考える力をつける本

未読
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考える力をつける本
出版社
出版日
2016年10月21日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

難関大学を卒業し一流企業や官公庁に勤める、世間一般的に“優秀”な人々。決められた課題をそつなくこなし、事務能力が高く、知識も豊富。しかし彼らの優秀さは一定の条件下でしか発揮されないという。彼らはマニュアルに書かれている想定された事案を扱うことはお手のものだが、新しいアイデアを生み出したり想定外の突発的な事象に対処することは大の苦手である。このレビューを読んでいる方ももしかすると“彼ら”の一員に当てはまるかもしれない。

「パターン認識」を極めてきた彼らに足りないもの、それはずばり「考える力」である。つまり誰にも正確な答えがわからない事象を前にしてどのように動くのか判断し、決断する力である。日本の教育制度では、問題に対して一対一で対応している正解を早く正確に導き出すことが、長らく是とされてきた。しかしそれが通じるのは学生までだ。社会に出れば明確な解のない問題があふれている。

人間の能力には限界があるため、「未曾有の事態」や「想定外の事態」を減らせはしても決してゼロにはできない。それを理解した上で、想定外の事態が起きたときにどのように動くのか。本書は「考える」ということの真価を問いかけながら、考える力をつけるためのHow Toを教えてくれる。人間は考える生き物だ。訓練を積めば誰でも必ず考える力を身につけることができる。本書とともにその一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

ライター画像
和田有紀子

著者

畑村 洋太郎(はたむら ようたろう)
1941年生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業、同大学院修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。畑村創造工学研究所主宰。NPO法人失敗学会理事長。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学。消費者庁・消費者安全調査委員会委員長、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長、科学技術振興機構・プログラムマネージャー育成・活躍推進プログラム研究講師などを務める。著書に『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』『みる わかる 伝える』(以上講談社)、『直観でわかる数学』『技術の創造と設計』(以上岩波書店)、『数に強くなる』(岩波新書)、『畑村式「わかる」技術』『回復力』(以上講談社現代新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    正解が一つに決まっていない問題があふれている現代においては、従来の教育で重視されてきた「パターン認識」だけでは未知の問題に対処することができないので、今こそ「考える力」を身につける必要がある。
  • 要点
    2
    本書における「考える」とは、まわりの状況を自分なりに分析し、全体像を検討しながら、自分の中にある漠然とした思いに実現の道筋をつけることである。
  • 要点
    3
    そして「考える」ためには、最低限の基本的な知識やデータを把握しておく必要があり、一般的には高校の教科書レベルのことをきちんと押さえておくと良い。その上で、本書で紹介する思考展開法を駆使することで、必要なときに必要な考えを自分自身で作ることができる。

要約

「考える」とはどういうことか

なぜ今考える力が必要なのか
gyn9038/iStock/Thinkstock

私たちを取り巻く環境がものすごいスピードで変化している現在、私たちは過去に経験したことのない新しい問題に日々直面している。そのような中で生き残っていくためには、正解のない問題に対し常に自分の頭で、最善だと思われる答えを自分で実行することが不可欠となる。それを行う上で肝要となってくるのが、「アジャイル」と「レジリエンス」という考え方だ。アジャイルは、めざすべき目標がはっきりしない状態でもとにかく動いてみる俊敏さを、レジリエンスは逆境にあっても状況を打開するしぶとさを意味する。

誰かが歩んできた道を踏襲するのではなく、めざすべき方向があっているかもわからない中を手さぐりで進んでいかなければならない今という時代。そんな時代に誰もが訓練で身につけることができる強い武器が「考える力」だ。近年では教育界でも考える力の重要性が認識されつつあり、「アクティブ・ラーニング」という学習法の推進という形に結晶している。アクティブ・ラーニング、すなわち能動的学習は、従来の受動的学習と対をなす学習法で、生徒が教室に座って教師の説明を聞くのではなく、調査やディベートなどを通じて生徒が自分で答えを導き出す学習を指す。そして自分の力で答えを導き出す経験を重ねることこそが、これからの正解のない時代を生きる私たちを支える糧となるのだ。

「考える」とはどういうことか

「考える」がどういうことなのかを考える前に、まずは「考え」がいったいどのようなものなのかを見てみよう。筆者は「考え」を『さまざまな要素が結びついてある働き(機能)をする構造を持ったもの』と定義している。例えばあなたが宴会の幹事を任されたとしたら、どのようなことを考えるだろうか。宴会の趣旨や目的、人数、予算、それに合うお店といった要素を検討し、全体として最適な宴会を作り上げるのではなかろうか。さまざまな要素を結び付けてその中でベストな構造として表出されたもの、これが考えである。

「考える」とは「考え」をつくる作業である。したがって考えるときにはまず必要な要素をたくさん出し、次にそれらを意味ある構造にまとめていって、最後にそれらを包含する全体構造を作る作業であると言える。詳しい手順については後述の「思考展開法」で紹介する。

「考える力」をつける準備

考えるためには基本的知識が必要!
violet-blue/iStock/Thinkstock

考えのベースになるのは自分の頭の中にあるタネなので、常日頃からタネになる知識やデータをインプットすることが重要である。そして最低限の知識として知っておきたいのが、高校の教科書レベルの知識である。

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要約公開日 2017.07.06
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