KAIKAする経営

次世代型経営モデルのススメ
未読
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KAIKAする経営
出版社
出版日
2017年04月17日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

1942年に経営革新の推進機関として創立され、75年の歴史を刻んできた一般社団法人 日本能率協会(以下JMA)。現代社会の多様性に迅速に対応し、すべての人がそれぞれの多様な力を発揮できる社会にしたい。そんな思いから、新しい時代の経営の考え方として、「KAIKA経営」を提唱している。

KAIKAとは、新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想であり、「個の成長」「組織の活性化」「組織の社会性」の3つを同時に実現することをめざす経営モデルだ。刻一刻と変化する社会情勢の中で、自社の利益だけを追求しても企業の存続は難しい。個人の能力を開花させ、自社だけでなく社会全体にも利益をもたらすことが最良の道となる。

では、どのように個人の能力を開花させていくのか? その開花させた能力をどうやって社会への貢献に関連づけていくのか? こうしたことを、三越伊勢丹、日産自動車、リバネスといった多数の事例から学べるのが本書の魅力だ。また、「個人のダイナミズム」「組織のダイナミズム」「組織の広がり(社会性)」という観点から、企業がどのようにKAIKA経営に取り組むべきかが明らかにされていく。

経営者やリーダーが持つべきマインドやマネジメントスキルについても真摯な教えがふんだんに盛り込まれており、読者の胸を打つ。経営者やマネジメントに関わる方、働き方について見つめ直したい方にぜひお読みいただきたい。

ライター画像
渡辺智美

著者

一般社団法人日本能率協会(Japan Management Association)
1942(昭和17) 年に設立された、日本の企業等の経営上の課題解決の支援を行う一般社団法人。主な事業内容は、「マネジメントに関する調査及び研究」「マネジメントに関する情報の収集及び提供」「マネジメントに関する人材の育成及び指導」「マネジメントの高度化に寄与する表彰、資格認定及び普及啓発活動」「マネジメント及びマネジメントに関連する技術及び産業振興に関する会議、展示会等の開催」「規格適合に拠るマネジメントシステム及び製品、サービスに係わる第三者認証及び登録業務サービスの提供」「地球温暖化防止にかかわる各種検証及び環境マネジメント支援業務サービスの提供」「マネジメントに関する内外関係機関等との交流及び協力」など。
・「JMA」公式ホームページ http://www.jma.or.jp/index.php
・「KAIKAプロジェクト」公式サイト http://kaikaproject.net/

本書の要点

  • 要点
    1
    KAIKA経営とは、「新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想」である。個人のダイナミズム、組織のダイナミズム、組織の広がり(社会性)の3要素を同時に満たすことで、価値を創造し続ける企業に仲間入りできる。
  • 要点
    2
    経営者は、長期的な時間軸と一つ上の視点(メタ視点)で物事を捉えることが求められる。今後は、やり方を根本から変える思考と全体最適を追求する「脱PDCA」のアプローチも重要となる。

要約

日本企業の経営課題~KAIKA経営が求められる背景~

VUCAの時代に求められるオープンイノベーション

現代は、Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧さの頭文字をとったVUCAの時代である。イギリスのEU離脱やアメリカでのトランプ大統領の誕生。そしてテクノロジーの目覚ましい進化と、産業の垣根の崩壊、ICTによるビジネスモデルの変革。企業を取り巻く環境の変化は加速度を増すばかりである。このような時代において、企業や組織は生き残りをかけて日々「変化すること」が求められている。

JMAが実施した調査によると、日本企業の新規事業開発・イノベーションに関わる取り組みには、まだまだ伸びしろがあることが分かる。しかし、ある企業が自前のみでイノベーションを起こすことは、時間的にも難しい。そこで、自前の経営資源の限界を打ち破る戦略を構築し、スピーディーに高付加価値を創出する手段が求められている。それが、企業内部と外部のアイデアを融合させて新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」という考え方だ。オープンイノベーションとは、企業が他社や大学、地方自治体などと連携し、革新的なビジネスを生み出していくという方法論である。

競争力の源泉となる「人材」の課題
Peshkova/iStock/Thinkstock

オープンイノベーションを創出している組織には、次の5つの特徴がある。それは、「何のためにやるのか」を重視する「目的志向」、同僚を進んで支援する「協働」、風通しのよさを大事にする「自由闊達」、会議で本音や異論が活発に出てくる「実質主義」、主体的に行動する「自律と責任感」である。

イノベーションの源泉として最も重要なのは人材である。しかし、内閣府の調査によると、「仕事のやりがい」への満足度が長期的に低下傾向にあるという。根本的な人材に対する考え方や人事制度、働き方の見直しが急務だといえる。

PDCAからOODAへ

VUCAの時代においては、計画に基づいたマネジメントは機能しない。なぜなら、刻一刻と状況が変わる中で、計画を立てているうちに様々な前提が変化してしまうからだ。つまり、PDCAサイクルが機能不全になりつつあるといえる。

そこで、PDCAサイクルのかわりに注目されているのがOODAという意思決定理論である。これは、Observe:観察・感知、Orient:情勢判断、Decide:意思決定、Act:行動から成る意思決定プロセスのことだ。

企業経営において、環境の変化や予想外の事柄に迅速に対応するには、観察・感知と情勢判断により、変化をしっかりと把握したうえで意思決定をし、アクションを起こす必要がある。また、社員一人ひとりが自律的に行動し、組織も外部の情報を積極的に収集して、常に新しいことにチャレンジする姿勢が欠かせない。これらの実現をめざすのがKAIKAプロジェクトである。

【必読ポイント!】 KAIKA経営とは何か

KAIKA経営の基本的概念
BrianAJackson/iStock/Thinkstock

KAIKAとは、日本企業の課題を解決するためにJMAが提唱している「新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想」である。KAIKA経営の基本的概念は、個人のダイナミズム、組織のダイナミズム、組織の広がり(社会性)という3つの要素を同時に満たすことである。これが、価値を創造し続ける企業に欠かせない条件だと考えている。

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要約公開日 2017.12.07
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