日本はいま大きなパラダイム転換を迎えている。バブル崩壊以降に続いていた景気低迷と人余りの時代が終わり、急激な人口減少と人不足の時代に入った。今後の人口動態を考えると、かつての人余りの時代に戻ることはなく、むしろ人不足は年を追うごとに深刻になっていくだろう。
生産年齢人口は毎年50万人以上減少しつづけており、2032年の生産年齢人口は6700万人まで減ることが予想される。これは現在よりも1000万人少なく、生産年齢人口ピーク時の1995年から比べると、じつに2000万人減少する計算だ。このような社会に対応するためには、人財に対する考え方を根本から変え、働き方改革を進めていく必要がある。
人口が大幅に減っている日本にとって、働き方改革とは「人財獲得競争」と「生産性改革」にほかならない。人財がやって来たくなるような魅力ある企業風土をつくり、世界的にも低いといわれている労働生産性を改善していくべきだ。
日本国内の事業所の数は554万、全従業者数は約5743万人といわれている。単純計算すると554万人のリーダーが、平均10人の部下を見ているという状況だ。経営リーダーの多くは経営の苦しさ、そして自分の能力の限界に悩んでいるだろう。
そうした問題を一人で抱え込まずに解決する手段として、「良い会社サーベイ」が発足した。対象企業の全社員に対するアンケート調査を実施し、その結果をもとに現在の問題をあぶり出し、解決案を考案。日本企業の経営リーダーを正しく導くというプロジェクトである。
この調査をもとに導き出されたのが、「良い会社」づくりのポイントというべき7つのキーワードだ。それは「社員の幸せが大切にされている」、「経営理念が実践されている」、「協力企業やお客様を大切にしている」、「理念採用をし、人材育成に力を入れている」、「話し合う風土がある」、「社内に一体感がある」、「納得性の高い人事評価がなされている」である。
良い会社は社員の幸せを大切にする。しかもそこには「社員の家族の幸せ」も含まれている。社員は自分自身の幸せだけでなく、家族の幸せが大切にされていると感じると、高いモチベーションで仕事に向き合うようになり、顧客のことをより大切に扱うという。
その理由のひとつは「返報性の法則」と呼ばれるものだ。人は誰かから何かを与えられると、本能的にそれを返したいと思う。これは誰もが抱く強い感情で、恩師への感謝や親孝行もここに含まれる。それと同様に、会社から大切にされていると感じる社員は、自分もその会社を大切にしようと考えるのだ。
そのような社員が多くいる会社の顧客満足度はかならず向上する。なぜなら顧客のために努力を惜しまないことが、自分を大切にしてくれた会社への最大のお返しとなると理解しているからである。
顧客満足度が上がれば、リピーターが増える。リピーターが増えれば口コミで話題になり、新規の顧客が参入する。そして業績が大幅に上がる。こうした良い流れの根本にあるのはいつも、社員の幸せがあることを忘れてはならない。
高い業績と社員満足度を実現している良い会社は、例外なくしっかりとした経営理念をもち、それを実践している。しかも良い会社の経営理念には、自社の成長や利益を追い求めるだけではなく、社員が誇りに感じるような高い社会貢献性が織りこまれていることが多い。
3,400冊以上の要約が楽しめる