ビットコイン登場当初、「中央銀行が存在しない通貨」として金融界に衝撃が走った。暗号技術とブロックチェーンの仕組みにより、高い安全性のもと、ほとんどコストをかけずに世界中に送金できる。すると、銀行を通じた送金や決済が不要となり、銀行のビジネスモデルに大きな影響を及ぼすことになると考えられたからだ。
しかし、2015年頃になると、国際会議のテーマとしてビットコインが取り上げられることはなくなった。欧米の銀行関係者は、ビットコインを、「一部の人たちが使うマイナーなサービス」として位置づけるようになったためだ。実のところ、金融のメインストリームには影響しない存在とみなされているという。
しかし、現在の日本では、ビットコインのような仮想通貨が普及すると、銀行が消える、中央銀行が不要になる、といった話題が大々的に取り上げられている。海外の主要行の反応に比べて、世間では仮想通貨が過大評価されているというのが著者の見解だ。
金融の専門家の間ではビットコインに対する期待が低下している。一方、ビットコインの仕組みを支える技術、ブロックチェーンに対する期待は高まっている。
ブロックチェーンは、取引記録を入れた「ブロック」を、時系列に鎖のようにつなげて管理する仕組みである。これにより、不正取引や二重使用を防止できる。また、金融取引にかかるコストを、10分の1程度にまで削減できるという見方もある。
ブロックチェーンに関する実証実験は、土地登記や医療情報など多方面で行われている。特に有望視されているのが、国際送金や証券決済分野への応用だ。
著者は、ビットコインはそれなりの存在として存続しても、通貨のあり方を根本から変える「次世代の通貨」にはならないと考えている。一方で、ビットコインの中核技術であるブロックチェーンに関しては、金融やビジネスの仕組みに大きな影響を与える「本物の技術」だと、高く評価している。
ビットコインとは、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物が、2008年に発表した論文をもとに作成された「仮想通貨」である。2009年1月3日に、最初のブロックが作られ、ビットコインの運用が始まった。
ドルや円などの通常の「法定通貨」には、中央銀行などの公的な発行主体が存在する。そして、こうした主体が、通貨の流通を管理し、供給量を調整しており、強制通用力を発揮する。
これに対し、ビットコインの場合は、中央で通貨を管理する主体は存在せず、プログラムが管理している。世界中のビットコイン・ネットワークの参加者が協力して、お互いのビットコインの取引を確認し、取引処理を行う。前者の法定通貨は、印刷技術によって偽造を防止している。これに対し、後者のビットコインは暗号技術により不正な複製や二重使用を防ぎ、安全性を確保している。
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