仕事の資料づくり、メールの返信など、やらないといけないことはたくさんあるのに、なかなかやる気が出ない。そんなとき、やる気を出すには「とにかくやり始めること」が肝心だ。たとえば資料作りをしなければならない場合は、まずは資料作成のアプリを開いて、打ち込み始めるべきである。やり始めれば、気分はだんだんノッてくる。
「人は行動してから考える」というのが、心理学や脳科学の領域では常識になりつつある。たとえば、じゃんけんをする際にも「チョキを出そう」と意識するよりも先に、「チョキを出せ」という筋肉への命令が脳から発されている。チョキを出そうとする身体の動きを受けて、初めて心の中で「チョキを出すぞ!」と意識し始めるのだ。
また、脳には一度行動を始めると、その行動にのめり込む性質がある。これは脳の側座核という、やる気を司る部位の「やる気スイッチ」が入るためだ。やる気が出ないときは、まず行動してみること。それが究極のやる気スイッチとなる。
前項の「身体が先で、そのあとに脳は考える」は、感情のコントロールにも応用できる。
腹が立ったり、悲しくなったりと、ネガティブな感情が起きた時には、笑顔をつくるとよい。笑顔は「楽しい」「幸せ」と脳にインプットされているため、笑顔をつくるだけで、幸せな気分を呼び起こすことができる。
この根拠となる実験がある。クラフトとプレスマンという心理学者は、(1)笑顔のようになるくわえ方、(2)口角だけあがるくわえ方、(3)笑顔にならないくわえ方で被験者を分け、箸を口にくわえさせた状態で、被験者にストレスのかかる作業をさせた。すると、心拍数や感じているストレスが最も低かったのは、(1)笑顔のようになるくわえ方をした被験者たちだった。つまり、笑顔をつくれば、それだけでストレスが軽減できるのだ。
日本の街中を見ていると、ほとんどの人はうつむきながら歩いていることがわかる。こうした歩き方をしていると猫背になってしまいがちで、そうなると気分も落ちこんでしまう。
姿勢に関する研究はさまざまあるが、次のような実験がある。ハーバード大学の社会心理学者・カディらの研究チームは、堂々とした姿勢をとらせた被験者と、縮こまった姿勢をとらせた被験者の2つのグループに分け、ギャンブルをさせた。すると、前者の堂々とした姿勢のグループの被験者のほうが、よりリスクの高い賭けに好んで出る結果が出た。
また、被験者の唾液を調べると、堂々とした姿勢の被験者には決断力・積極性・攻撃性・負けず嫌いに関係する「テストステロン」の増加が見られた。さらに、「コルチゾール」というストレスホルモンも低下していた。このことから、背筋をシャンと伸ばして生活すると、気持ちが積極的でポジティブになるということがわかる。
ノリがまったく合わない飲み会、ゴールの見えない渋滞など、人生には「明らかに時間の無駄だな!」と思わされる出来事がある。そんな状況であっても、目の前のことを楽しむためにはどうすればよいか。
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