アスリート、アーティスト、ビジネスパーソン。どの分野においても、特別な才能を持っているのに、思ったように成果を上げていない人がいる。一方で、ストレスやプレッシャーを糧にして、成功する人もいる。両者を分けるものは、超一流のメンタル、つまり「レジリエンス」だ。レジリエンスとは、心が折れそうな体験から立ち直り、以前よりさらに大きな成功や幸せをつかむ力を指している。著者は、レジリエンスを「心のボディアーマー(防護服)」と呼ぶ。
レジリエンスには、5つの核となる要素がある。それは、「能動的な楽観主義」「決断力と行動力」「道徳的な指針」「粘り強さ」「周囲のサポート」だ。
まず、1つ目の要素「能動的な楽観主義」について紹介する。楽観主義は、物事の良い面を見る態度だが、「受動的」「能動的」の2種類がある。前者の人は、物事が良くなることを願うだけで、物事を他人や成り行きに任せている。つまり、自分の力で状況をコントロールできるとは考えていない。これに対し、後者の人は自分の力で状況を改善できると信じており、自ら変化を起こすという強固な決意を抱いている。
著者は、能動的な楽観主義を身につける方法として、成功体験を積み重ねる、すでに成功している人を観察する、周囲のサポートや励ましを活用する、自制心を身につけるという4つの方法を挙げている。これらの方法を実践して、自分を「成功体質」にプログラムしていくことが重要だ。
ポイントは、最初から難しすぎる挑戦をするのではなく、小さな成功体験を確実に積み上げていくことである。自分の手には負えないと感じたら、周囲に助けを求めることや、リハーサルを重ねること、成功する自分をイメージすることも、能動的な楽観主義の土台となってくれるだろう。
レジリエンスの核となる2つ目の要素「決断力と行動力」を高めれば、逆境から立ち直るだけでなく、逆境のなかでも成長できる。
決断力の重要性を示す具体例として、ウィンストン・チャーチルを挙げよう。ヒトラー率いるドイツ軍は1940年、イギリス、フランス、ベルギーの連合軍をフランス北部で孤立させた。この時、イギリス首相だったチャーチルは、フランス北部のダンケルクにいた自国の軍を撤退させる決断をし、その際に負傷兵を最後に撤退させるようにという命令を下した。常識的に考えると、負傷兵を一番先に撤退させるところだが、チャーチルの狙いは、健康で戦える兵士を先に帰還させることにあった。結果として30万人の兵士を帰還させ、別の戦闘に参加させることができた。こうして、大胆な決断により、事態の悪影響を最小限にとどめられたのだ。
アップル創業者のスティーヴ・ジョブズは1985年に自分が設立した会社を解雇された。しかし、これを機に、アップル社がまだ手がけていなかったデジタル映画の分野に進出し、成功を収めた。ジョブズは、あるスピーチの中でこう語る。「成功者という重荷がなくなり、挑戦者という身軽な立場に戻れた。解雇のおかけで、人生でもっとも創造的な時期を迎えることができた」。決断力と行動力こそが、逆境を新しい創造のチャンスに変えるのだ。
著者は、「決断力と行動力」を妨げる7つの壁の一部として、次のようなものを挙げている。失敗が怖くて動けなくなる、人と違うことをしてバカにされるのが怖い、先延ばしの癖があり、行動を起こすまでに時間がかかる、挑戦の大きさに圧倒され、必要な情報とそうでない情報を瞬時に見分けることができない、長期の目標を見失い、代わりにその場だけいい気分にはなれるが、根本の問題を解決しないような行動を優先する、などである。
「失敗が怖くて動けなくなる」という壁について、著者は、「手に入れる価値があるものは、挑戦して失敗する価値もある」というシンプルな言葉を思い出すだけで、打破しやすくなると述べている。
3,400冊以上の要約が楽しめる