現代人は複数のことを同時に処理する生活を送っており、ひとつの瞬間に集中できる習慣を失っている。そんなとき、マインドフルネスは現代人に集中力や感情のコントロールを取り戻してくれる。さらに、共感力や思いやりを高め、人々が親切心でつながっていることを理解できるようにもしてくれる。
マインドフルネスとは、頭や心を空っぽにすることである。自分の考えや意見で頭のなかがいっぱいになってしまうと、物事をありのままに見ることができなくなってしまう。物事をありのままに見られるようになれば、そこに真理が訪れる。
マインドフルネスの実践に特別なものは必要ない。マインドフルネスのベースは瞑想である。自分の呼吸に耳を傾けるだけの時間を、生活のなかに少しつくれば十分である。
息を吸いこむ瞬間にその呼吸を意識し、生きている奇跡に感謝する。そして過去や未来に捉われることなく、「今・この瞬間」のみに集中する。そうすることで、大きな気づきや明瞭さ、現実への受容力が養われる。
マインドフルネスが私たちの幸福度を高め、健康に良い影響を与えているとする研究結果は増えつつある。のみならず、学習能力や認知能力の向上、子育て、教育にも役立つものであることが、複数の研究によって明らかにされている。
特にビジネス界において、マインドフル・リーダーシップの効果は大いに認められている。たとえばグーグルやフォードといった大手企業は、マインドフルネスの大規模なプログラムを実施している。マインドフルネスを学んだリーダーは、チームの集中力と生産性を高め、高いパフォーマンスを維持できると期待されている。
著者は大学での最初の講義のとき、教室に着物姿であらわれ、学生たちに日本語で話しかけるようにしている。すると、予期しない状況に直面した学生の多くは動揺し、不安や恐れをいだく。エリートである彼らは、自分がコントロールできないかもしれない状況に慣れていないからだ。しかし、こうした体験をすることが「ヴァルネラビリティ」(自らの弱さ)を認め、心をオープンにして学びを受け止めることにつながっていく。
エリート学生にかぎらず、ヴァルネラビリティを認めることは、人をダイナミックに変える大きな要因となる。自分の弱さを体感するとき、人は自分が当然と思っていた世界観を根底から覆され、不安定になる。だがそれこそが、他者や他のコミュニティの立場を内側から理解し、共感する力となってくれる。
この不安定な、弱い状態は人間の基本的特質でもあるのだが、私たちは普段はこれを隠し、自分は強く有能であるように見せかけて暮らしている。しかし、自分の弱さを認識し受け入れることで、人は自分が本当に求めている感情や経験が何であるかに気づき、曖昧さやリスクといった、人生の困難に勇気を持って立ち向かうことができるようになる。
「オーセンティシティ」(本当の自分)とは、自分が何者であるかを知り、自分の考えや感情を自覚しながら、日常生活において、その姿でありつづけるということだ。「今・この瞬間」に目を向けるマインドフルネスを通して、一瞬一瞬を「本当の自分」として存在するのである。
このとき気をつけなければならないのが、社会的に受け入れられやすい姿だけを見せるのではなく、
3,400冊以上の要約が楽しめる