なぜいまの時代、それほどまでに「独学の技術」が重要なのか、その理由は4つ挙げられる。
1つ目の理由は「知識の不良資産化」だ。かつてマーケティング講座では、フィリップ・コトラーを代表とする古典的なフレームワークが「定番」として教えられていた。しかしそのようなフレームワークはもはや時代遅れになりかねない。
少し前であれば一度学んだ知識を、そのままずっと仕事で使うことができたかもしれない。しかし現在、その知識が「旬」である期間は、かなり短くなってきている。
これからは過去の知識にとらわれることなく、自ら仕入れた新たな知識でアップデートをくり返すことが求められるのだ。
2つ目の理由は「産業蒸発の時代」がやってきたことである。いま多くの企業が「イノベーション」を目標として掲げている。ではイノベーションの行きつく先はなにか。それは産業の蒸発である。
アップルがiPhoneを世に送り出したのは2007年だ。これにより当時、末端価格換算で3~4兆円にもなる国内携帯電話市場のシェアは一変。アップルはその半分以上をごっそり奪いとり、パナソニックや東芝、NECなどは携帯市場から去らなければならなくなった。その分野で働いていた人たちも、方向転換を余儀なくされた。
イノベーションの実現により産業構造に大きな変化が生じると、自分の専門領域やキャリアを変更しなければならない人がどうしても出てくる。そこに選択の余地はない。その際スムーズにキャリアを変更できるかどうかは、独学の技術の有無に大きく左右されてしまう。
3つ目の理由が「人生三毛作」時代の到来である。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 を執筆したリンダ・グラットンは、著書のなかで人生100年時代の到来にともない、現役として働く期間も70歳~80歳に長期化すると指摘している。
その一方で、企業や事業が当初の活力を維持できる期間は短くなってきている。日経ビジネスが帝国データバンクとともに実施した調査によると、「旬の企業」のうち、10年後も旬を維持できる企業の数は10年後に半減、20年後には1割程度になるとされている。
つまり現代のビジネスパーソンは、いずれ大きなキャリア変更を経験する可能性が高い。そのとき旬の企業や事業へうまく乗り換えられるかどうか。それによって将来、仕事から得る「やりがい」「経済的報酬」「精神的な安定」に、大きな格差が生じるだろう。
そして4つ目の理由が「クロスオーバー人材」の需要である。
いま世界中の組織で「領域横断型の人材が足りない」といわれている。領域横断型とは「スペシャリストとしての専門性」と「ジェネラリストとしての広範囲な知識」を兼ね備えた人材のことだ。
イノベーションという言葉を生んだ経済学者のヨーゼフ・シュンペーターによると、イノベーションは「新しい結合」から生まれるという。イノベーションが生まれるためには、これまで異質のものとされてきた2つの領域をかけ合わせられる人、つまりクロスオーバー人材が必要なのだ。
そしてすでに大学を卒業している人が、広範囲にわたる知識を獲得しようとするならば、その手段は独学だけなのである。
独学の技術は(1)「戦略」、(2)「インプット」、(3)「抽象化・構造化」、(4)「ストック」という4つのモジュールで形成される。
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