本書は、日々の仕事に追われ、部下育成が後回しになっているマネジャーに向けて、効果の高い部下育成法である「フィードバック」の技術を一から説明した本である。
フィードバックとは端的に言うと、「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」である。
本書の特徴は、部下育成やフィードバックの学問的な理論だけでなく、現場のマネジャーからヒアリングを通して抽出した実践的な知見が、バランスよくまとめられている点である。
日本のマネジャーが疲労している原因は「部下育成」にある。
とはいえ、若い部下が育たないのは、かならずしも上司のせいではない。部下が成長しないのは、職場環境の変化によるところも大きいからである。
高度経済成長期では、部下が育つ3つの条件、「長期雇用」「年功序列」「タイト(密接)な職場関係」が揃っていた。しかし、現代の職場でそれらの要素が衰退しているのは明らかだ。
さらに、今や雇用市場の流動化が進んだことで、年上が部下になるケースも日常的になりつつあり、外国人の社員を雇いいれる企業も増えてきた。こうした部下の多様化も重なり、部下育成はより困難となっているのである。
効果的なフィードバックをするためには、できるだけ具体的に相手の問題行動を指摘することが求められる。その際、重要なのは「SBI情報」を準備しておくことである。
SBIとは、シチュエーション、ビヘイビア、インパクトの頭文字をとったものだ。どのような状況で(シチュエーション)、どんな振る舞い(ビヘイビア)が、周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか(インパクト)、この3点を具体的に伝えることで、はじめて部下は上司の言いたいことを理解してくれるのである。
SBI情報を収集するうえでは朝の声かけなど、職場の回遊が効果的である。1回1回の時間は短くてもかまわない。むしろ頻繁におこなうことのほうが大切だ。
ここからは実際のフィードバックに焦点を当てる。
フィードバック面談のオープニングでは、まず部下の「心理的安全」や「信頼感」を確保することが求められる。情報が漏れず、他の社員の目に触れない場所を選ぼう。
また、セッションの「目的」を最初に伝えること、「一緒に改善策を考えよう」という姿勢を見せることも重要だ。相手に対してリスペクトをもって接し、信頼感の確保に努めるのである。
フィードバックが始まったら、収集した相手のSBI情報を提示していく。
3,400冊以上の要約が楽しめる