地方再生・活性化の取り組みには、「何に取り組むか=事業」、「限りある資源をどう活用するか、足りない資源をどう集めるか=資源(ヒト・モノ・カネ)」、「どう取り組むか=組織」の3つの要素があり、これらがすべて機能して、初めて成立するものであると著者は考えている。
本書では、事業、資源、組織というこれら3つの要素について、5つの観点、つまり(1)ネタの選び方、(2)モノの使い方、(3)ヒトのとらえ方、(4)カネの流れの見方、(5)組織の活かし方から、地域の構造問題を整理し、問題点を指摘している。
地方再生・活性化のネタ選びにおけるありがちな失敗は、地域活性化の先進地域へ視察に行き、同じような取り組みを自分たちの地域でやろうとしてしまうことだと著者はいう。
たとえば、地域活性化のための手段として、ゆるキャラを採用している自治体は少なくない。これは熊本県の「くまモン」、彦根市の「ひこにゃん」などが広く知れわたり、高い経済効果をもたらしたと評価されているからだ。
だが、経済効果というのはそもそも、正しい因果関係の立証が不可能であり、新規商品と既存商品の置き換えの区分がしにくいため、数字が過大になる傾向がある。くわえて、ゆるキャラ商品に押し出され、売れなくなってしまった商品のマイナス効果も加味されていない。
このように、数字の根拠が明確でないにもかかわらず、多くの自治体が一気にゆるキャラ市場に参入したことで互いに潰しあってしまい、ともに尻すぼみに終わることも少なくない。こうした事態を避けるためには、成功事例をたんに模倣するのをやめるべきである。
著者は、数多くある地方創生政策のなかから本当の成功事例を見きわめるための視点として、(1)初期投資が交付金・補助金のような財政中心ではなく、投資・融資を活用しているか、(2)取り組みの中核事業が、商品やサービスを通じて売上を立て、黒字決算となっているか、(3)始まってから5年以上、継続的に成果を出せているか、(4)トップがきれいなストーリーだけでなく数字について語っているか、(5)現地に行って1日定点観測をしてみて変化が感じられるか、という5点を挙げている。
「道の駅」や第3セクターは、地方にあるモノの典型的な問題事例だ。著者によると、地方の特産品などを購入できる商業施設「道の駅」は、1993年に建設省により認定制度がつくられ、2016年5月現在、全国に1093駅が存在している。しかし、「道の駅」のなかには経営不振が続いて赤字を出しているところも少なくない。
行政が出資して、施設運営を民間に委託している「道の駅」が失敗するのは、初期投資が税金で賄われているため、経営計画がずさんになりやすいからだ。また、設備投資が過剰になりやすかったり、民間側が受け身の姿勢になってしまったりといった歪みも生じやすい。
同様に、地方公共団体が何らかの形で出資し、人材を派遣して設立する第3セクターにも問題は多い。第3セクターは2015年3月現在、全国に7604あるが、関わる事業では失敗が続いている。これは、ひとつの事業で複数の政策目標が設定されており、虻蜂取らずの結果になっているためである。
第3セクターにおいては、議会や委員会などにおける合意形成のほうが優先され、国の補助金制度などの制約に則って事業内容が決定されてしまっている。また、計画立案をコンサルタントに外注し、資金調達は役所任せ、失敗しても自治体が救済するというように、責任の所在が不明瞭なことも少なくない。
著者は、モノの使い方の失敗事例を踏まえて、地方がしなければならないことを「常識破り」だと主張し、3つの常識破りを推奨している。
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