新規事業を生む道のりは簡単ではない。にもかかわらず、そもそも「何を目的にするのか」すら明確でないケースが、新規事業を検討する際には少なくない。
どういう方向性にするのかを最初に明確にしておかないと、途中でハシゴを外されてしまうこともありうる。大事なのは、起案を求めている経営陣と具体的なアイデアを検討する起案者の目線を合わせることだ。そのためにはまず経営陣の意思を知り、そのうえで起案者は自らの意思を固めるべきである。
経営陣と意思のすり合わせをおこなううえでは、(1)フェアウェイ、(2)OBゾーン、(3)制約条件の3点がポイントとなる。
(1)フェアウェイとは、何を検討すべきか具体的に決められる範囲を指す。これが明確であればあるほど、検討のスピードは上がる。フェアウェイはできるだけ広くとっておきたいところだが、あまり広いと検討に時間がかかるので注意したい。
(2)OBゾーンはアウト・オブ・バウンズ(境界の外)ゾーンの略だ。どの会社でも、「これは考えない」「そこまではやらない」という領域がある。ひとつひとつ確認しながら、どこにOBゾーンが設定されているのかを見定めよう。
最後に(3)制約条件についての検討をおこなう。どの企業でも投資できる枠にはかぎりがある。法律が制約になることもあるし、人材やブランドイメージが制約になることもあるだろう。リスクをいとわなければ、乗りこえられない壁はそうそうない。しかし、制約条件についてはあらかじめ明確にしておくほうが無難である。
何をめざし、どういう範囲で検討するかを決めたら、次は新規事業のテーマを決める段階に進む。ただこの時、いきなり具体的な事業案の検討を始めてはならない。検討の幅を少しずつ絞りこんでいき、徐々に検討範囲を狭めていくべきだ。まさに急がば回れ、である。
おすすめは、検討の起点を既存事業に置くことだ。もちろん、既存事業とまったく関係のない事業を検討することもあるが、その場合も既存事業と対比しながら起案するほうが好ましい。
以下、本書で紹介されている8つの新規事業開発の検討フレームのなかから、その一部を取り上げる。
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