なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか

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なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか
出版社
プチ・レトル

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出版日
2017年12月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

アマゾンの企業理念は「地球上で最も豊富な品揃え」そして、「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」だ。この理念を実現するために、アマゾンは様々な施策を行っている。その姿勢が、如実に表れているのが投資額の大きさである。アマゾンは、売上を順調に拡大しているものの、利益は非常に小さくなっている。これは、物流とテクノロジーへの投資が大きいためだと著者は述べる。

倉庫の管理、機械設備の導入、優れた人財の配置。日本の企業がほとんど投資することがない物流部門にこそ、アマゾンは莫大な投資を行ってきた。その額は年間2兆円にも及ぶ。アマゾンが物流に大きく投資する理由は、物流の改善によって顧客満足度も生産性も高められると確信しているからだ。それは利益の増加につながり、未来への投資になるのだ。

ここ数年、アマゾンに関する書籍や雑誌の特集が数多く出ているが、そのほとんどは表面的な紹介にとどまっていると著者は述べる。本書では、アマゾンの内部を知る著者の観点から、アマゾンの物流戦略を中心に経営理念や企業文化を紐解いていく。日本企業の経営者や物流責任者、アマゾンと関係する企業のビジネスパーソン、そしてアマゾンの一般利用者の誰もが、アマゾンという会社の実態を理解できるような構成になっている。経営・物流戦略について数多くのヒントを得られることはまちがいない。

ライター画像
池田明季哉

著者

林部 健二(はやしべ けんじ)
米系ラグジュアリーブランドにてMDを経験後、2001年アマゾンジャパン立ち上げへ参画。サプライチェーン部門、テクニカルサポート部門責任者を歴任し、立ち上げからの約10年間アマゾンジャパンの成長に貢献する。その後、大日本印刷、ドコモが出資するオンラインベンチャー企業及び大手ワイン会社にてEC部門を統括。2014年株式会社 鶴を設立。欧米企業のEC事業管理手法をベースに、数々の企業にて日本のオンラインマーケットにあったEC事業運営を構築、コンサルティングを行う。
株式会社 鶴:http://kbtru.com

本書の要点

  • 要点
    1
    アマゾンはインターネットの普及とともに、通販を通じて流通イノベーションを起こせると直感し、ネット通販に巨額の投資を行ってきた。
  • 要点
    2
    物流戦略の肝は、販売と物流を一体化させ、情報連携をスムーズにしている点や、物流に巨額の投資を行っている点だ。
  • 要点
    3
    日本企業がアマゾンに対抗するには、長期視点で、人材教育、オペレーション改善、システム投資の3つを行うことが重要となる。

要約

アマゾンが引き起こした激変

通販の常識を変えたインターネット

通販という形態は、アマゾン登場以前から存在し、数多くの通販事業者がいた。しかし、アマゾンは通販の常識を大きく変えたという意味で、特別な存在と見なされている。現在ではネット通販が主流だが、昭和の時代から長い間、カタログ通販やテレビ通販といった形で通販事業は浸透していた。1990年代半ば以降、日本国内に急速にインターネットが普及したことで、日本の通販事業の形態は大きく変化していった。

具体的に変化したのは、無数の商品を取り扱えるようになったという点だ。放送時間や紙面の制限がないため、販売見込み数の少ない「ニッチな商品」も販売可能になった。つまり、「ロングテール」を上手く活用できるようになったというわけだ。また、配達のスピードが劇的に速まったことも、ネットがもたらした変化といえる。

アメリカでアマゾンのサービスがはじまったのは1995年である。創業者のジェフ・ベゾスは、インターネット通販を通じて流通イノベーションを起こせると直感し、ネット通販に巨額の投資をした。そしてアマゾンは実際にさまざまなイノベーションを起こすことで、配達のスピード、決済方法、商品の取り扱い数、検索方法など、それまでの通販の課題を次々に解決していった。

競争を強いられる日本の大手配送業者
shironosov/iStock/Thinkstock

アマゾンといえば、「速く届く」というイメージが当たり前になって久しい。日本においてこのスピードを支えているのは、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などの配送業者である。

宅配便を代表する大手三社の中で、圧倒的な強さを誇るのがヤマト運輸だ。現在、アマゾンで注文した商品のほとんどは、ヤマトによって届けられている。ヤマトの強みはサービス力の強さにある。時間指定やクール便などのサービスをいち早く展開し、サービスの品質を保ってきた。

アマゾンの戦略は、取引先の、他社に対して優位性を築こうとする企業努力を利用して、アマゾンにとって有利な取引条件を引き出し、高い品質を担保するというものだ。もちろん、ヤマト、佐川、日本郵便の三社も競争を強いられた。

アマゾンとの取引で発注の優先順位が落ちることは、数百億円の売上が左右されることを意味する。そのため、配送業者は価格やサービスの要求に対応し続けたが、次第に採算が取れず疲弊していくことになる。結果的に佐川はこの競争から降り、ヤマトも配送料の値上げを訴えるようになった。アマゾンはヤマトの値上げを渋々受け入れつつも、小規模な会社と手を結ぶことによって、配送を分散させ始めている。

【必読ポイント!】 アマゾンの物流戦略

アマゾンはなぜ物流にこだわるのか
cybrain/iStock/Thinkstock

一般的な小売業、例えば百貨店や服飾品では、リアルな店舗が顧客との接点になる。そして、店舗での接客の質により、顧客満足度は大きく左右される。それに対し、アマゾンのような通販事業の場合、顧客との接点は、ウェブサイトと、商品を顧客の手元に届けるところの2点のみである。接客という手段がとれない状況で、リアルの店舗に匹敵するサービスをどうすれば提供できるのか。

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要約公開日 2018.04.11
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