ヤンキーの虎

新・ジモト経済の支配者たち
未読
ヤンキーの虎
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新・ジモト経済の支配者たち
未読
ヤンキーの虎
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2016年04月15日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

本書は、地方経済の支配者「ヤンキーの虎」の実像を紹介するとともに、そのビジネス手法や地方経済、さらには日本経済の将来がどのようなものになるのか、政府の経済政策や投資家の分析などと絡めて明らかにするものである。

大企業の経営者たちが小泉改革以降、失敗を恐れるがあまりチャレンジする姿勢を失い「選択と集中」にシフトした一方で、地方経済の雄たちには着実に成長していった。そこにはいくつかの共通点がある。まず、彼らは介護事業、携帯電話販売、コンビニのフランチャイジーなど、サービスや販売に関係する事業を中心に多角化展開する戦法をとっている。また、M&Aもさかんに行なう。さらに、地元のつながりをとても重んじる。

地縁血縁を大切にする経営方針などは、一見すると一貫性がなく、非効率・非合理的であるかのように見受けられる。しかし、その成長の裏にある事業意欲が日本経済の今後を左右すると考える著者は、ヤンキーの虎のようにリスクを取り、自ら「動く人」が増えることを願っている。

著者自身、投資家としてヤンキーの虎のような起業家たちを応援するのみならず、地方にて自ら事業を開始するなど、その行動力もいわゆる投資家の枠からはみ出しており、魅力にあふれている。

都市部に先んじて少子高齢化の進む地方で、今どのようなことが起こっているのか。本書で紹介されている魅力的な経営者たちの視線の先になにがあるのか、巡らせてみてはいかがだろうか。

ライター画像
山崎華恵

著者

藤野 英人(ふじの ひでと)
レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者。
1966年、富山県生まれ。90年早稲田大学法学部を卒業。野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)を経て、96年ジャーディンフレミング投信・投資顧問(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。中小型株のファンドの運用に携わり、500億円を2800億円にまで殖やすという抜群の運用成績を残しカリスマファンドマネージャーと謳われる。2003年4月レオス・キャピタルワークスを創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。現在、運用している「ひふみ投信」はR&Iファンド大賞国内株式部門で4年連続入賞、さらに「ひふみ投信」「ひふみプラス」を合わせた、ひふみ投信マザーファンドの運用総額は1000億円を超えている(2016年3月現在)。ベンチャーキャピタリストでもあり、自身が創業して投資をしたウォーターダイレクトは上場を成功して、現在は同社の取締役。また日本取引所のJPXアカデミーフェローも務める。明治大学商学部兼任講師。主な著書には『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』『儲かる会社、つぶれる会社の法則』(ダイヤモンド社)、『スリッパの法則』(PHP研究所)、『投資バカの思考法』(SBクリエイティブ)、『運用のプロが教える草食系投資』(共著:日本経済新聞出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ヤンキーの虎の特徴は、若く、チャレンジ精神が豊富で、リスクテイカーであることだ。
  • 要点
    2
    日本の有名大手企業の中にも、地方からはじまった会社が多く存在する。
  • 要点
    3
    ヤンキーの虎が成功しているのは、新しいことに意欲的に挑戦する「動く人」だからである。
  • 要点
    4
    日本人の8割は「動かない人」である。彼らは消費意欲が低く、将来に不安を抱え、積極的に努力をしない。こうした受動的な人間が今後、当事者意識をもち「動く人」になれるかどうかが、今後の日本経済を左右する。

要約

「ヤンキーの虎」とは何か

隠れた日本経済の重要プレイヤーたち
Gearstd/iStock/Thinkstock

小泉改革による不良債権処理と公共投資の削減の開始以降、地方経済はこれまでにない困難に直面した。だが、その大打撃から這い上がった地方の経営者たちも少なからず存在する。

彼らにはいくつかの共通点がある。まず、多角化展開があげられる。本業が厳しくなり自ら新しい事業をスタートすることもあれば、経営者の高齢化により別の会社から事業譲渡を受ける場合もある。いずれにせよ、地方の金融機関からの後押しも手伝い、介護事業、携帯電話販売、コンビニのフランチャイジーなど、サービスや販売に関係する事業を広く手がけていることが多い。

また、30代〜50代と比較的若く、チャレンジ精神が豊富で、リスクテイカーであることも共通している。彼らの多くは商売を営む家で育っており、商売での失敗や再起がどのようなものか、肌感覚でわかっている。そのため、かりに事業に失敗することがあっても、すぐに這い上がってくるタフな精神力をもっている。

さらに、勉強意欲も高い。勉強会やセミナーによく参加し、人脈形成にも積極的で、コンサルタントからの経営指南にも耳を傾ける。占い好きで、「運」や「縁」を大切にするという人も少なくない。

都市部で活躍する「ベンチャーの虎」ほど世の中に認知はされていないものの、「ヤンキーの虎」の総数はベンチャーの虎のそれをはるかに凌ぐ。そのため、雇用の受け皿としても、日本経済の重要なプレイヤーとしても、あるいは投資先としても、今後の大きな成長が期待されている。

地方におしゃれなパン屋が多い理由

ヤンキーの虎は、情報収集力に優れている。東京で流行しているものや、これから流行りそうなものを見つけて地元に持ち帰る「ミニタイムマシン経営」が得意なのだ。

たとえば、「コッペパンに牛乳」で育った人々にとって、「クロワッサン、ミルクにバター」という組み合わせは高級感が感じられ、とくに団塊の世代のあいだで人気がある。こうした傾向は、都市部よりも高齢化の進んだ地方で強い。

そこに目をつけ、地方でおしゃれなパン屋を経営する経営者。それが典型的なヤンキーの虎である。専用の機械を導入し、素人でも上手に焼けるようにしたベーカリーレストランのサンマルクや、カフェを併設し、日中の高齢者の居場所を作ったコメダ珈琲などは、その好例といえるだろう。

「地盤引き継ぎ型」ヤンキーの虎

フランチャイズ化で高サービスとコスト圧縮を実現
g-stockstudio/iStock/Thinkstock

株式会社ファーストグループの代表取締役である藤堂高明氏は、二代目社長として自動車整備業を中心に、車の販売・保険・レストランなど多方面に展開する「ヤンキーの虎」だ。先代の時代に売上高1億6000万円、7000万円の赤字を出していた事業を、11年間で売上高30億円へ急成長させた手腕で知られている。

その秘密の一端はフランチャイズ化だ。フランチャイズ化し、徹底した社員教育を行ったことで、サービスの質を上げつつコストを下げた。そして、それまでその地域では考えられなかったような施策を次々打ち出し、お客さんの数をどんどん増やしていったのである。

地域の中で共存共栄する生態系

M&Aを繰り返しながら、事業の拡大と多角化を一気に進めてきた藤堂氏の手法は、その地域の消費者や社会を巻きこんで、お互いが生きる道を築くために協力する「生態系」を生みだしている。

たとえば、自動車整備業と車の販売業という組み合わせは、車を販売した数年後にお客さんが再訪する循環をつくっている。また、自動車整備業に特化した投資運営専門会社をつくることで、利益が出せるようになったら買収する仕組みも整えた。さらに、顧客情報をシェアすることで、それぞれの規模を拡大していく戦略もとっている。

縮小する地方経済のなかで利益を得るためには、自社の外にある新しいチャンスを常に探さなければならない。だからこそ藤堂氏は、今の事業の延長線からではなく、飛躍的な事業拡大、非連続性の成長をめざしている。この「事業意欲の強さ」こそが、ヤンキーの虎の特徴といえる。

「成り上がり型」ヤンキーの虎

トラック一台から上場企業へ

丸和運輸機関の社長である和佐見勝氏は、トラック一台から運送業を始め、2015年4月に東証一部上場を果たした、典型的な「成り上がり型」である。

周囲からの進学のすすめや反対を押しきり、「母の病気を治すため、成人までに独立」することを掲げ、中卒で東京日本橋の青果店に修行にでた。

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要約公開日 2017.05.07
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