すぐに結果を求めない生き方

ほんとうの幸せは目に見えない
未読
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ほんとうの幸せは目に見えない
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すぐに結果を求めない生き方
出版社
出版日
2017年08月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

売上や利益だけを追求する経営者。出世や成功にばかり目が行き、すぐに目に見える結果を求める人々。そして、「自分さえよければいい」という考えから、「全体の幸福」より「個人の幸福」を優先する風潮。その勢いはとどまることを知らない。では果たして、本当に幸福な人は増えているのだろうか。蓋を開けると、痛ましい事件や企業の不祥事が絶えず、むしろ私たちは幸せから遠ざかっているかのようだ。こうした現状の背景には、日本に根づいていた「恥の文化」や他人との助け合いを大事にする「衆の文化」の消失があるという。日本人の美意識を取り戻し、一人ひとりが生き方を変えれば、真の幸福を得ることができる。

著者は、厳しい逆境に負けず会社を立ち上げ、たった一人で始めた掃除の活動を世界まで広げてきた。本書では、80余年の人生の中で得てきた人生の真理と生き方の指針が、あたたかく、力強い言葉によって綴られている。

「自分一人でも、人間らしさが高まる行動をとっていれば、社会は良い方向へと進んでいくはず」。こうした思いを、ただ一途に行動に変えてきた著者の言葉は、読者の心に深く染みわたっていく。

著者の生き様をたどると、ドラッカーが組織のリーダーやマネジメントに求めた「integrity(真摯さ)」とは何か、というテーマに思いを馳せずにはいられない。経営者はもちろん、あらゆるビジネスパーソンにとって、生き方を考えるうえでの必読書といえる。「高邁な精神をもって逆境や試練に打ち勝とう」と、本書が背中を押してくれることだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

鍵山 秀三郎(かぎやま ひでさぶろう)
昭和8年、東京生まれ。昭和27年、岐阜県立東濃高校卒業。昭和28年、デトロイト商会入社。昭和36年、ローヤルを創業し、社長に就任。平成9年、社名をイエローハットに変更。平成10年、同社取締役相談役。平成20年、取締役辞任。創業以来続けている「掃除」に多くの人が共鳴し、その活動はNPO法人「日本を美しくする会」として全国規模となるほか、海外にも輪が広がっている。
主な著書に『凡事徹底』『人生をひらく100の金言』(以上、致知出版社)、『凛とした日本人の生き方』(モラロジー研究所)、『鍵山秀三郎「一日一話」』『掃除道』『ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる』『人間を磨く言葉』『困ったことばかりでも、何かひとつはよいことがある。』『写真で学ぶ「掃除道」』『マンガでわかる! 鍵山秀三郎「掃除道」』『人生の作法』『仕事の作法』『ムダな努力はない』『やっておいてよかった』『困難にも感謝する』、日めくりカレンダー『凡事徹底』『良樹細根』(以上、PHP研究所)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者は職場環境をきれいにすれば、社員の荒んだ心を癒せると思い、たった一人で掃除を始めた。会社を変えたいなら、本気の心構えをもち、行動に移すことが肝要だ。
  • 要点
    2
    孤立を恐れず、人に流されずに正しさを貫くには、自分の目標をブレさせないことが重要となる。
  • 要点
    3
    モラル低下を食い止め、持続可能な未来を創造するには、日本人が大事にしてきた「恥の文化」と「衆の文化」の意義を思い起こす必要がある。

要約

逆境こそ成長の糧と考える

逆境は神が与えた恩寵である
piyaset/iStock/Thinkstock

著者は幼いころは甘えん坊で、学校の授業に身が入らず落ちこぼれだった。しかし、戦争が始まり、11歳のときに東京から山梨へと疎開して、生活が一変した。その後は父方の実家に身を寄せることになったが、あてがわれたのは牛小屋のような廃屋だった。荒れた田畑での自給自足生活は困難を極めた。両親はただ家族のために身を粉にして働いていた。

あるとき、重いつるはしをふるって必死に開墾している母親の姿を見て、著者の体中に激しい戦慄と恐怖が駆け巡った。「私が代わってあげないと、母が死んでしまう!」それ以来著者は、自堕落な自分がどこかへ消えてしまい、進んで両親の農作業を手伝うようになったという。農繁期には学校を休んで長時間労働に勤しみ、それが忍耐力を高めてくれた。

「逆境は神が与えた恩寵である」。これは、日本の教育界・実業界に多大な影響を与えた教育学者、森信三氏が残した言葉である。先述した厳しい経験がなければ、著者は事業を立ち上げることも、掃除で日本を美しくする活動を始めることもなかったと述懐する。

なぜ高待遇を捨てて独立の道を選んだか

著者は高校を卒業後、中学校の代用教員、浅草の洋食屋での住み込みの仕事を経て、自動車用品を販売する会社に入社した。戦争で壊れたジープやトラックなどを落札して運び出し、税関を通すといった仕事だ。1日18時間労働が当たり前。手続き資料の作成や詰め込み作業など、心身ともに疲弊する日々。しかし、自分の能力を上回る難しい仕事に取り組む中で、自信が生まれていった。入社して6年後、27歳のときには、著者は専務取締役として給料も破格の待遇を得るようになっていた。

しかし、著者は翌年仕事を辞めた。社長による会社の私物化、お客様をないがしろにした商売のやり方に心を痛めていたからだ。いくら提言しても変わらないのならと、著者は身一つで独立し、自動車用品の卸販売の会社を始めた。待っていたのは想像以上に厳しい日々だった。既存の取引先は、辞めた会社の社長による圧力のせいで、品物を売ってくれない。重い荷物を自転車に積み、新たに一軒一軒売り歩いた。人間扱いされないこともザラにあった。

そんな中で著者は、「今売れている商品だけがヒット商品ではない」と学んだ。当初どのお店も相手にしていなかった、ハンドルのリングカバーを片っ端から売り続けているうちに、それが爆発的ヒットとなったのだ。「小さなことをおろそかにしない」「平凡なことを非凡に努める」。こうした信条が著者の体に染みついていった。

【必読ポイント!】 正しい生き方を貫く

掃除を続けて30年
ByoungJoo/iStock/Thinkstock

著者の会社に入社してきたのは、紆余曲折を経た社員たちばかり。彼らの心は取引先からの無理難題により、ますます荒んでいく一方だった。良い会社にするにはどうしたらいいのか。

悩んだ末に著者が一人で始めたのが掃除だった。職場環境だけでもきれいにすれば、社員の荒んだ心を癒し、殺伐とした空気を変えられるのではないかと思い至ったのである。

掃除を初めて10年間は、理解者は一人としていなかった。社員に掃除の大切さが伝わらない日々が続き、心が折れそうになったときも一度や二度ではなかった。

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要約公開日 2017.12.22
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