仕事がツライときの感情の整理法

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仕事がツライときの感情の整理法
出版社
出版日
2017年03月22日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

自分や他人の感情とうまく付き合うにはどうしたらいいか。この尽きせぬ悩みへの処方箋となる一冊が本書だ。

部下が自分の意図通りに動かないからといって、感情を露わにして怒る上司。一方で、誤りを指摘されただけで、上司の面前でふてくされる部下。どの会社でも、このような光景は日常茶飯事だろう。論理的な主張をもとに議論するならいいが、湧き上がってきた不平不満をこらえられず、ただ感情を相手にぶつけているだけでは、何の解決にもならない。ビジネスの世界では何よりも成果を出すことが求められる。よって、こうした「負の感情」の赴くままに行動することは成果を上げるうえでは、何としても回避したい。

しかし、著者は「感情をなくせ」といっているのではない。むしろ、感情は上手に使えば、人間のさまざまな進化、進歩の原動力になる。大切なのは、自分の中に芽生える感情との折り合い方、整え方だ。

本書では、感情とは何かという根本のテーマに切り込んだうえで、具体的なシチュエーションに沿って、「感情との折り合いのつけ方」を紹介している。たとえば「機嫌が悪いと当たり散らす上司にお手上げ」「過去の成功体験だけを話す上司が許せない」などといった、21種類の悩みに的確な対処法を示している。累計200万部を超えるベストセラー作家兼、精神科医である著者のアドバイスは説得力もひとしおだ。しっくりくる対処法を実生活に取り入れて、清々しい一日を迎えていただきたい。

ライター画像
名久井梨香

著者

和田 秀樹(わだ ひでき)
1960年大阪生まれ。精神科医。東京大学医学部を卒業後、東大病院精神科助手、米国カール・メニンガー精神医学国際フェローなどを経て、現在国際医療福祉大学大学院教授。和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書に『感情的にならない本』(新講社)『心と向き合う臨床心理学』(朝日新聞出版)『「バカの人」相手に感情的にならない本』(文芸社)『「感情」を整える本』(祥伝社)など多数。映画監督としても活躍。初監督作品『受験のシンデレラ』はモナコ国際映画祭でグランプリ受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    感情とは、人間が本来もっている原始的な感性で、知性や理性を超えたところにある。円満な人間関係を築きたいなら、感情をため込んだり、無理に消したりするのではなく、うまく折り合いをつける必要がある。
  • 要点
    2
    感情には社会を変える力もある。また成功者の多くは、激しい怒りや不平不満を原動力にし、感情のエネルギーを有効に活用している。
  • 要点
    3
    感情が高ぶってしまったときは、「少し待つ」こと、「言葉を選ぶ」ことを意識するとよい。

要約

感情とは何か?

感情とうまく折り合うことが大切

そもそも感情とは何か。感情とは知性や理性を超えたところにあり、知性や理性ではコントロールできないものだ。とはいえ、感情自体は人間が本来もっている原始的な感性であり、決して悪いものではない。

しかし、現代の人たちは、どうしても知性を優先させようとするあまり、感情を抑えて生きている。そのため、心身が不調に陥ったり、あるとき感情が突然爆発して、最悪、暴力事件を引き起こしたりすることもある。こうして人間関係の破たんにつながっていく。

ビジネス、プライベートの場面を問わず、円滑な人間関係を築くには、感情をコントロールすることが必須となる。そのためただ単に感情を抑えて、消してしまったり、すぐに吐き出したりしないで、うまく「折り合う」ことが求められる。まずは湧き上がってきた感情を自分でしっかりと受け止め、受け入れることが必要である。

「かくあるべし」から解放されること
ipopba/iStock/Thinkstock

感情とひと言でいっても、不満、不安、怒りといった「マイナスの感情(不快な感情)」と、うれしさ、快適、幸福といった「プラスの感情(快の感情)」に大別される。マイナスの感情が心を覆っているときは注意が必要である。たとえどんなに論理的に人を説得する能力に長けていても、怒りやパニックという負の感情に支配されれば、初歩的なミスを犯しやすくなってしまう。

マイナスの感情を生む主要な原因として、「かくあるべし」という思考が挙げられる。「上司とはかくあるべし」「妻とはかくあるべし」といった思い込みは多かれ少なかれ、誰もが持っている。しかし、この思い込みが強い人ほど、相手に対して不満がたまり、それにより人間関係がおかしくなり、また自分に対して怒りや失望を覚えるというように、悩み自体がますます増大する傾向にある。「かくあるべし」思考から解放されないと、次第に視野が狭くなり、その結果、自分の想像力を縛ることにもなるのだ。

感情のメカニズム

年齢による感情の出し方の違い
AntonioGuillem/iStock/Thinkstock

脳科学の研究が進み、脳の働きレベルで、若い人と老人の感情の出し方の違いがわかってきた。感情は、大脳辺縁系という場所で生じるのだが、大脳皮質の中にある前頭葉が、感情にブレーキをかける役割を果たしている。

しかし、年齢を重ねると、前頭葉の働きが落ち、感情を抑える力が低下してくる。つまり若い頃は、感情のテンションは高いが、そこにブレーキをかける作用も強い。そのため、誰かにバカにされたりすると、カーッと頭に血が上る度合いは激しいが、それに歯止めをかけやすい。一方で年を取ると、すぐにはカーッとはならないが、いったん怒りが込み上げてくると、それを抑えるのが難しくなり、感情に振り回されてしまうのだ。

カーッとなってしまったときの対処法として、自分なりの感情の「即席コントロール法」を身につけておくとよい。例えば、深呼吸をしてひと息入れてみる、不安になったら好きな歌を口ずさむ、お経を唱えてみるといった方法が効果的である。これらを体得すれば、いざというときに感情に振り回されずに、冷静に対処できるようになる。

【必読ポイント!】 感情をエネルギーに変えるには

フロイトの精神分析学

精神分析学者のフロイトが、1923年に発表した理論では、人間には主に3つの心の領域があるという。1つ目は「自我」といわれる、理性の部分である。脳科学でいうならば、前頭葉の機能を果たす。2つ目は「エス」という感情が湧き出てくる部分である。そして3つ目は無意識のうちに自我を縛る「超自我」である。

フロイトのモデルによると、人間は生まれたときには、エスの塊で自我がなく、感情の赴くままに生きているという。しかし5、6歳になると、自我が芽生えて、エスをコントロールできるようになっていく。つまり、自我によって社会的に調和のとれた生き方が可能になる。

ただし、フロイトはエスを押し殺すのではなく、エスと自我のバランスをとることが非常に重要だと説いている。

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要約公開日 2017.06.03
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