カルビーお客様相談室

クレーム客をファンに変える仕組み
未読
カルビーお客様相談室
カルビーお客様相談室
クレーム客をファンに変える仕組み
未読
カルビーお客様相談室
出版社
日本実業出版社

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出版日
2017年10月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

企業のなかの「お客様相談室」というと、どんなイメージを思い描くだろうか。顧客絡みのトラブルやクレームに対して、限られたベテランの担当者が、関係部署の迷惑にならないように対応する。一般的にはそんなイメージかもしれない。

だが本書を読むと、そうしたイメージが「思いこみ」であることに気づかされる。スナック菓子企業最大手のカルビーは、寄せられたクレームをいかに前向きな動きに変え、企業ブランドの強化や商品力の充実に結びつけてきたのか。本書はその取り組みの記録だ。

言葉遣いを変えるだけでも印象が変わることにまず驚かされる。カルビーでは顧客からのクレームを「ご指摘」、そのご指摘に対する仕事やアクションを「処理」ではなく「対応」と呼んでいる。こうした言葉遣いからは、寄せられた苦情や問題を真摯にとらえ、会社を変えていこうという覚悟が伺える。

普通は規模が大きく有名な企業ほど、なかなかこうした発想をとりにくいものだ。組織が硬直化しているのに加え、高いプライドが邪魔になるからだろう。だがカルビーはそれを現実にやり抜いた。

お客様の口に入る食品を扱っている会社だから、という面もあるかもしれない。だが真の顧客サービスに業種は関係ないはずだ。カルビーの顧客に向き合う姿勢は、他の企業においても大いに参考となるだろう。

ライター画像
毬谷実宏

著者

カルビーお客様相談室
1995年、広報室内に創設。その後、その優先課題に対応しながらCRMグループ、営業本部、総合企画本部と所属が変遷してきた。2014年、新設の「コーポレート・コミュニケーション本部」内に組織され、お客様とのダイレクトコミュニケーションを司る部署として現在に至る。「地域お客様相談室」は2000年に全国7支店に設置。本社マネジメントではなく支店長直下の組織として、本社と連携し「より丁寧で漏れのないお客様対応」の実現を目指している。

本書の要点

  • 要点
    1
    お客様相談室は単なる「クレーム処理」の部署ではない。カルビーではお客様に心から満足してもらえる対応を徹底して考え、それを実現する仕組みづくりに注力している。
  • 要点
    2
    社内の関連部署にお客様の声を届けるのも、お客様相談室の重要な役目だ。そこから新たな製品開発につながるケースもある。
  • 要点
    3
    どれだけ信頼を積み重ねても、たったひとつの誤りが、それまでのブランドを台無しにしてしまう。だからこそお客様対応のプロフェッショナル人材を育成することに、カルビーは心血を注いでいる。

要約

お客様相談室に求められる役割

ブランドや商品力の強化に結びつける
amanaimagesRF/iStock/Thinkstock

カルビーに寄せられるお客様の声は年間3万件以上にのぼる。購入した商品の不具合から新商品開発の要望まで、その内容は実にさまざまだ。だがカルビーはどんなお客様に対しても誠心誠意、丁寧な対応をするようにしている。それがお客様の立場に立つということだと考えているからだ。

カルビーではお客様からの「クレーム」を「ご指摘」、ご指摘に対しておこなう仕事を「処理」ではなく「対応」と呼んでいる。クレームという言葉は「苦情」に近いニュアンスがあり、対決姿勢やケンカ腰であるかのような響きがある。だがカルビーは、どんな内容でもお客様から届いた声は「ご指摘」であり、貴重な意見として「対応する」ということを徹底している。

このような対応をするようになったのには、過去の不祥事の影響がある。カルビーは2000年~2001年と2012年に起きた商品回収で、経済的損失だけでなくお客様の信頼や信用も失った。このときの経験をもとに、企業活動はお客様に支えられていることをあらためて認識。お客様相談室の体制を再構築しはじめた。

お客様相談室の使命

カルビーお客様相談室の使命は大きくわけて2つある。ひとつは商品に不具合を感じたお客様への丁寧な対応だ。商品を購入したお客さまの問い合わせや疑問に対し、親切丁寧な回答をするよう心がけている。もうひとつはお客様の声をカルビー社内の関連部署へ伝達することだ。お客様の声に対する「分析→検証→伝達」というサイクルを、相談室が窓口となることで、全社に共有する。

スポーツ競技の戦術に攻守があるように、お客様相談室の戦略にも「攻め」と「守り」がある。お客様に満足いただける対応を「守りの対応」とするならば、関連部署に伝達することは「攻め」の対応にあたる。守りの対応で重要なのは、お客様のご指摘に対して誠心誠意おわびをしたうえで調査し、その結果や再発防止策を回答することである。一方の攻めの対応においては、お客様の声を社内へしっかり伝達することが肝要だ。ここを徹底的にやることで、お客様の期待に応えるアクションが具現化するのである。

年間に寄せられる3万件以上の声のうち、クレームや苦情などは全体の約3割だ。残りの約7割は、カルビーに対する意見や要望である。ある商品に対して「少し酸っぱく感じる」という意見をいただいたので味を微調整したところ、そうしたご指摘はなくなり、「まさか本当に変えてくれるとは思っていませんでした」といった声も寄せられた。また塩分を50%カットした新製品も、お客様の声から生まれたものである。

苦情は期待の表れ
tadamichi/iStock/Thinkstock

カルビーに対してご指摘されたお客様の再購入率をアンケート調査したところ、「今までとかわらずカルビーの商品を買う」「いままで以上にカルビーの商品を買う」と答えたお客様が95%以上いるという結果が出た。ご指摘をくださった約8割のお客様が週1回以上、カルビーの商品を購入してくださっていたのだ。

こうした数字は、カルビーのお客様対応に対するひとつの評価だと考えていいだろう。ただしご指摘の多くが、お客様のネガティブな感情からスタートしていることを忘れてはいけない。ご指摘のひとつひとつに対して真摯な対応をし、信頼を得てファンを増やしていく。それが結果として、安定した経営につながっていくのである。

マニュアルに頼らぬ仕組みづくり

お客様の真意を知る

お客様相談室では「お客様の気持ちに寄り添ったコミュニケーション」をめざしている。だから細かい「ご指摘対応マニュアル」は用意されていない。より正確にいえば、マニュアル対応ではお客様の満足は得られないと考えている。

ではどうすれば本当の意味で満足してもらえるのか。

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要約公開日 2018.05.11
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