個々の才能を開花させる、つまり、一人ひとりの力を引き出すことで、その組織やチームを、現状よりもはるかに強くすることができる。これは生産性を向上させるうえでも重要な考え方だ。これからは企業間で「才能開花競争」が始まる。労働人口が減ることで、企業は、より少ない人数で大きな成果を出すことをめざさなければならない。すると、本人の可能性を見極め、それが最大限発揮されるような支援や投資を惜しまない会社だけが、永続的に成長できるようになる。
人事の役割は、個々の才能、つまりその人ならではの強みを見つけて伸ばし、活かすことである。具体的には、大きな仕事を任せたり、対話によって背中を押してあげたりするなど、本人が自分の強みを発揮しやすい環境をつくるとよいだろう。
人は「強みの押し付け」をする傾向にある。中でも、過去に成功体験を積んだリーダーは、チームのメンバーに「自分と同じ仕事のやり方で成果を出してほしい」と無意識に感じてしまいがちだ。しかし本来なら、才能は誰しも異なっているため、自分とは違うという前提で、才能の活かし方も変えていかなければならない。
自分の弱みを認めて、それを周囲に伝える。すると、弱みを認める余裕ができ、強みを活かすことに力を注げるようになる。不得意な分野を認めるかわりに、自分ががんばることをきちんと周囲に表明することが大事だ。
弱みを直すことに多くの時間を費やすと、その分、自分の強みを発揮する時間が減ってしまう。仮に「強みを発揮しているチーム」と、「弱みを直しているチーム」があったとしよう。どちらがより永続的に大きな業績をあげられるかというと、前者である。なぜなら、強みを活かしたほうが本人も楽しいし、前向きに仕事に取り組めるからだ。すると、一人ひとりに粘りが出て、成果が上がりやすい。成果を早く確実に出したいのなら、弱みを直すより、強みを伸ばすことに尽きる。
適材適所を実現するには、その仕事をおこなったときに「一番成果を出す人に任せる」とよい。リーダーには、メンバーにそれぞれの強みを発揮してほしいと、期待をかけていることを伝える役割がある。メンバー自身が「私はこれを期待されている」と明確にいえる状態になれば、強みが発揮されやすくなり、チームとしてより大きな成果を出せるにちがいない。
強みを知るうえで有効なのは、自分の大事にしている価値観に向き合うことである。価値観を可視化するために、著者は、面談やチームビルディングの研修などで「価値観ナインブロック」というシートをよく使っている。3×3の9つのマスをノートなどに書き出し、真ん中のマスに自分の名前を入れる。次に、残りの8つのマスに、「これまで大切にしてきた考え」、「家族からよく言われてきたこと」、「自分の信条」を、3分程度で書き出していく。
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