カツカレーは、日本のカレーを世界に広める潜在力を秘めている。それは、「ゴーゴーカレー」のニューヨーク進出のようすからもうかがい知ることができる。
「ゴーゴーカレー」は、日本国内では70店舗以上も展開するカレーチェーン店である。ライスの上にカレーソースとトンカツが乗り、カツにはトンカツ用のソースがかけられ、脇には千切りキャベツが添えられた「金沢カレー」を提供している。その「ゴーゴーカレー」は、2007年にタイムズスクエアへ出店し、2017年現在、マンハッタンに6店舗を展開している。アメリカでも混雑するほどの人気ぶりで、ニューヨーク1号店は月商300万円からスタートし、10年間右肩上がりの成長を続けているという。今では月商1000万円を売る店に成長しているそうだ。
実は、日本のフードチェーン店において、マンハッタンで大きな成功をおさめている企業は意外にも少ない。たとえば「牛角」と「大戸屋」は各3店舗、ラーメンブームを巻き起こした「一風堂」さえも店舗数は増えていない。マンハッタンで展開する日本のフードチェーン店では、「ゴーゴーカレー」の6店舗が最大の店舗数となる。
ただ、「ジャパニーズカレー」の知名度はまだまだのようだ。まだ、ニューヨークでは「カレー」というと、インドカレーかタイカレーを想起する人が多く、「ゴーゴーカレー」は、ジャパニーズカレーというよりもカツカレーの店として認識されているという。また一部のアメリカ人には、ゴーゴーカレーはニューヨーク発祥のカレーと思われているという。
「カレーの総合商社」を目指すゴーゴーカレーは、アメリカで1000軒、いずれは5大陸55か国に展開するという未来を目標にしている。
ちなみに、「世界で最も大きいカレーレストランのチェーン店」としてギネス世界記録に認定されているのは「カレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)」である。2017年2月現在、ココイチの店舗数は1457店。国内が1296店で、そのほかは海外だ。
これまでココイチは中国、台湾、韓国、タイなどに出店してきたが、2017年内にはイギリスのロンドンに出店することを発表している。イギリス出店は、じつはインド出店のための布石のようである。浜島社長は、カレーのルーツであるインドにココイチを出店したいという希望を持っているが、いきなりインドに出店するのはハードルが高い。そこで、インドからイギリスを経由して日本に伝わったというカレーのルーツを逆にたどって、まずはイギリス出店を目指すということになったそうである。
そもそも、日本にカレーがやってきたのは明治維新(1868年以降)のころといわれている。文明開化が起こり、舶来のものには憧れがあった。その中にブリティッシュカレーがあったのだ。
カレーは、インドから日本に直接伝わったのではなく、イギリスから「洋食メニュー」や「海軍メニュー」として日本に伝わってきた。ブリティッシュカレーの特徴は、カレー粉を使う点だ。カレー粉とは複数種類のスパイスをブレンドしたもので、イギリス人が発明したといわれている。インド人のように単体のスパイスを自由自在に組み合わせる技術がなかったため、あらかじめ混ぜておけば簡単という発想である。
一方で、日本に本格的なインドカレーが登場したのは1920年代である。つまり少なくとも約60年間は「インドカレーは知らないが、カレーは知っている」という状態が続いたことになる。そして、そのあいだにも、ジャパニーズカレーは独自の進化を遂げていったのである。
日本で初めて外食カレーが提供されたのは、記録として残っているものをたどれば、1877年、フランス料理を看板に掲げた東京の「風月堂」による。もりそばが1枚1銭だった時代に、カレーライスはその8倍の値段がした。仮にもりそばが300円だとしたら、カレー一皿が2400円もすることになる。このように、当時のカレーは高級料理であり、ハイカラ品であった。
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