「頭のなかで考えたことを、心から信じられるなら、人はそれがどんなことでも達成できる」と唱えたのはナポレオン・ヒルだった。しかし1937年の時点では、誰もが「胡散臭い」と相手にしなかった。
しかしいまでは、目標を紙に書くと実現すること、口に出すと本当になること、そして引き寄せの法則で願いが叶うことは、科学的に証明されている。これらの現象は「RAS」と呼ばれる、脳のしくみが深くかかわっているのだ。
RAS(Reticular Activating System)とは、体の生命活動を維持する働きである。私たちが眠り、目覚め、呼吸できるのはRASのおかげだ。加えて意識レベルのコントロールにも、RASは関与している。たとえば特定の事柄を意識すると、それに関する情報ばかり目につく。これもRASの働きによるものである。
RASの存在は、ピサ大学のH・W・マグンとジュゼッペ・モルッチらが発見した。1949年のことだった。その後研究が進められ、RASは脳に入るほぼすべての情報を中継しているとわかった。入ってきた情報を選別し、脳に伝えるか否かを判断するのだ。
脳はRASから情報を受け取ってはじめて、感情を生み出したり、次に取るべき行動について考えたりする。つまりどのような思考や感情、行動が生まれるかは、RAS次第だといえる。
RASの大きな特徴は「検索エンジン」と「GPSシステム」だ。RASはコンピューターで特定のファイルを探すときのように、特定の言葉に意識を引きつけ、関連するものを見つけやすくしてくれる。これが有名な「引き寄せの法則」だ。
また、RASはGPSシステムとまったく同じようにも機能する。GPSを使うときに必要なのは行き先の設定だけだ。あとはナビに従えばいい。これと同様にRASも、いったん目標を決めると、あらゆるところから必要な情報を集めてくれる。しかも達成まで導いてくれるのである。
RASのもうひとつの特徴は、「自分が信じること」を確信させる情報しか集めないということだ。しかも内容の如何は関係ない。RASは私たちが考え、信じた道を進むための情報だけを集め、それ以外についてはすべて排除してしまう。
これは新車を購入しようとする場面を想像するとわかりやすい。一度欲しい車種が決まると、街中のいたるところで同じ種類の車を見かけるようになる。なぜならRASによってすべての意識がその車種に向き、それ以外の車種に関する情報は不要なものとして遮断されるからである。だから仮に「世界はひどい場所で、人々は悪意に満ちている」と信じていると、その人が見るニュースは悲惨なものであふれ返ってしまうだろう。
注意すべきなのは、RASは集めた情報について、人がどのように反応するかは気に留めないということである。ただ純粋に、頭のなかを占めている考えに沿うような情報だけをRASは集めてくる。RASをうまく使いたければ、求めるものだけを考えるといいだろう。くれぐれも望まないことに意識を向け、その実現のためにRASをプログラミングしてしまわないよう用心すべきだ。
「自分の望みは何か?」という問いに対し、多くの人が明確な答えを出せずにいる。しかし人生で何かを達成したいと願うのであれば、真っ先に自分の望みを特定させなければならない。そしてそのための正しい方法を知る必要がある。
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