本はどう読むか

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ジャンル
出版社
出版日
1972年11月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は、過去数十年間にわたり人間とつきあうよりも書物とつきあってきた、と語る著者による、実践的な読書術をまとめた1冊である。昭和を代表する知識人の一人が、自己の経験をもとに作り上げた読書の方法は、説得力に満ちている。本の選び方から、本の読み方、そして忘れずに記憶する方法など、すぐにでも取り入れたくなる技術が盛りだくさんである。

要約では残念ながらほとんど触れられなかったが、著者の読書に関するエピソードも豊富に盛り込まれており、読む者を飽きさせない。例えば、大学の教官であった著者のもとに卒業生が訪れたとき、皆口々にこういったという。「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」と。そして、「会社に必要な本は読んでいますが、どうも、それだけでは淋しいような気がするのです」とも。同じ悩みを抱える人は少なくないであろう。そんな時、著者は卒業生に自分がジャーナリストとして働いていた時の経験を話していたという。その内容についてはぜひ本書を読んで確認していただきたいが、そうした、身近な感覚から生まれる読書の問題に、実際的な答えを提案しているところが本書の魅力である。

本書のように奇をてらわないまっとうな方法を提案しつつ、それでいて堅苦しくない読書論は貴重である。刊行から40年以上たった今も読み継がれていることが納得できる名著である。

著者

清水幾太郎(しみず いくたろう)
1907年東京の生まれ。東京帝国大学文学部卒業。社会学者。ジャーナリスト。讀賣新聞社論説委員、二十世紀研究所所長などを経て、学習院大学教授、清水研究室主宰。文学博士。著書に『流言蜚語』『社会的人間論』『社会学講義』『社会心理学』『論文の書き方』『現代思想』『倫理学ノート』『オーギュスト・コント』などがある。1988年歿。

本書の要点

  • 要点
    1
    読書とは第一に面白いと感じるものを読むことである。そして、精神的成長に伴って面白いと思うものは変わる。虚栄心、内的欲求、目指すべき理想に突き動かされて本を手に取るべきである。
  • 要点
    2
    読んだ本の内容を記憶しておきたいのであれば、主観的な感想を、他人が読んでも分かるように書いて残しておくべきである。そうすることで、その本は自分の心に刻み込まれる。
  • 要点
    3
    本は一気に読むことで全体の構造が見えてくる。洋書も、とりあえず買って、わからなくても一気に通して読むことで、慣れることができる。

要約

教養のための読書

著者の読書経験から

小学校時代、著者はまわりの少年たちと同じように、英雄豪傑の物語を集めた「立川文庫」に夢中になっていた。それは、単純に面白かったからである。それから50年が過ぎても、やはり読書というのは面白い本を読むということであって、面白くない本を読む習慣は持っていないという。

立川文庫を読むことは面白い遊びであって、当時の「心の歯車」と深く噛み合ったものだった。どんな高尚な本でも読者の心の歯車と噛み合わなければ面白くないし、面白くない本が人間の成長を助けることはない。大人でも、子供でも、面白くない本は読まない方がよいのだ。そして、面白い本を読むというのは、自分の生活をドラマティックにすることである。哲学の本などでも、それが読者の心の歯車と噛み合いはじめたとたんに、一種のドラマが生まれてくる。

しかし、著者が夢中になって読んだ立川文庫を手放す日がやってきた。自分で決心し、すべてを友達にあげてしまったのだ。飽きたからである。飽きるということはマイナスに評価されがちだが、飽きることは悪いことではないという。人間の精神の成長は、しばしば、飽きるという形で現れる。それは、心の歯車に変化が生じ、これまで面白かったものが面白くなくなるということだ。そうした瞬間は、精神が成長を遂げる瞬間である。しばらくすると、また新しい面白い本が現れてくる。

人を読書へと駆り立てるもの
Ingram Publishing/Thinkstock

著者は、読書の楽しみを知ると、他人には理解できそうもない本を探して読むようになった。虚栄心に駆り立てられ、無理な背伸びをしていたのである。それで得たものは多くないそうだが、著者は虚栄心そのものを否定しない。虚栄心は、自分を実際の自分以上のものに見せようとする傾向であり、人間が現在の自分を乗り越えて行くために欠くことの出来ないものなのだ。虚栄心が人を駆り立て、そこから思わぬ業績が生まれることもある。

また、著者が大きな影響を受けた人物に、社会思想家の大杉栄がいた。大杉は、読書はただその人の個人的思索を進めるために役立てばいいという。研究や思索は、日々の生活で直面するある事実に対する、止むに止まれぬ内的欲求である。自身の内的欲求を、他人の著書、つまり他人の観察と実験と判断によって満足させるのは、他人の思想の奴隷になることである。個人的思索を成就させてこそわれわれは自由な人間になるのだ、というのが大杉の考えなのだ。

教養書とは何か

そもそも、本には3つの種類があると著者はいう。まずは、実用書であり、これはたとえば冠婚葬祭のしきたりに関する本のように、生活の必要を満たす本である。次に娯楽書がある。これは、例えば、エンターテインメント小説のような、生活から連れ出してくれる本である。これら二つについては、読み方は問題とならない。前者は必要があれば読まなければならないし、後者は読みたくなったら読めばいいからである。問題は教養書である。教養書は一言でいえば生活を高める本である。ただし、読むことを強制されず、誘惑されることもない。自分で決意し、努力して読む必要がある本である。ただ生きるため、ただ死ぬためであれば教養書など読む必要はない。立派に生き、立派に死ぬために必要なのである。教養書は、与えられた生命を自分の理想に向かって作り直し、立派に作り上げようとする人たちのためにある。

【必読ポイント!】 本の内容を忘れない工夫

試行錯誤の経験
kirisa99/iStock/Thinkstock

深い感銘を受けながら読んだ本のはずなのに、その内容を忘れてしまったという経験がある人は多いであろう。後の役に立てるために、知識の保存をどうするべきなのか。

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要約公開日 2017.07.20
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