柳澤 大輔(やなさわ だいすけ)氏は大学時代の友人2人とともにカヤックを立ち上げた。大学在学時から起業の約束をしていたというが、実際に起業したのは、大学卒業後数年が経ってからだ。三者三様の道に進んで、そこで得た経験を持ち寄る方が面白いものをつくれると思ったからだという。
カヤックの「面白法人」という言葉の狙いは何か。柳澤氏によると、言葉は会社の風土や社員の意識をつくるため、社員一人ひとりが面白法人という名称に応えていこうとするのではないかという期待が込められているという。また、カヤックでは、会社が大事にしたい風土を醸成していくために、代表取締役の1人がCBO(Chief Branding Officer)という役職を担っている。社内コミュニケーションを盛り上げて、チームワークを良くするという仕事である。こうした点からも、カヤックがいかに面白い組織をつくることに力を入れているかがわかるだろう。
「つくる人を増やす」というのがカヤックの経営理念だ。創業者の3人は会社をやりたいと思って経営しているため、もちろん面白さを感じているが、社員は必ずしもそうとはかぎらない。だからこそ、社員が面白さを感じるには、一人ひとりがどれだけ会社に主体的に参画できるかが重要になってくる。社員の主体性を促すために、あらゆる情報をオープンにし、提案もいつでも歓迎している。
これにくわえて、カヤックの社員全員が夢を持って行動できている秘訣は、「つくる脳」をトレーニングで身につけていることだという。つくる脳とは、「自分がつくっているのだから」と、自分を動かしていける脳を指す。カヤックではブレインストーミングを徹底的に行うことで、批判ではなく対案を生み出せるような「つくる脳」を鍛えていく。会社で起こった問題に対して、どうやったらよくなるか、自分ならどのように解決するか。こうした点を、当事者意識を持って常に考える中で、自分のやりたいことが見つかっていくのだ。
カヤックの社員が「楽しく働く」を体現できている背景には、「サイコロ給」や「スマイル給」といったユニークな評価方法がある。サイコロ給は、電子のサイコロを振り、出た目に応じて報酬の一部を決める評価方法である。このスタイルを始めたきっかけは、起業をした際にお金のことでもめないようにするための工夫として、人の力が及ばないサイコロを取り入れたことだという。
サイコロ給を取り入れて数年後、柳澤氏はサイコロ給が別の意味合いを持つことに気がついた。完全に運任せのサイコロを使うことは、「人の評価を気にしすぎているとおもしろく働けない」、「おもしろく働くことを重視している会社」という社内外へのメッセージにもなる。それが結果的に会社の文化をつくることになる。また、これまで失敗した事業をホームページに掲載し、失敗しても挑戦したことを評価するのも、カヤックのユニークな特徴である。
このようなさまざまな工夫が、社員が毎日行きたくなるようなおもしろく楽しい会社を支えていると言えるだろう。
「グリーンファン」という名の扇風機をご存知だろうか。シンプルで洗練されたデザインとこだわり抜かれた機能で有名なバルミューダの代表的な製品である。バルミューダ製品は見た目がシンプルなこともあり、外国のメーカーだと思われがちだが、現代表取締役社長の寺尾 玄(てらお げん)氏がゼロから立ち上げた正真正銘の日本企業である。しかも、バルミューダを創業するまでものづくり経験はゼロだという。
寺尾氏は異色の経歴の持ち主である。
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