AIで仕事を代替することは、仕事の効率化や生産性向上だけでなく、人間がより得意な領域に仕事の軸足を移し、より豊かな人生を送ることを可能にする。
この恩恵を享受するには、テクノロジーについて知ることが大事な一歩となる。AIの急激な進化を支えているのは、ディープラーニングという技術の発展である。ディープラーニングのすごさとは、「機械が目をもった」ことである。例えば、玉ねぎの見た目の特徴を教えなくても、大量の玉ねぎの画像をコンピューターに見せていくと、「こういう特徴がある場合は玉ねぎである可能性が高い」と自動的に認識できるようになってきたのである。この精度を高めるには、学習させるデータの質が最も重要となる。実際のところ、ネット上の膨大な画像データをもとに学習したAIの画像認識精度は、すでに人間を超えているという。
人工知能時代を生きるうえで大事なのは、AIを活用して、どんなサービスを開発していくかを考えることだといえる。具体的には「知る」「使う」「創る」のステップを踏むとよい。
例えば女子高生のAIチャットロボット、LINEの「りんな」を知って終わりになっていないだろうか。まずは「AIと会話をする」という体験を実践するよう、著者は薦めている。この体感こそが、AIに対する漠然とした不安や恐怖を払しょくしてくれる。さらには、AIを使ったサービスなど、新ビジネスの発想が浮かびやすくなるはずだ。
人の仕事がAIに置き換えられていくことは、世の中の潮流としてまず間違いない。今後は「AIが人の仕事を奪う」という言葉だけで思考停止に陥るのではなく、テクノロジーの進化による変化を予測し、働き方や仕事の中身を実際に変えていくことがますます求められる。同時に、AIと協働することで何ができるのかと思いを巡らすことで生まれるワクワク感こそが、今後の働き方の醍醐味となるだろう。
AIに代替されない、人にしかできない価値を考える際、AIが苦手な領域に目を向けてみるとよい。そこで次のようなマトリクスをつくる。横軸の左側には、「論理的・分析的・統計的」を、右側には「感性的・身体的・直観的」をおく。次に縦軸の下には、仕組み化された中で大量に実施する能力「構造的」を、その対極には、問いを立てて仕組み化を行う能力「非構造的」をおく。こうしてできた4つの区分のうち、AIが得意とするのは左下の領域である。コンピューターは「疲れない」「飽きない」ため、高速かつ大量に同じことをくり返してくれる。
一方、AIが苦手な残り3つの領域こそ、人間の本領発揮である。
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