まずは新聞の読み方を紹介していく。政治や経済、文化のエリートで新聞を読まない人はいない。新聞が「世の中を知る」ための基本かつ最良のツールであることは、今も昔も変わらない。一面から順にめくっていけば、政治、経済、国際情勢、文化やスポーツを含めた世の中の動き全体を短時間で、ざっと俯瞰できる。この一覧性において新聞に勝るメディアはない。
仮に新聞を読んでいない人でも、ニュースサイトの記事やSNS上の情報をたどっていくと、第一次情報は新聞というケースが非常に多い。ネットの普及により、実際の発行部数以上に多くの人が新聞の情報を目にするようになったのだ。
ただし新聞は、少なくとも2紙以上は読まなければならない。なぜなら、2013年頃からニュースの取り上げ方が新聞ごとに異なり、そこに各紙の意図が表現されるようになったためだ。
たとえば『産経新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』は安倍政権に好意的であり、『朝日新聞』『毎日新聞』『東京新聞』は、安倍政権に対立的な立場をとる傾向にある。よって、複数の新聞を読んでおかなければ、自分が読む新聞のバイアスの影響を受けてしまう。
また、新聞社の本音を知るには、各紙の「社説」と「コラム欄」をチェックするのが手っ取り早い。社説は世論形成や政治・経済政策にも影響を及ぼしているといえる。どの2紙を選べばいいのかについては絶対的な正解はないが、1紙は保守系、もう1紙はリベラル系というように、論調の異なるものを読むのが望ましい。もちろん、一般のビジネスパーソンならば定期購読するのは1紙で十分である。もう1紙は、時間と財布が許す範囲で、駅売りやコンビニなどを活用するとよい。
池上氏の新聞の読み方は、こうだ。まず毎朝、自宅に届く新聞8紙(『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』『朝日小学生新聞』『毎日小学生新聞』『中国新聞』『信濃毎日新聞』)の見出しに目を通す。その日のニュースの全体像を捉えるのが目的である。その後、外出時にもう2紙(『東京新聞』『産経新聞』)を購入し、『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』は電子版で購読している。そして気になった記事は夜寝る前に読み込む。1日にかける時間は朝20分、夜1時間程度だという。
一方、佐藤氏の場合、『東京新聞』『琉球新報』『沖縄タイムス』『ニューヨーク・タイムズ』の4紙は紙で読み、『朝日新聞』『毎日新聞』『産経新聞』『日本経済新聞』『琉球新報』『沖縄タイムス』『聖教新聞』『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』の8紙は、電子版で読んでいる。(『琉球新報』『沖縄タイムス』は紙・電子版両方)延べ2時間以内におさまるよう、ストップウォッチで計りながら読んでいるという。
その中で気になった記事は、電子版もデジタル化したものもEvernoteやDropboxなどのクラウドサービスに保管していく。情報の保管と整理にかける時間と労力は最小にするのが鉄則だ。
また、2人とも、新聞は飛ばし読みが基本である。ニュースを読む力を磨くポイントは、「自分ならこの記事よりこの記事を大きく載せるのに」「この小さな記事は今後、どう展開するんだろう」と考えながら読むことだ。何よりも、継続して読むことが第一である。
佐藤氏は、電子雑誌の定額読み放題サービス「dマガジン」を愛用している。隙間時間にスマホでSNSをチェックしたり、ネットサーフィンをしたりするよりも、きちんと編集・制作された電子版の雑誌を眺めるほうがインプットの効率もいいし、娯楽としても楽しいからだという。
定期購読するほどのコアな趣味ではない雑誌も気軽に読めるのが「dマガジン」の魅力である。それが興味や関心、視野を広げる格好のツールになるからだ。ただし、一部の学術誌や経済紙を除けば、雑誌は基本的に娯楽の読みものとして考えるのが現実に即している。
ビジネスパーソンにチェックしてほしい週刊誌といえば、経済誌・ビジネス誌だ。両氏ともに『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』『週刊エコノミスト』は毎週、目を通しており、池上氏は『日経ビジネス』も読んでいる。
ビジネス誌を読むメリットは、新聞が報じなかった特ダネを出すこと、そして特定の主義主張に固執しておらず書籍よりも情報が早いことである。経済やビジネスの動きの要点を初動でつかめるのに便利だ。とはいえ、雑誌を無理に定期購読する必要はなく、興味がある記事や特集があれば購入するというスタンスでよい。また雑誌の読み方も、新聞同様に「拾い読み」が基本であり、移動時間や隙間時間に読むスタイルでもいい。
ネットの情報は玉石混淆である。誰もが情報発信できるがゆえに、ネット空間は、新聞や雑誌が持つ「編集」と「校閲」という重要な2つの機能が欠如しているためだ。いわば、ノイズ過多であり、うまく使いこなさなければ、時間を浪費する危険性もある。
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