知的戦闘力を高める

独学の技法

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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2017年11月15日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

時代とともに劣化するスキルと、時代が変わっても有用なスキル。仕事に生きる人なら当然後者を選ぶだろう。では時代に左右されないスキルとはなにか。

それが「独学の技法」だ。世の中がいかなる変化を迎えようとも、独学の技法さえ身につけば、自分自身をアップデートし、仕事の波を乗りこなすためのしなやかな知性が手に入るはずである。

本書の最大の特徴は、独学を「戦略、インプット、抽象化・構造化、ストック」という4つのモジュールで構成される、動的なシステムとして扱っている点にある。知識を死蔵せず実生活で使うには、それぞれの相互作用が必要だと著者はいう。

たとえば要約で中心的に取り上げる「戦略」は、これから独学でなにを学ぶかと考える際に、重要な気づきを与えてくれるだろう。忙しいビジネスパーソンがうまく独学を進めるには、「テーマとジャンル」の設定が欠かせないという著者の主張には大いに納得だ。いつの時代もイノベーションは、「新たな組み合わせ」から生まれるからである。強みを基準にジャンルを定め、自分だけの組み合わせを見つけることができれば、誰もが欲しがる貴重な人材になれるのはまちがいない。

もし今後、仕事人生が80年続く世界が訪れたとしよう。そのときも常に志高く、情熱をもって働けるのであれば最高ではないか。本書にはそのためのヒントにあふれている。

ライター画像
二村英仁

著者

山口 周(やまぐち しゅう)
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。
著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?――経営における「アート」と「サイエンス」』『外資系コンサルの知的生産術――プロだけが知る「99の心得」』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『天職は寝て待て――新しい転職・就活・キャリア論』『グーグルに勝つ広告モデル――マスメディアは必要か』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術――図解表現23のテクニック』(東洋経済新報社)『外資系コンサルが教える読書を仕事につなげる技術』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    学んだ知識を活用できる期間はどんどん短くなっている。現代のビジネスパーソンは今後、大きなキャリア変更を経験する可能性が高い。その際スムーズに変えられるかどうかは、独学の技術の有無にかかっている。
  • 要点
    2
    独学の技術は(1)「戦略」、(2)「インプット」、(3)「抽象化・構造化」、(4)「ストック」の4つで形成される。知的戦闘力を高めるには、これらを全体的なシステムとして捉える必要がある。
  • 要点
    3
    独学する対象は、ジャンルではなく「テーマ」で決めるべきだ。重要なのは、1つのテーマに対し、複数のジャンルを組み合わせて学ぶことである。

要約

【必読ポイント!】なぜいま「独学」が必要なのか

知識の「旬」が短くなってきている

なぜいまの時代、それほどまでに「独学の技術」が重要なのか、その理由は4つ挙げられる。

1つ目の理由は「知識の不良資産化」だ。かつてマーケティング講座では、フィリップ・コトラーを代表とする古典的なフレームワークが「定番」として教えられていた。しかしそのようなフレームワークはもはや時代遅れになりかねない。

少し前であれば一度学んだ知識を、そのままずっと仕事で使うことができたかもしれない。しかし現在、その知識が「旬」である期間は、かなり短くなってきている。

これからは過去の知識にとらわれることなく、自ら仕入れた新たな知識でアップデートをくり返すことが求められるのだ。

イノベーションの実現による産業の蒸発
Natali_Mis/iStock/Thinkstock

2つ目の理由は「産業蒸発の時代」がやってきたことである。いま多くの企業が「イノベーション」を目標として掲げている。ではイノベーションの行きつく先はなにか。それは産業の蒸発である。

アップルがiPhoneを世に送り出したのは2007年だ。これにより当時、末端価格換算で3~4兆円にもなる国内携帯電話市場のシェアは一変。アップルはその半分以上をごっそり奪いとり、パナソニックや東芝、NECなどは携帯市場から去らなければならなくなった。その分野で働いていた人たちも、方向転換を余儀なくされた。

イノベーションの実現により産業構造に大きな変化が生じると、自分の専門領域やキャリアを変更しなければならない人がどうしても出てくる。そこに選択の余地はない。その際スムーズにキャリアを変更できるかどうかは、独学の技術の有無に大きく左右されてしまう。

人生100年時代のビジネスパーソンとは

3つ目の理由が「人生三毛作」時代の到来である。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 を執筆したリンダ・グラットンは、著書のなかで人生100年時代の到来にともない、現役として働く期間も70歳~80歳に長期化すると指摘している。

その一方で、企業や事業が当初の活力を維持できる期間は短くなってきている。日経ビジネスが帝国データバンクとともに実施した調査によると、「旬の企業」のうち、10年後も旬を維持できる企業の数は10年後に半減、20年後には1割程度になるとされている。

つまり現代のビジネスパーソンは、いずれ大きなキャリア変更を経験する可能性が高い。そのとき旬の企業や事業へうまく乗り換えられるかどうか。それによって将来、仕事から得る「やりがい」「経済的報酬」「精神的な安定」に、大きな格差が生じるだろう。

求められているのは「クロスオーバー人材」
Photodisc/Photodisc/Thinkstock

そして4つ目の理由が「クロスオーバー人材」の需要である。

いま世界中の組織で「領域横断型の人材が足りない」といわれている。領域横断型とは「スペシャリストとしての専門性」と「ジェネラリストとしての広範囲な知識」を兼ね備えた人材のことだ。

イノベーションという言葉を生んだ経済学者のヨーゼフ・シュンペーターによると、イノベーションは「新しい結合」から生まれるという。イノベーションが生まれるためには、これまで異質のものとされてきた2つの領域をかけ合わせられる人、つまりクロスオーバー人材が必要なのだ。

そしてすでに大学を卒業している人が、広範囲にわたる知識を獲得しようとするならば、その手段は独学だけなのである。

4つのモジュールで形成される「独学のメカニズム」

「なにをインプットしないのか」を決める

独学の技術は(1)「戦略」、(2)「インプット」、(3)「抽象化・構造化」、(4)「ストック」という4つのモジュールで形成される。

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要約公開日 2018.04.02
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