本書でのレポートとは、研究・調査などの報告書、そして学生が提出する研究結果の小論文を指す。いずれも特定の読み手に向けて書かれる。これが、不特定多数の読者を予想して書く論文との違いである。
レポートを書くうえでの基本的な心得は2点ある。まずは、レポートには、調査・研究の結果わかった事実を、客観的に筋道を立てて書くことである。次に、書き手の意見を書く際には、事実と意見をはっきり区別して書き、意見の当否を検討できるように、意見の根拠を明示することだ。レポートの使命とは、レポート作成者が得た情報と、それに関する作成者の意見とを、読み手に伝達することといえる。
とりわけ社会人のレポートは、調査報告や研究報告、出張報告など、実に多彩である。その多くは、済んだことの記録であると同時に、明日の仕事のための有用な資料であることが求められる。忙しい上司が手っ取り早く結論をつかめるよう、レポートの形式や表現の工夫も必要だ。
レポートや論文を書く際に大事なのは、事実と意見を別物として扱うことだ。ここでの事実の記述とは、自然に起こる事象や人間の関与する事件の中でも、テストや調査によって真偽を客観的に判定できるものだと定義される。一方、意見は事実に対比するものであり、幅広い概念である。具体的には、ある前提に基づく推理の結論である「推論」や、物事のあり方、内容、価値などを見極めてまとめた考えである「判断」、仮に打ち出した考えである「仮説」などを含む。
レポートの根幹は事実の記述でなければならない。事実の裏打ちがあってはじめて意見は説得力をもつ。
ここからは、文科系学生が研究レポートを作成するときの手順とポイントを解説していく。この手順は、社会人の書くさまざまなレポートにも通じるものである。
レポートの中で、ある話題について「このような結論、主張を示そう」と決めたものを「主題」と呼ぶ。では、主題を決める際にどのような手順を踏めばいいのか。
まずは問題点を探すとこから始めよう。新聞や雑誌、本屋の書棚などから大ざっぱな予備知識を得ておく。その後、課題に対してどんなことが問題点になりそうかを、思いつくままに書き並べてみるとよい。大型のカードに書き上げると便利だ。
次に、書き出したいくつかの問題点をまとめたもの、またはそれらに共通した問題点から、レポートの話題を選ぶ。このとき、その話題が自分にとって魅力的か、それについて意見が述べられるか、ある程度の予備知識があるか、レポートが指定された長さにおさまりそうか、といった点を吟味するとよい。
そしてレポートの主題を構想する。この段階ではあくまで仮の主題でよいので、主題を決めてから資料調査にとりかかることが肝要だ。「~について論じる」と決めてすぐ書き始めるのではなく、「こういう結論にもっていきたい」という見通しをもつことで、その後の研究を効果的に進められる。
レポート作成の重要な手順として著者がすすめるのは、その主題を最も簡潔な文にすることだ。何を目標としてこのレポートを書くのか、そこで自分は何を主張するのか。これを目標規定文(主題文)という。
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