営業リーダーの第1の役割は、経済状況や消費行動といった外的要因を注視し、そこから自社に関係する2~3のトレンドを読み解くことである。見据えるべきは10四半期(2年半)先だ。
単にトレンドを先読みするだけではなく、予算や人員といったリソース(経営資源)の確保も欠かせない。すぐれたリーダーは、新たなチャンスへの先行投資に大きな額を割り当てている。先のことを考え、計画策定のための専任部隊を社内に用意することも怠らない。
成長チャンスをつかむためには、ミクロ市場の分析を行ない、自社の強さと市場の魅力度をうまく組み合わせることが求められる。
あるヨーロッパの消費者向け通信企業は、15に分けていた営業地域を約500ものミクロ市場に切り分けた。その結果、魅力的な顧客が存在するものの、競争は激しくない地域が見つかった。重点的にその地域へ投資したところ、来店者数を5~10%押し上げるとともに、コストを5%削減することができたという。
もしもビッグデータが営業の役に立つのかよくわからないと思っているなら、危機感をもったほうがいい。やや先行していた感のあるビッグデータに対する期待が、いまようやく実を結びつつあるからである。
ある小口金融業務を行なうヨーロッパの銀行は、顧客のビッグデータと真摯に向き合った。すると有望な紹介客や見込み客が倍増し、わずか2年で預金残高が5割近くも増加。顧客満足度も上昇した。
また、ある健康・美容メーカーが子供をもつ家庭へおむつに対する最大の関心事をアンケートで調べたところ、「環境にやさしい」という回答が3分の2を超えていた。ところがソーシャルメディア上の会話をビッグデータで分析したところ、おむつに対してもっとも頻繁に挙がっているフレーズは、「天然素材」とともに「おむつかぶれ」であることが判明した。以後、おむつかぶれへの対策が取られたことはいうまでもない。
販売チャネルの多様化は、顧客にいままでにない良質な購買体験を提供する。しかしながらマルチチャネル化にともなうチャネル間の対立や重複を克服している企業は、ほとんどないのが実情だ。
マルチチャネル化のための切り口はいくつかある。筆頭に挙げられるのは電話やインターネットを活用したリモートセールスと、従来のフィールドセールス(訪問営業)の組み合わせである。「オンラインとオフラインの組み合わせ」といいかえてもいいだろう。ここで重要なのは、すべてのチャネルを通して同じブランド体験を提供し、顧客に快適なカスタマージャーニー(顧客化までのプロセス)を体験してもらうことである。
また再販業者や代理店などのパートナーを通じた間接営業と、直接営業の組み合わせも再考に値する。パートナーに顧客を渡すことに対して抵抗を感じるという企業は多い。しかし顧客へのリーチや遂行能力の最適化という観点から、検討してみる価値はある。
アメリカではB2CかB2Bかを問わず、カスタマージャーニーのどこかでオンラインを経ている割合が3分の2におよぶ。
デジタルチャネル活用のポイントは3つだ。1つ目は自社のウェブサイトなどへのトラフィックを増やすこと。2つ目はオンラインでの取引を簡単、便利にすること。3つ目はオンラインでのつながりを活用し、顧客ロイヤリティの維持を図ることである。
とくにスマートフォンなどのモバイルを使った購買行動(mコマース)は、デスクトップのコンピュータで買い物をする消費者よりも、取引ごとの支出額が37%多いことがわかっている。デジタルはチャンスの宝庫なのだ。
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