私たちを取り巻く環境がものすごいスピードで変化している現在、私たちは過去に経験したことのない新しい問題に日々直面している。そのような中で生き残っていくためには、正解のない問題に対し常に自分の頭で、最善だと思われる答えを自分で実行することが不可欠となる。それを行う上で肝要となってくるのが、「アジャイル」と「レジリエンス」という考え方だ。アジャイルは、めざすべき目標がはっきりしない状態でもとにかく動いてみる俊敏さを、レジリエンスは逆境にあっても状況を打開するしぶとさを意味する。
誰かが歩んできた道を踏襲するのではなく、めざすべき方向があっているかもわからない中を手さぐりで進んでいかなければならない今という時代。そんな時代に誰もが訓練で身につけることができる強い武器が「考える力」だ。近年では教育界でも考える力の重要性が認識されつつあり、「アクティブ・ラーニング」という学習法の推進という形に結晶している。アクティブ・ラーニング、すなわち能動的学習は、従来の受動的学習と対をなす学習法で、生徒が教室に座って教師の説明を聞くのではなく、調査やディベートなどを通じて生徒が自分で答えを導き出す学習を指す。そして自分の力で答えを導き出す経験を重ねることこそが、これからの正解のない時代を生きる私たちを支える糧となるのだ。
「考える」がどういうことなのかを考える前に、まずは「考え」がいったいどのようなものなのかを見てみよう。筆者は「考え」を『さまざまな要素が結びついてある働き(機能)をする構造を持ったもの』と定義している。例えばあなたが宴会の幹事を任されたとしたら、どのようなことを考えるだろうか。宴会の趣旨や目的、人数、予算、それに合うお店といった要素を検討し、全体として最適な宴会を作り上げるのではなかろうか。さまざまな要素を結び付けてその中でベストな構造として表出されたもの、これが考えである。
「考える」とは「考え」をつくる作業である。したがって考えるときにはまず必要な要素をたくさん出し、次にそれらを意味ある構造にまとめていって、最後にそれらを包含する全体構造を作る作業であると言える。詳しい手順については後述の「思考展開法」で紹介する。
考えのベースになるのは自分の頭の中にあるタネなので、常日頃からタネになる知識やデータをインプットすることが重要である。そして最低限の知識として知っておきたいのが、高校の教科書レベルの知識である。
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