今後の日本企業は、新しい価値を創出するために、「個人の力」にフォーカスした「21世紀の人材戦略」を知り、「ヒト本位の経営」を実践していくことがこれまで以上に重要となる。
ボーダレス化が進展する21世紀において、企業が利益を出し続けるには「世界最適化」がキーワードとなる。世界最適化とは、世界で最も良質・安価な材料を調達し、世界で最もスキルがあり、コストの安いところで生産し、世界で最も高く売れるマーケットで販売するという仕組みを指す。この仕組みの中で最適解を導くには、柔軟な人材のマネジメントがキーとなる。
そこで、経営者は経営戦略と人材戦略のマッチングを担う必要がある。まずは今後の会社のあるべき姿や自社のコアスキルを考え、その戦略を実現するうえで必要な人材像やスペックを決める。ここを人事部に任せっきりではいけない。ポイントは、社員全員を入れ替えるくらいにゼロベースで考え、自社のスペックに合った人を国内外から発掘していくことだ。
さらには、トップダウンの人事によって、尖った人材に活躍の場を早く与えながら、それ以外の人の妬みを生まないようなシステムを築くことが求められる。
21世紀に求められるのは、世界の市場で戦える「グローバル人材」、0から1の発想ができ、人とは違った行動ができる「イノベーター」、そして自ら方向性を示していける「リーダー(経営者)」の3つである。
企業の中でも、将来のリーダーを発掘するうえでお手本となるのがGEである。GEではCEOのジェフリー・イメルトが200人の将来のリーダー候補生と一対一で食事をし、じっくり話をするという。こうして各人の特徴を、「この人は立て直しに強そう」などと自分の頭のデータベースに蓄積し、最後には5名くらいに候補を絞りこんでいく。この事例から、リーダーの選定にトップが相当な時間を使わなければならないことがわかる。
現在世界のトップ人材を最も多く輩出しているのはインドである。フォーチュン誌が発表する全米上位500社のうち300社以上に、インド人が副社長以上のポストで在職しているという。中でも突出した理系エリート輩出校として知られているのが、インド工科大学(IIT)だ。世界の大手IT企業から高額オファーが学生に殺到し、成績上位層の初任給は2000万円程度にまで及ぶ。
日本企業で唯一そのIITの学生を採用できたのは、シスメックスという神戸の医療機器メーカーである。
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