アメリカで話題となっていたオムニチャネルの波が、少し遅れてようやく日本にもやってきた。オムニチャネルとは「お客様が商品をほしいと思ったときに、いつでもどこでも注文でき、希望する場所で受け取ることができるインフラ」のことだ。そのために、購入方法や受け取り方法、決済方法などが複数用意されている。
オムニチャネルというと、スマートフォンによるEC(電子商取引)を想像する人が多いかもしれないが、あくまでもECはオムニチャネルの一部である。ネット通販に売上を奪われた小売業界が、リアル店舗を持っている強みを活かして、ECを取り込んで進化した姿がオムニチャネルだ。オムニチャネルとは業務の効率化をめざすようなものではなく、消費者が使いこなすものである。
企業は、オムニチャネルを導入することで、さまざまなメリットを享受できる。
まずは、リアル店舗がEC専業に対抗できるという一面がある。EC専業の会社は商品の受け渡し方法として、主に宅配便を利用するが、配送業者とのすれ違いなど、宅配便はときに不便でもある。一方で、リアル店舗は自社店舗を商品受け渡し場所として活用することができる。
2つ目のメリットは、「好きな場所で商品を購入し、受け取れる」ということで、顧客満足度のアップに役立つ点である。
3つ目には、在庫の有効活用が挙げられる。EC受注に店舗の在庫を活用して受け渡しをすれば、EC用の在庫を一部圧縮できる。それに伴い、消費者が物理的に距離の近い店舗を受け渡し場所に指定すれば、配送コストも抑えられる。
さらに、売上げアップも期待できる。オムニチャネルを導入することで、消費者との接点が増え、そのぶんだけ消費者に買い物の機会を提供することになるからだ。消費者がリアル店舗で商品を受け取る場合、「ついで買い」の期待も見込めるだろう。
オムニチャネルは、多店舗展開する企業で導入されるイメージが強いが、実際には1店舗しか展開しない企業や個人経営の店でも導入可能だ。現在の消費者の買い物行動に対応し、消費者との接点を増やすという流通上のイノベーションがオムニチャネルなので、消費者と接点のあるビジネスならば応用して導入する余地がある。
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