ビジネスZEN入門

未読
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ビジネスZEN入門
出版社
講談社
出版日
2016年10月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

アップルを創業したスティーブ・ジョブズや、著名なドキュメンタリー映画監督であるマイケル・ムーア。彼らが禅に多大な影響を受けていたことを知っているだろうか。例えばiPhoneをはじめとするアップル製品はシンプルで美しいデザインが評価されている。この成功要因の一つは余計なものをすべて削ぎ落とし、本質に向き合うという禅の教えを、ジョブズ氏が追求し続けたことだといえよう。

本書では、世界の第一線で活躍する人たちが禅に惹かれる理由を解き明かし、「マインドフルネス」と禅との違いを浮き彫りにしていく。また、仏教のそもそもの成り立ち、日本のビジネスパーソンがグローバルに活躍する上で、仏教の中でもとりわけ禅の考え方を取り入れることが有用な理由などが、具体的なエピソードとともに紹介されている。読み進めるにつれて、「仏教はゲインではなくルーズである」、「禅では体験や実践が重視される」という根本的な考え方について理解を深められるうえに、これまでとは違った視点を得られるはずだ。

著者の松山大耕氏は、京都の妙心寺退蔵院の副住職であると同時に、世界中を飛び回りさまざまな活動を行っている。世界の現状と人間の本質に向き合い続けている彼だからこその、独自のアドバイスが詰まった一冊だ。これからグローバルに活躍したいと考えている人は、世界へ飛び出す前に一歩足を止め、本書を通して禅の教えをもとに、自己と世界を見つめ直してみてはいかがだろうか。

ライター画像
山下あすみ

著者

松山 大耕(まつやま だいこう)
妙心寺退蔵院副住職。1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。埼玉県新座市・平林寺にて3年半の修行生活を送った後、2007年より現職。2009年5月、政府観光庁Visit Japan大使。2011年より京都市「京都観光おもてなし大使」。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出される。2011年、日本の禅宗を代表してヴァチカンで前ローマ教皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席するなど、世界各国で宗教の垣根を超えて活動中。

本書の要点

  • 要点
    1
    仏教、特に禅の教えは、何かを得ようとする「ゲイン」の発想ではなく、積み上げてきたものをあえて崩す「ルーズ」の発想を土台とする。
  • 要点
    2
    禅は「実践」を何よりも重視する。禅の教えが、スティーブ・ジョブズをはじめグローバルリーダーにも支持されているのは、「余計なものをそぎ落とし、本質と向き合う」という考え方が普遍的であることを示している。
  • 要点
    3
    リーダーシップは、論理にとらわれずに、自分の信念に沿って行動する中で自然と醸成されるものである。

要約

【必読ポイント!】 世界のリーダーはなぜ「ZEN」が好きなのか

仏教は「ゲイン」ではなく「ルーズ」である
microgen/iStock/Thinkstock

著者には日本の宗教家という立場で、世界各国の政治家や実業家と交流する機会がある。そのたびに、仏教や禅の教えについて熱心に聞かれるという。世界のリーダーたちが注目しているのは、仏教の中でも特に禅の考え方である。禅は「ZEN」という言葉として、今や世界的に広く認知されている。

なぜ世界の第一線で活躍する人たちが禅に魅了されているのか。その理由は、物質的には不自由がなくなってきているため、精神性を求める人たちが増えているからではないか、と著者は考えている。著者が強調するのは、仏教を信じたからといってすぐに何かが得られるわけではないという点だ。仏教、特に禅の教えは何かを「得る」ための手段ではなく、むしろ何かを「失う」ためのものである。仏教がめざすのは「ゲイン」ではなく「ルーズ」だ。つまり、何かを新たに手に入れるのではなく、むしろ今まで積んできたものを崩していくために、経を唱えて坐禅をする。失うとは、余計なものを削ぎ落とすことであり、それによってもっとも大切な本質に目を向けるということなのである。

禅が外国人に支持される理由

禅に影響を受けた外国人として最も有名なのはおそらくスティーブ・ジョブズだろう。彼が禅から得た影響は、アップル製品のシンプルで美しいデザインの中に息づいている。余計なものをなくして本質と向き合う。こうした禅の考え方は、普遍的なものであるからこそ、文化を問わず多くの人の納得を得られるのだろう。

また、禅は経典を勉強するのではなく、坐禅を組んだり掃除をしたりするなど、身体で実践することを重視するため、言葉がわからなくても問題なく体験できるのである。こうした点が、キリスト教徒やイスラム教徒にも幅広く受け入れられている理由の一つだ。

そもそも、文字で書かれたものは受け取り手の解釈にゆだねられてしまうため、言葉で仏教の本質を伝えるのは難しいと考えられている。よって、文字や言葉ではなく体験で悟りをめざすのだ。

理屈を超えたところにある「禅」の教え
deeepblue/iStock/Thinkstock

禅を体験した外国人の多くは、「なぜこんなことをするのか」と疑問を抱くという。なぜ掃除がそんなに大切なのか、なぜ食事の作法がこんなに細いのか。論理を重んじる西洋の人々にはなかなか理解されない。

しかし、重要なのは「実践する習慣」を身につけることだ。そうすると、一見意味のないように見えることの背後にあるものが見えてくる。一方、西洋の文化では一つひとつの行動に因果関係、そしてゲインを求めるため、禅の教えがなじみにくいという面がある。そこで、実践重視の考え方に共感できるかが、外国人が禅の世界に入ってこられるかどうかの分かれ目となる。

食事のルール一つとっても、禅が良しとする動作はすべて考え抜かれた究極形であり、無駄なものは何ひとつない。こうして、禅の教えを実践に移す中で、理屈を超えたところで即座に反応して適切に行動できるようになるのである。

外国人に禅はわかるのか

禅はどのように世界に広まったのか

禅はインドで生まれ、中国へと広まった。日本へは宋の時代に中国から伝わり、その後は日本独自の形で発達した。日本から西洋の国へと禅を広めた立役者として知られているのは、『禅と日本文化』を書いた鈴木大拙(すずき だいせつ)先生である。彼は晩年、日本人の教え子に「アメリカ人に禅がわかるのでしょうか」と聞かれたときに、「君たちに禅がわかるのかね」と答えたそうである。

つまり、禅は日本人固有のものはなく、人種や国を問わず、やる気があれば誰でも悟れるものだと彼は考えていたのだ。実際のところ、日本人が外国に広めていくだけでなく、外国人が日本に来て修行をし、その経験を広めるケースも近年では増えている。

国や地域が違えば仏教の中身も違う

キリスト教やイスラム教は一神教であり、「お釈迦様は自分たちと同じ人間」だと考える仏教とは異なっている。では仏教の中身は同じかというと、そうではない。仏教が広まった国や地域によって、その考え方も習慣もかなり異なっていることがわかる。

仏教は日本やチベットで主流な大乗仏教と、東南アジアを中心に広まっている上座部仏教の2つに大別される。例えば、中国、ミャンマー、タイなどでは、お坊さんは結婚できない、肉が食べられない、お酒が飲めないなどと厳しいルールが課されている。ただし、坐禅中に寝ていたり掃除が適当であったりするなど、規律は比較的緩い。

一方、日本ではルールはそこまで厳しくないが一挙手一投足にこだわる。また、日本の禅は言葉ではなく実践を重視するが、チベット仏教は実践だけでなく知識面の勉強もしっかり行うという特徴がある。このように、同じ仏教であっても、国や地域によって特徴はさまざまなのである。

マインドフルネスと禅はどう違うか

最近、グーグルやインテルなどの世界的な優良企業でも取り入れられている「マインドフルネス」という瞑想法がある。やり方は坐禅と同じで、静かに座って呼吸に集中するというものだ。

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要約公開日 2017.05.11
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