バリュー・イノベーションという考え方がある。ビジネスの経営戦略における考え方だが、サービスの受け手が価値を感じることにだけに力を入れ、他は手を抜く、というものだ。サービスする側がよかれと思ってやっていても、結果が伴わないならば、それは時間と労力のムダになってしまうのである。家事にもこの考え方が応用できる。かける手間と、それによって手に入る生活の質のバランスを考え、結果につながらない不要な手間は減らして、必要なことだけするのだ。
現代人のワークライフバランスを考えたとき、家事も仕事もしなければならない女性のバランスは極めて悪い。家事も育児も担わねばならない多くの女性は、フルタイムの仕事をやりたがらない。あるいは、フルタイムの仕事に就いた場合はなかなか子供を持てない、ということになる。そのことが日本では女性の社会進出を妨げ、少子化を招いている。働く女性のワークライフバランスを考えることは、社会的な課題なのだ。
世の中では「家事に手をかけるのが正しい」という考え方が根強くある。しかし、家事の負担を軽くすることで女性は外で働いて収入を得ることができるし、家族だんらんの時間も増える。料理や掃除など、家事のやり方はこの数十年でほとんど進化していないが、撤廃できる前時代的な習慣や、道具を使って効率化できることがたくさんあるのだ。
「超ロジカル家事」に欠かせないのが、「最新家電を導入して家事をAI化すること」と「『不便』『めんどう』を放置しない」という考え方だ。
最新家電にお金をかけることは消費ではなく、分のいい投資である。家電に投資したぶんは、外部労働で簡単に回収できる。たとえば5万円の食洗機を買ったとしても、月1万円稼げば半年かからずに元がとれるのである。また、こうした機械で代替できる単純労働は、人間がどんなにやったとしてもそれほど上達するスキルではない。むしろ、大切な時間は別のやりがいある仕事や家族との時間にあて、単純作業は時短家電に任せるほうがよい。
著者は複数の調理家電を使い分けているが、それらのおかげで簡単においしい料理ができるという。料理のあいだほったらかしにできるし、最適な加熱温度に設定できるために仕上がりはおいしく、1食3品の献立を20分で仕上げることもできる。これだけ簡単にできれば、作り置きをするまでもなく毎食調理できるので、毎日できたてのおかずを食べることができる。機械だからおいしくないという考えは、今の時代では頭が硬いと言われかねない。今や、かける手間とおいしさは比例しない時代なのだ。
「不便だな」「めんどうだな」と感じたときは、それをそのままにせず、解決する方法や道具を探すという行動に結びつけると、家事は楽になっていく。大抵多くの人が同じことを感じているので、少し探すとその解決方法を発明している人が見つかることが多い。
例えばグリルの掃除が「めんどう」ならば、その解決方法を探してみる。実はグリルの上に置いて使うミニトレイが低価格で販売されているのだ。これがあればグリル全体を洗う必要はなく、トレイだけを洗えばいい。結果としてグリルの使用回数が増えてお惣菜代が減れば、家計面からも健康面からもプラスである。
このように、常に不便なこと、めんどうなことにアンテナを張っていると、家事の不要な手間を減らしていくことができる。
料理は家事の中でも最も負担が大きいもののひとつである。しかも食べないわけにはいかないので、必ず行わなければならない。この「料理」が楽になれば、家事の負担はかなり減る。
料理の手間を減らすためにまず欠かせないのは、前述のような調理家電の使用だ。複数台の調理家電を使用することで、一度に2、3品作ることができる。その効率をかなえるための著者ならではのやり方をいくつか紹介しよう。
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