スタンフォード大学 マインドフルネス教室

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スタンフォード大学 マインドフルネス教室
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スタンフォード大学 マインドフルネス教室
出版社
出版日
2016年07月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

マインドフルネス実践のための解説、特にビジネスへの応用を本書に期待すると、少々期待外れかもしれない。だが本書を読めば、マインドフルに生きることが現代においていかに必要とされているか、はっきりと実感できるようになるはずだ。

著者が教鞭をとるスタンフォード大学といえば、米国屈指の名門大学として知られる。そこでは失敗の経験をもたず、自分の考えを主張し、議論に打ち勝って相手を納得させることに長けている学生ばかりが集まる。だが一方で、彼らは相手に耳を傾けることは得意としていないという。

著者によるマインドフルネスの講義は、こうした西欧的なコミュニケーション方法に慣れ親しんできた学生たちに大きな変化を及ぼしてきた。なぜならマインドフルネスとは、いま生きているこの瞬間を大切にし、そこにいる自分や相手のすべてを受け入れることだからだ。

自分の知識や意見のみに夢中になっていた学生たちは、マインドフルネスの実践を通して、先入観を捨てて新しい目で世界を捉えなおすようになる。本書を手にとったあなたも、マインドフルネスに生きることがもたらす、新しい可能性を感じずにはいられないだろう。

現代の落ちつきない生活に疑問を感じているのなら、ぜひ本書を手にとってみていただきたい。きっとあなたの琴線に触れるはずだ。

ライター画像
猪野美里

著者

スティーヴン・マーフィ重松(しげまつ)
日本生まれ、米国で育つ。スタンフォード大学の心理学者。ハーバード大学で心理学の博士号取得。ハーバード大学、東京大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。現在、スタンフォード大学ライフワークス・ファウンディング・ディレクターを務める。
マインドフルネスやEQでグローバルスキルや多様性を高める国際的な専門家として知られ、教育、医療分野を中心に活躍している。著書に、『When Half is Whole』(Stanford University Press)、『Multicultural Encounters』(Teachers College Press)、『多文化間カウンセリングの物語(ナラティブ)』(東京大学出版会)、『アメラジアンの子供たち――知られざるマイノリティ問題』(集英社新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    マインドフルネスとは自己観察、自己探求、行動を通して、自分という存在の豊かさに触れ、自己や世界と調和して暮らす生き方である。
  • 要点
    2
    マインドフルネスの実践によってストレスが軽減され、認知的パフォーマンス、問題処理力、レジリエンス(回復力)が高まることが研究で明らかにされている。
  • 要点
    3
    マインドフルネスの実践は、ヴァルネラビリティ(自分の弱さ)の受容をもたらす。そしてそれが周囲の人々への思いやりや感謝を生むのである。

要約

【必読ポイント!】 マインドフルネスとは

現代人に「集中」を取り戻す

現代人は複数のことを同時に処理する生活を送っており、ひとつの瞬間に集中できる習慣を失っている。そんなとき、マインドフルネスは現代人に集中力や感情のコントロールを取り戻してくれる。さらに、共感力や思いやりを高め、人々が親切心でつながっていることを理解できるようにもしてくれる。

マインドフルネスとは、頭や心を空っぽにすることである。自分の考えや意見で頭のなかがいっぱいになってしまうと、物事をありのままに見ることができなくなってしまう。物事をありのままに見られるようになれば、そこに真理が訪れる。

何もせず自分の呼吸に耳を傾けよう
SIphotography/iStock/Thinkstock

マインドフルネスの実践に特別なものは必要ない。マインドフルネスのベースは瞑想である。自分の呼吸に耳を傾けるだけの時間を、生活のなかに少しつくれば十分である。

息を吸いこむ瞬間にその呼吸を意識し、生きている奇跡に感謝する。そして過去や未来に捉われることなく、「今・この瞬間」のみに集中する。そうすることで、大きな気づきや明瞭さ、現実への受容力が養われる。

マインドフルネスの効果が実証されつつある

マインドフルネスが私たちの幸福度を高め、健康に良い影響を与えているとする研究結果は増えつつある。のみならず、学習能力や認知能力の向上、子育て、教育にも役立つものであることが、複数の研究によって明らかにされている。

特にビジネス界において、マインドフル・リーダーシップの効果は大いに認められている。たとえばグーグルやフォードといった大手企業は、マインドフルネスの大規模なプログラムを実施している。マインドフルネスを学んだリーダーは、チームの集中力と生産性を高め、高いパフォーマンスを維持できると期待されている。

「弱さ」の体験がもたらすもの

すべては自分の弱さを認めることからはじまる
Knowlesie/Photodisc/Thinkstock

著者は大学での最初の講義のとき、教室に着物姿であらわれ、学生たちに日本語で話しかけるようにしている。すると、予期しない状況に直面した学生の多くは動揺し、不安や恐れをいだく。エリートである彼らは、自分がコントロールできないかもしれない状況に慣れていないからだ。しかし、こうした体験をすることが「ヴァルネラビリティ」(自らの弱さ)を認め、心をオープンにして学びを受け止めることにつながっていく。

エリート学生にかぎらず、ヴァルネラビリティを認めることは、人をダイナミックに変える大きな要因となる。自分の弱さを体感するとき、人は自分が当然と思っていた世界観を根底から覆され、不安定になる。だがそれこそが、他者や他のコミュニティの立場を内側から理解し、共感する力となってくれる。

この不安定な、弱い状態は人間の基本的特質でもあるのだが、私たちは普段はこれを隠し、自分は強く有能であるように見せかけて暮らしている。しかし、自分の弱さを認識し受け入れることで、人は自分が本当に求めている感情や経験が何であるかに気づき、曖昧さやリスクといった、人生の困難に勇気を持って立ち向かうことができるようになる。

本当の自分を探求するということ

自分の心に正直になり、信じることを行なう

「オーセンティシティ」(本当の自分)とは、自分が何者であるかを知り、自分の考えや感情を自覚しながら、日常生活において、その姿でありつづけるということだ。「今・この瞬間」に目を向けるマインドフルネスを通して、一瞬一瞬を「本当の自分」として存在するのである。

このとき気をつけなければならないのが、社会的に受け入れられやすい姿だけを見せるのではなく、

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要約公開日 2017.05.05
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