現代では、ほとんどの人が肩こりや慢性的な疲労に悩まされている。しかし、肩こりに対して間違った認識を持っているために、治る可能性がありながら、なかなかよくならずに苦しんでいる人がたくさんいる。
肩こりは、マッサージをしても治らない。肩こりや慢性的な疲労には、実は共通の原因がある。それは、首の姿勢の悪さである。
首姿勢の悪さは、首まわりのこりや痛みだけでなく、身体のあらゆる不調を引き起こす。腰痛、慢性的な頭痛、目の奥の痛み、歯の痛み、歯ぎしり、あごの痛み、猫背、いびき、めまいや立ちくらみ、疲れ、指先に力が入らない、プチうつのような症状、などなど。これらの症状も、首姿勢の悪さからきている可能性が高い。
たとえば、首姿勢と腰痛の関連を考えてみよう。背骨を通して首と腰はつながっている。人の身体は、地球の重力に対してまっすぐ引っ張られるように、絶えずバランスをとろうとしている。だから、首が前に出ると腰や胸を後ろに曲げてバランスをとろうとするし、首が左へ曲がると腰が右へ傾いてバランスをとろうとする。こうして首姿勢の悪さは、腰をはじめとした他の部位に影響するわけだ。
頭痛の原因も首姿勢の悪さであることが多い。たとえば、頸性頭痛は、よく片頭痛と誤解されやすい。片頭痛とは血管性頭痛のことであり、血管が広がって周囲の神経が刺激されて起こる症状のことだが、実は頭痛全体の10〜20%程度と割合が少ないのだ。もし、お風呂に入って楽になるのであれば、それは片頭痛ではなく、首姿勢が原因の頸性頭痛である可能性が高い。頸性頭痛は、首から頭につながっている神経が圧迫されて起こる頭痛のことで、頭痛の70〜80%を占めている。神経が圧迫されているのだから、首と胸を起こすことで姿勢が改善されれば、痛みを防ぐことができる。
さらに、頸性頭痛と同様に、首から頭につながる神経が圧迫されることで、目の痛み、歯の痛み、あごの痛みなどが出ることもある。首姿勢が痛みの「見えない原因」になっていることは、じつは多いのだ。
このように、首姿勢が悪いと、神経が圧迫されて身体のさまざまな部分に痛みが出る。
そもそも、なぜ首姿勢が悪くなってしまうのだろうか。代表的な原因として考えられるのは、パソコンを使ったデスクワークだ。パソコンと向かい合うと、どうしても前かがみの姿勢になってしまうためである。また、手先だけを動かして長時間労働をするため、悪い姿勢のまま動かないという状態が続く。結果として、首姿勢が悪くなってしまうのだ。
首の姿勢が悪いと、首まわりの筋肉が緊張し、筋肉に入り込んでいる神経が圧迫されて痛みを感じるようになる。筋肉に負荷がかかり続けると、局所に炎症が起こる。一度炎症が起きると、慢性的な違和感や筋肉の緊張が残ってしまう。それが慢性のこりへとつながる。
加えて、首の骨の中には頸神経と呼ばれる、脊髄神経から枝分かれした神経の束が通っていて、それらは身体のさまざまな場所をつかさどっている。首のこりによって、この頸神経が圧迫されると、首以外の場所に痛みが出ることになるのだ。
以上のようなメカニズムで、首は身体の不調に大きくかかわっている。
では、なぜ首姿勢を変えると健康になれるのか。それは、首が脳を支えていることに関係している。
成人の場合、頭の重さは4〜6キロもある。前に7センチ倒してお辞儀した場合、その負荷はなんと約20キロにもなる。首にはこれだけの負荷がかかっているのだ。そして、頭の中にある脳は、人間の身体で非常に重要な役割を果たしている。身体への命令はすべて脳から行われる。脳を支えているのが首なのだから、その位置が悪ければ、身体のいたるところに支障をきたすというわけだ。
身体のカギを握る「首姿勢」だが、対症療法では首こりは治らない。
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