これまで多くの人々が「ギャンブル必勝法」を模索してきた。完全無欠のベッティングシステムには、人を引きつける魅力があるからだ。
かつてギャンブルで勝つには、運や迷信に頼るしかないと考えられていた。しかし科学にはギャンブルを制する力がある。ギャンブルでかならず勝つ方法を探ることは、数学や統計学について研究することにつながる。現在では当たり前に知られている「確率」という概念は、ギャンブラーたちが生み出したといっても過言ではない。
ギャンブル必勝法の研究は、「偶然性」や「運」といったものについての新たな見解を生みつづけてきたのである。
ルーレットには1から36までの数字が書かれた赤と黒のポケット、0と00の緑のポケット、合計38のポケットが並んでいる。ルーレットでは親元(カジノ)が絶対的に優位だとされているが、それは「どの数も出る可能性が同じである」という前提に立っている。
しかし実際の出方には偏りがある。ルーレットには物理的な欠陥がある場合もあるからだ。実際に出方に偏りのあるルーレットを観察することで、儲けを出すことに成功した人もいる。
とはいえ偏りのあるルーレットを見つけるだけで、勝ちつづけることは難しい。どう賭ければ儲かるかも考えなければならない。さらに最近では、予測できるほど偏りのあるルーレットも減ってきている。
カルフォルニア大学ロサンジェルス校で物理学の博士課程に在籍していたエドワード・ソープは、まったく新しい角度からルーレットの研究を始めた。彼の試みは統計学ではなく、物理学からルーレットを分析しようというものだった。つまりスピンするホイールの上で、ボールが描く軌道の法則を研究しはじめたのだ。
ソープはボールの位置と速度と加速度、ホイールの回転位置と速度と加速度を計測すれば、ルーレットの予測もできると考えた。そして実際、ボールがホイールに対してどう動いているかがわかれば――つまりボールが特定の場所を通過するときのタイムを計れば――予測できたのである。
言うまでもなく、より正確な予測をするには、ハイスピードカメラでボールの軌跡を測定しなければならない。だがストップウォッチでタイムを計って計算するだけでも、ある程度の成果をあげられた。
しかし問題はここからだった。カジノのセキュリティに見つからないように、こうした測定や計算をおこなうのは困難を極める。そのためあまり大きな儲けは出せなかった。
宝くじで一等の当選番号を予測するのは不可能に近い。しかし意図的にある程度の利益を得ることはできる。
当選者が出なかった場合、その賞金は次の回に繰り越される。このときあまり当選者が出ないと宝くじの売り上げが落ちてしまうため、運営会社は「ロールダウン」をおこなう。ロールダウンとは繰り越された賞金が一定の金額を超えた場合、賞金を一等の当選者一人に与えるのではなく、数字を3つか4つほど的中させた人々に分配する仕組みだ。ロールダウンが起きると、もらえる金額は少なくなってしまうものの、賞金を手にする可能性は格段に上がる。
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