「年金は福祉である」と思っている人は多いが、年金の本質は「年金保険」という保険である。病気やケガのリスクに備える健康保険や、若くして亡くなってしまうリスクに備える生命保険と比較すると、年金は「長生きするリスク」に備える保険だといえる。早く死んでしまった人の保険料を長生きした人に渡して保障するという仕組みだ。
自分が早死にするか長生きするかを予測するのは不可能であるため、自分たちの出した保険料を分け合って、長生きしたという条件下においてのみお金がもらえるようにしている。この大前提がわかれば、「国が無条件に老後を保障してくれる」「年金は福祉である」という考えが間違いであると理解できるだろう。
年金は保険なので、「掛け金」によって「保障額」が変わる。原則として、「掛け捨て」の部分が大きいほど、保険料を多く納めるほど、保障額が増える。現在の法律では、10年以上保険料を納めていれば年金を受け取れることになっているが、10年しか納めていない人と40年納めた人とでは、当然もらえる金額に差が出る。では、いったいどれくらい年金をもらえるのか。
国民年金と厚生年金のいわゆる「公的年金」では、ざっくりいうと「40年間納めた保険料の総額」と「20年間でもらう年金額」が同じになるように設計されている。つまり、20歳から60歳までの40年間納めた金額を、60歳から80歳までに受け取る仕組みだ。これをもとに考えれば、一年当たりに受け取る年金額は、一年当たりに納めた保険料の二倍になることがわかる。厚生年金の場合、保険料率は月給のおよそ二割程度なので、月給の四割くらいだと考えておけばいい。
ただし、これはあくまで「生涯を通じての平均給与の四割」である。会社員の場合は多くが年功賃金であるので、若いころの給料は安く、退職間際の給料は高くなっていることに注意が必要だ。
日本年金機構から毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」は、国が発行しているレシートのようなものである。会社に天引きされている保険料が、きちんと国に納められているかを確認するのに有効な、れっきとした証明書なのだ。
「消えた年金問題」では、社会保険庁の記録の不備だけでなく、中小零細企業などで、従業員から天引きした保険料を国に納めずに運転資金などに回してしまっているケースが多数明るみに出た。その対策として考案されたのが「ねんきん定期便」であり、納めた保険料と、現時点で将来もらえる年金額を確認できるようになっている。
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