これからは地方の中小企業や自治体が日本を牽引し、改革していく時代である。
IT企業サイファー・テックの吉田社長は、条件面以外でも魅力がなければ優秀な人材を採用できないと考え、2012年に徳島県美波町にサテライトオフィス「美波Lab」を置いた。職住近接により、サーフィンや釣り、自転車等の趣味に没頭でき、東京で働いたときと同等の給料で、豊かな生活を送れると、新しい働き方を提唱した。すると、Iターンで移住する社員も現れ、有能なエンジニアの確保、業績向上につながり、2013年には本社を東京から美波町に移したという。
吉田社長は「中小企業こそ地方に目を向けるべき」と強調する。なぜなら地方では、町で出会う人と会話をするだけでも、多くの課題が見つかるからだ。そして、この課題解決と地方創生の担い手には、中小企業と、そこで働く従業員が最適なのである。
地方創生とは、人口が減少し、仕事が減った地方をよみがえらせる試みだ。国は「2060年に1億人程度の人口を維持する」というビジョンのもと、2015年からの5年間で進める方策を「総合戦略」としてまとめ、すべての都道府県・市区町村に、それぞれの「地方版総合戦略」の策定を求めている。これまでの地方活性化は国が主導権を握っていたが、今回は各地方の自主性を重んじるという点で、画期的な大転換だといえる。
目下の人口対策は、地方から東京に向かう人の流れを止めて、東京から地方に人が向かうようにすること、そして少子化の流れを食い止めることの2つである。地方創生によって人口減少による需要低迷を克服すれば、地方企業だけでなく都市部の企業の業績も向上することが予想されている。
注目すべき点は、地方の潜在的魅力に共感する若者が増えている点だ。
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