現代は、Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧さの頭文字をとったVUCAの時代である。イギリスのEU離脱やアメリカでのトランプ大統領の誕生。そしてテクノロジーの目覚ましい進化と、産業の垣根の崩壊、ICTによるビジネスモデルの変革。企業を取り巻く環境の変化は加速度を増すばかりである。このような時代において、企業や組織は生き残りをかけて日々「変化すること」が求められている。
JMAが実施した調査によると、日本企業の新規事業開発・イノベーションに関わる取り組みには、まだまだ伸びしろがあることが分かる。しかし、ある企業が自前のみでイノベーションを起こすことは、時間的にも難しい。そこで、自前の経営資源の限界を打ち破る戦略を構築し、スピーディーに高付加価値を創出する手段が求められている。それが、企業内部と外部のアイデアを融合させて新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」という考え方だ。オープンイノベーションとは、企業が他社や大学、地方自治体などと連携し、革新的なビジネスを生み出していくという方法論である。
オープンイノベーションを創出している組織には、次の5つの特徴がある。それは、「何のためにやるのか」を重視する「目的志向」、同僚を進んで支援する「協働」、風通しのよさを大事にする「自由闊達」、会議で本音や異論が活発に出てくる「実質主義」、主体的に行動する「自律と責任感」である。
イノベーションの源泉として最も重要なのは人材である。しかし、内閣府の調査によると、「仕事のやりがい」への満足度が長期的に低下傾向にあるという。根本的な人材に対する考え方や人事制度、働き方の見直しが急務だといえる。
VUCAの時代においては、計画に基づいたマネジメントは機能しない。なぜなら、刻一刻と状況が変わる中で、計画を立てているうちに様々な前提が変化してしまうからだ。つまり、PDCAサイクルが機能不全になりつつあるといえる。
そこで、PDCAサイクルのかわりに注目されているのがOODAという意思決定理論である。これは、Observe:観察・感知、Orient:情勢判断、Decide:意思決定、Act:行動から成る意思決定プロセスのことだ。
企業経営において、環境の変化や予想外の事柄に迅速に対応するには、観察・感知と情勢判断により、変化をしっかりと把握したうえで意思決定をし、アクションを起こす必要がある。また、社員一人ひとりが自律的に行動し、組織も外部の情報を積極的に収集して、常に新しいことにチャレンジする姿勢が欠かせない。これらの実現をめざすのがKAIKAプロジェクトである。
KAIKAとは、日本企業の課題を解決するためにJMAが提唱している「新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想」である。KAIKA経営の基本的概念は、個人のダイナミズム、組織のダイナミズム、組織の広がり(社会性)という3つの要素を同時に満たすことである。これが、価値を創造し続ける企業に欠かせない条件だと考えている。
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