大限の注意を向けなければならない。
  • 要点
    4
    問題解決に着手した後は、そのアクションによってきちんと問題が解決されたのかをきちんと検証するべきだ。

要約

【必読ポイント!】 CXから見る顧客像

顧客が求めているのは予想以上の体験ではない

顧客は、提供されるサービスに対して、驚くほどすばらしい体験を期待しているわけではない。顧客が期待しているのは、自分が注文した通りのものが、トラブルなどの不快な出来事をともなわずに、約束どおり手元に届けられることだけである。

逆に言えば、企業がどんなに良いサービスを提供していても、それが顧客の事前期待と異なっていれば、顧客は不満を抱くし、トラブルに発展してしまうことも珍しいことではない。

顧客は説明書を読まない
phototechno/iStock/Thinkstock

顧客の期待に応える商品やサービスを提供するためには、まず企業のサービス内容をきちんと顧客に理解してもらうことが肝要だ。

そのためには、マーケティング活動全般において一貫した誠実さが求められるが、それだけでなく、顧客にも商品やサービスの契約書や取扱説明書をしっかり読んで理解してもらうことも必要となる。

ここで厄介なのは、顧客が取扱説明書や契約書の類をまったく読まないことだ。小さな活字それ自体が、顧客にとってはわずらわしい体験なのである。そのため、顧客にとって大事なポイントは、契約書のもっとも見えやすい位置に書かなければならない。補足説明欄に記載するのは論外である。

また、製品のデザインについても、細心の注意を払わなければならない。たとえば、あまりにも多くのボタンがところ狭しと並んでいるリモコンは、プロダクトデザインの失敗だと言えるだろう。多くのユーザーにとって、「不要」なボタンが多く並んでいることは、気持ちのよい体験ではないからだ。

顧客が抱える不満の大半は、商品やサービスが顧客のもとに問題なく届けられたあとに起きている。企業はこうした事情を踏まえたうえで、製品やデザインを練り上げなければならない。

コミュニケーション不足がすべての元凶である

最終的に顧客の不満やロイヤルティ低下を招くのは、商品やサービスの欠陥ではない。マーケティングや営業上のコミュニケーション不備にこそ、真の問題がある。なぜなら、顧客の不満やロイヤルティ低下は、企業に「意図的に」騙されたと感じるときに生まれるものだからだ。

CXを強化する上では、顧客の不満が生じそうな箇所をあらかじめ特定し、トラブルが起こる前に、予防的な措置を取ることが肝要だ。また、それでもトラブルが起こった場合に備えて、顧客が苦情を申し立てやすい環境もつくっておくべきである。そうした仕組みがない限り、ほとんどの顧客はわざわざ苦情を申し立てたりはしないからだ。

苦情を申し立てられること自体は決して悪いことではない。むしろ、顧客の苦情に対して、企業が満足のいくような対応をとった場合、顧客のロイヤルティは20~50%も向上するということが、データから明らかになっている。

顧客損失モデル

見えない損失を割りだせ
SIphotography/iStock/Thinkstock

サービスがすばらしいことと、最高の顧客体験とは同義語ではない。最高の顧客体験を届けるための第一歩として、ここではサービスの機会損失を見積もる方法を紹介する。

いくらCXを強化しても、収益性というかたちでは、すぐに結果はあらわれない。そのため、CXの見直しに投資してもらうためには、説得力を持った数字を提示しなければならない。

このとき、役に立つのが「顧客損失モデル」だ。顧客損失モデルとは、

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要約公開日 2017.04.10
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