全米は、泣かない。

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全米は、泣かない。
出版社
出版日
2018年03月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

映画のコピーとしてありふれた表現である「全米が、泣いた」。もちろん私たちは、そのコピーを額面通りに受け取ることはない。しかし、本書はそれをあえて「全米は、泣かない。」と言葉にすることによって、コピーライティングの難しさ、そしておもしろさを表現している。秀逸なタイトルだ。

本書はお笑いトリオ「グランジ」のメンバーである五明拓弥氏が、業界をけん引するトップコピーライターやCMクリエイターにインタビューする形式で進められる。登場するのは、一度は耳にしたことのあるコピーや誰もが知っているCMを手がけている、超大物ばかりだ。

あの有名なコピーはどのように生まれたのか。あのCMはどうやって作られたのか。各人の広告に対する考え方や、アイディアの出し方、さらには業界の裏話なども随所に盛り込まれており、読者を飽きさせることがない。さらに、インタビューの最後には、クリエイターたちから著者へ、CMの企画立案やコピー作りなどの「課題」が課される。著者がその課題に挑戦した結果とともに、クリエイターたちによる講評が掲載されている。プロの添削から、テーマに対する目の付けどころ、思考の道筋などをうかがい知ることができ、非常に興味深い。

コピーライティングやCM制作を仕事にしたい人だけでなく、言葉に関心がある人にとっては、手に取るべき一冊であるといえる。

ライター画像
池田明季哉

著者

五明 拓弥(ごめい たくや)
1981年千葉県出身。2000年に東京NSCに6期生として入学。2005年に遠山大輔、佐藤大と共に、お笑いトリオ「グランジ」を結成。東京ガスのラジオCMを機に広告制作に携わるようになり、同作で2016年度TCC新人賞を受賞。受賞歴に第45回フジサンケイグループ広告大賞・メディア部門ラジオ最優秀賞、第11回ニッポン放送CMグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSなどがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    過去の作品は、発想の材料となる。本業とは違う世界の作品もインプットしておくとよい。
  • 要点
    2
    アイディアは、思い浮かぶものではない。考えるものだ。
  • 要点
    3
    広告の価値は受け手が決める。作り手の意見を押し通すべきではない。
  • 要点
    4
    3人に1人が「あるある」と思うくらいが、コピーとしてちょうどいい。
  • 要点
    5
    自分にとっての「当たり前」が強みになることもある。
  • 要点
    6
    人々の心の中にある思いを言い当てることで、共感を得られる。

要約

澤本嘉光氏(CMプランナー)

コピーを書き写してリズムを覚える
urfinguss/iStock/Thinkstock

CMプランナーの澤本嘉光氏は、電通に入社して1年目の頃、優れた広告をまとめた『コピー年鑑』を読み、気に入ったコピーを20字×20字の原稿用紙に書き写していた。すると、どれくらいの長さで句読点が入るのかが感覚的に分かってくる。上手いコピーのリズムを、身体で覚えることができるのだ。

このとき、1行の「キャッチコピー」だけでなく、商品やブランドなどの説明文としての役割を果たす、やや文字数の多い「ボディコピー」も書き写していた。その中には、モノを伝えるときの文章の基本のようなものが詰まっているからだ。

いろんな作品をアーカイブする

過去の作品を知っていることも重要だ。そうしてアーカイブした知識は、新しいものをつくるとき、発想の材料になる。アイディアは、今あるものを組み合わせたり、コラージュしたりすることによって作られる。また、アーカイブを頭の中に持っておくことで、「あのCMのような感じで」と他の人に説明したり、それをベースに議論したりすることができるというメリットもある。

映画や芝居など、本業とは違う世界の作品を見てインプットすることも意識している。その作品の中の「面白い」とされている要素は何か、その要素をCMに詰め込むとどうなるのか、という視点で見るとよい。

篠原誠氏(CMプランナー)

アイディアは「思い浮かぶ」ものじゃない

CMプランナーの篠原誠氏は、「アイディアは思い浮かぶものじゃない」と言う。アイディアは、勝手に思い浮かぶものではなく、ひたすら考えるものだ。まずは、アイディアの対象、たとえば商品CMであればその商品についていろいろな方向から掘り下げて考える。それでも出てこなければ、「このセリフを使わなければならない」など、制約をつけてみる。タイトルだけを仮に決めてしまうこともある。その後に制約を外して考えると、より自由に発想できるようになるのだ。

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要約公開日 2018.05.25
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