カルビーといえば、「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」など、昔ながらの大ヒット商品を持つ老舗の菓子メーカーのイメージを持つ人も多いだろう。しかし一方で、わずか5年で利益率を10倍以上に伸ばした、先進的な会社としても知られるようになってきている。その背後には会社の改革があり、改革を先導したのが、2009年に会長兼CEOになった松本晃氏である。
松本氏が、スナック菓子に次ぐ新しい事業の柱として目をつけたのが「フルグラ®」ことフルーツグラノーラだった。フルグラの売り上げは今や300億円。2000年代の10年間と比べて、売り上げ規模が10倍にもなっている。このフルグラの急成長を、松本氏のもとでマーケティング担当として担ったのが、藤原かおりさんだった。
藤原さんに与えられたのは、30億円の売り上げをまずは100億円にする、という目標だった。そのために「フルグラプロジェクト」が立ち上がり、藤原さんと松本氏は月に1度、会議を行うことになる。
アメリカのシリアル市場が2兆円であるのに対し、当時日本の市場は250億円だった。その差は必ず縮まるはずだという仮説に基づき、藤原さんは動き始めた。まずは普通の食品のレベルで店に置いてもらえるように、配荷率を上げた。同時に、フルグラを売ってもらうモチベーションを作るため、社内の啓蒙を進めていった。藤原さんが大切にしたことは、新しいことをやっていこうという松本氏のスタンスにならって、会議ではやりたいことをどんどん提案すること、そして、言われたことを実行に移して実現することだった。
藤原さんがフルグラに携わって3年目になると、売り上げは143億円にまで伸び、目標は500億円になった。その頃から、松本氏は藤原さんに直接「こういうことをしたらいいんじゃないか」と指示をするようになったという。日々、いろいろなことを思いついて部下に伝えたくなるのがトップの性分だが、すべてに応えていては振り回されてしまう。そこで、藤原さんは、急ぐ必要のないものは後回しにしていった。もし3回言われたら、「本気だ」と受け止めて取り組む、というふうに、対応のさじ加減を身につけていった。
藤原さんは松本氏と仕事をするようになって、視点が変わったという。大きな視点で物事を見ること、しかし、実行には綿密な計画を立てること。いつでも冷静に、落ち着いた態度でいること。一生で一度きりの学びをここ数年で得られたと、藤原さんは語る。
中井雄一郎さんは、南場氏が代表に復帰するときに新設されたセクション「会長室」に配属され、唯一の会長専任担当となった。日々「会長が持つ力をいかに最大化するか」というミッションに取り組んでいる。
会長室の担当をする前は、オートモーティブ事業部でロボットシャトルの営業担当をしていた。現場からいきなり経営トップのすぐ側で仕事をすることになったが、中井さんに緊張はなく、成長の機会になりそうだとは思ったという。 「目的から入る」、「戦略から考える」、「事業部の大上段から理解して取り組む」というDeNAの基本に則り、会長が何に困っているのかを聞き出してやるべきことを次々と決めていった。
会長が会う人物の情報、案件の情報を、そのスケジュールの直前にコンパクトに伝えるのは、中井さんの役目のひとつだ。見やすさが大事なのでパワーポイントで絵入りの資料を作り、あえて紙で印刷して渡している。情報の鮮度もとても大切なので、ミーティング終了後もすぐに資料づくりに取りかかり、どんどん渡す。
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