レポートの組み立て方

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レポートの組み立て方
出版社
出版日
1994年02月07日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
5.0
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おすすめポイント

いよいよ新年度を迎え、晴れて新入社員としてスタートを切る読者もいるだろう。会社勤めでとにかく多いのはレポート作成の機会だ。調査報告や研究報告、出張報告。年次を重ねれば業績報告など、種類も多岐にわたる。論理的かつ的確で、わかりやすいレポートが書けるかどうかで、上司や同僚からの印象は大きく変わるといっても過言ではない。

しかし、レポートの組み立て方を体系的に学んだ読者はどれくらいいるだろうか。また、もっと効率よく、洗練されたレポートの構成を組み立てられないか、と日々、試行錯誤している若手社会人もいるだろう。「情報を正確に伝え、意見を理路整然と述べるためにはどうしたらいいか」。こうした課題に向き合ううえで非常に参考になる一冊が、本書『レポートの組み立て方』だ。

著者は高名な物理学者であり、理科系研究者に向けた『理科系の作文技術』で話題を呼んだ人物である。本書では、一般社会人、文科系学生に向けて、豊富な具体例をもとに、レポートの組み立て方、書き方を解説していく。「学生向けの例か」と侮ることなかれ。むしろ、社会人向けのレポート作成・文章の書き方の類書よりも、ずっと奥深く、本質的な内容が詰まっている。版を重ね、読み継がれてきた本には、その理由があるとわかるだろう。

本書を読めば、書き方が変わる。正しい方法論を実践に活かせば、生産性もまちがいなく上がるはずだ。新入社員の必読書として、絶好のスタートを切るために本書をおすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

木下 是雄(きのした これお)
1917-2014年。東京大学理学部物理学科卒業。学習院大学理学部教授、学長を経て同大学名誉教授。専攻は物理学。専門研究のかたわら、ロゲルギスト同人の一員として『物理学の散歩道』(岩波書店)、『新物理の散歩道』(中央公論社、のちちくま学芸文庫)を著す。また、若い研究者・技術者のための『理科系の作文技術』(中公新書)は、専門領域をこえて多くの読者に迎えられた。その他主な著書に『物質の世界』(培風館)、『スキーの科学』(中公新書)、『物理・山・ことば』(新樹社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    書き手の意見を書く際には、事実と意見をはっきり区別して書き、意見の当否を検討できるように、意見の根拠を明示することが肝要だ。
  • 要点
    2
    レポート作成で著者がすすめるのは、簡潔に目標規定文を書くことである。
  • 要点
    3
    著者は「概要・序論・本論・論議-型」の構成を推奨する。
  • 要点
    4
    レポートでは、真っ先に一番大事なポイント(要点)を書く、「重点先行」が必須となる。

要約

レポートの役割と前提

レポートとは何か
Jacob Ammentorp Lund/iStock/Thinkstock

本書でのレポートとは、研究・調査などの報告書、そして学生が提出する研究結果の小論文を指す。いずれも特定の読み手に向けて書かれる。これが、不特定多数の読者を予想して書く論文との違いである。

レポートを書くうえでの基本的な心得は2点ある。まずは、レポートには、調査・研究の結果わかった事実を、客観的に筋道を立てて書くことである。次に、書き手の意見を書く際には、事実と意見をはっきり区別して書き、意見の当否を検討できるように、意見の根拠を明示することだ。レポートの使命とは、レポート作成者が得た情報と、それに関する作成者の意見とを、読み手に伝達することといえる。

とりわけ社会人のレポートは、調査報告や研究報告、出張報告など、実に多彩である。その多くは、済んだことの記録であると同時に、明日の仕事のための有用な資料であることが求められる。忙しい上司が手っ取り早く結論をつかめるよう、レポートの形式や表現の工夫も必要だ。

事実と意見の区別

レポートや論文を書く際に大事なのは、事実と意見を別物として扱うことだ。ここでの事実の記述とは、自然に起こる事象や人間の関与する事件の中でも、テストや調査によって真偽を客観的に判定できるものだと定義される。一方、意見は事実に対比するものであり、幅広い概念である。具体的には、ある前提に基づく推理の結論である「推論」や、物事のあり方、内容、価値などを見極めてまとめた考えである「判断」、仮に打ち出した考えである「仮説」などを含む。

レポートの根幹は事実の記述でなければならない。事実の裏打ちがあってはじめて意見は説得力をもつ。

【必読ポイント!】 ペンを執る前に――レポート作成の手順

レポートの主題を決める

ここからは、文科系学生が研究レポートを作成するときの手順とポイントを解説していく。この手順は、社会人の書くさまざまなレポートにも通じるものである。

レポートの中で、ある話題について「このような結論、主張を示そう」と決めたものを「主題」と呼ぶ。では、主題を決める際にどのような手順を踏めばいいのか。

まずは問題点を探すとこから始めよう。新聞や雑誌、本屋の書棚などから大ざっぱな予備知識を得ておく。その後、課題に対してどんなことが問題点になりそうかを、思いつくままに書き並べてみるとよい。大型のカードに書き上げると便利だ。

次に、書き出したいくつかの問題点をまとめたもの、またはそれらに共通した問題点から、レポートの話題を選ぶ。このとき、その話題が自分にとって魅力的か、それについて意見が述べられるか、ある程度の予備知識があるか、レポートが指定された長さにおさまりそうか、といった点を吟味するとよい。

そしてレポートの主題を構想する。この段階ではあくまで仮の主題でよいので、主題を決めてから資料調査にとりかかることが肝要だ。「~について論じる」と決めてすぐ書き始めるのではなく、「こういう結論にもっていきたい」という見通しをもつことで、その後の研究を効果的に進められる。

目標規定文で目標意識を明確にする
bee32/iStock/Thinkstock

レポート作成の重要な手順として著者がすすめるのは、その主題を最も簡潔な文にすることだ。何を目標としてこのレポートを書くのか、そこで自分は何を主張するのか。これを目標規定文(主題文)という。

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要約公開日 2018.04.13
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