エイビスレンタカーの元CEO、ロバート・タウンゼンドは、鋭いビジネスの嗅覚を持っていた。彼の著書、『組織に活を入れろ』(ダイヤモンド社)は、1970年代にベストセラーになった。
タウンゼンドによると、決定が求められる案件には2種類しかないという。低コストで訂正しやすいために即断できる案件と、高コストで訂正しにくいためによく検討しなければならない案件だ。後者の案件は、適切な情報を入手してから決断することが大切だ。ただし、どんな案件でも手元に完全な情報がそろうことはない。タウンゼンドは、その現実が受け入れられないのならば辞任するしかない、という。
また、すでに使った予算について思い悩まず、今後のキャッシュフローだけを考えることも重要だ。負けたギャンブラーが損失を取り戻そうとするように、使ってしまった予算にとらわれてしまうと判断ミスにつながる。
なぜベトナム戦争は泥沼化したのか、ということを考察して、当時の米国防長官ロバート・マクナマラは、「マクナマラの誤信」という理論を発表した。
アメリカ側が自分たちを優勢だと思い込んでいたのは、捕虜や死亡したべトコンの数などの数値化したデータにばかり注目し、相手の士気や、外国の支配を逃れたいという思いなどの数値化できない要素に注意を払わなかったせいだ、というのがその誤信の理由だ。
数値化できるデータである定量データに対して、数値化できないデータは、定性データと呼ばれる。こちらは、人々の考えや信じていること、物事をどう捉えたかを記録しようとしたものである。
意思決定を担う人たちは、今もこうした、定性データが決定の成否に与える影響を過小評価しがちだ。が、それらの影響を思考から排除することは大きな判断ミスに繋がることもある。案件の性質によっては、意思決定者は定性データの収集方法や利用方法をより具体的に検討するべきであり、定性データに懐疑的な人たちの意見を変えるために積極的に働きかけなければならない。チームから5、6人を選び、お金に換算できないコストと利益をリストアップしてもらったり、従業員や利害関係者と雑談や面談をしたりして定性データを集めることができる。
優れた意思決定者になるには、自身を知ることが不可欠だ。なぜなら、自分の
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