ビジネスのグローバル化にどう対応すればいいのか。仕事の舞台が「世界」に広がることは、今まで出会ったことがないタイプの人と関わるようになるということだ。そこではダイバーシティ・マインドが欠かせない。
これまで世界各国の人々はこの課題をある程度克服してきた。しかし、日本人の多くはその流れについていけず、世界に通用する働き方から取り残されてしまっている。そこには大きく3つの問題がある。
1つ目の問題は、「インサイド・アウト」でのものの見方から脱することができないことだ。インサイド・アウトとは、「自分たちの内側」で通用しているものの考え方に、「自分たちの外側」に存在する物事を合わせようとすることだ。この考え方では、自分たちのやり方が当然正しいと思い込み、それと違うやり方に出くわすと、「どうしてこちらに合わせないんだ」と怒ることになる。世界に通用するためには、自分たちのやり方を、他のやり方に合わせていく「アウトサイド・イン」の見方が必要となる。
2つ目は、「ロスト・イン・トランスレーション」の問題だ。日本人は他の国の言葉や概念を、日本での物事に完全に置き換えようとする傾向がある。無理に日本のものに「翻訳」しようとすると、必ず失われるものが出てくる。よって、他の国のものを丸ごと、そのまま受け入れる姿勢が重要だ。
そして3つ目は、日本人特有とは限らないものの、「アンコンシャス・バイアス」を持ってしまうという問題である。これは無意識の偏見という意味で、「自分とは違う」と感じているものを、受け入れまいとして働く無意識の心理だ。例えば特定の国の人や、障がいを持っている人などに対して、こうした心理が働くことがある。
日本は長く、ほぼ単一の民族から成る国家として存在し、「自分たちと違う人たち」が極端に少ない環境に置かれていた。そのため、世界の様々な人が共存する環境で、どう行動すればいいのかがわからないままになっている。また、日本人には、戦後のどん底の状況から這い上がったという「栄光」がある。この「栄光」に対するプライドが、日本人に「自分たちのやり方は正しい」と信じ込ませる要因になっている。
日本人が世界を舞台に、世界中の人々と仕事をするためには、こうした問題を克服して、グローバル・マインドを身につけなければならない。
グローバル・マインドとは、世界中のどんな職場環境においても、どんな相手や顧客に対しても持っておくべき心構えのことだ。グローバル・マインドには、「ポジティブであること」「メンタルヘルスを保つこと」などの要素がある。中でも「アンコンシャス・バイアスを取り除くこと」は極めて重要だ。
アンコンシャス・バイアスは誰にでもある。大切なのは、自分自身で「実は部下を平等に扱っていない」といったアンコンシャス・バイアスの存在に気づき、それを認めることだ。その上で、「ではどうするか」を考えなければならない。
世界で活躍する人材は、アンコンシャス・バイアスを取り除くための訓練を受けている。私生活では気の合わない人と話さなくても支障はないが、仕事においてはそうした振る舞いが会社の損失につながる場合もある。まずは「自分が平等ではない」ということに気づくことから始まる。
グローバル・マインドを構成する要素として、もう1つ重要なのが、「ダイバーシティ・マインド」を持つことだ。ダイバーシティ・マインドとは、ダイバーシティ、つまり多様性を理解したり寛容性を持っていたりする心のことを指す。
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